日本地球惑星科学連合2016年大会

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セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT22] UAVが拓く新しい世界

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、井上 公(防災科学技術研究所)、長谷川 均(国士舘大学文学部地理学教室)

17:15 〜 18:30

[HTT22-P07] 小型UAV,定点カメラによる印旛沼流域桑納川における外来植物モニタリング

*浜田 慎也1濱 侃1近藤 昭彦2 (1.千葉大学大学院理学研究科、2.千葉大学 環境リモートセンシング研究センター)

キーワード:UAV、特定外来生物、産学官民連携

1.はじめに
千葉県北西部に位置する閉鎖性水域である印旛沼では,外来植物のナガエツルノゲイトウの侵入と繁殖が認められている.この水草は,特定外来生物に指定されており,生物多様性を損なうだけでなく,水田への侵入等,印旛沼流域における深刻な問題となっている.また,流域内の新川およびその支流では,台風などの大規模な出水時にナガエツルノゲイトウの群落が流れ出し,下流の排水機場に漂着することで排水作業に支障をきたすなど,治水機能への影響も問題となっている.そのため,新川支流の中でも特にナガエツルノゲイトウが群集している桑納川において千葉県印旛沼水循環健全化会議を中心とした産学官民連携の協働駆除作業が試行されている.しかし,群落がどのように拡大し,いつ,どこから,どれくらい流出するのか,といった駆除戦略立案のための基礎的情報については不明な点も多い.そこで本研究では,桑納川において,小型のUnmanned Aerial Vehicle (UAV)を用いて定期的な空撮を行い,Structure from Motion / Multi-View Stereo(SfM/MVS)技術を用いて高解像度のオルソモザイク画像を作成することにより,ナガエツルノゲイトウの動態モニタリングを行った.また,定点カメラによる連続観測を併用することで,より詳細な動態の把握を試みた.
2.研究手法
2015年5月末から2015年10月末まで毎月、桑納川最下流の約765mの観測対象区間の空撮を行った(5/30、6/22、7/25、8/26、9/23、10/29).小型UAVはenRoute社ZionQC630,カメラはRICOH社GRを使用した.フリーソフトウェアのMission Plannerを用いてオートパイロットで飛行し,対地高度50mから1秒間隔で空撮を行った.UAVで空撮した画像を元にSfM/MVSソフトウェア(Agisoft社 PhotoScan Professional ver1.2)で作成したオルソモザイク画像からナガエツルノゲイトウ群落を判読し,GIS(ArcGIS 10.2)上で河岸に繁茂するナガエツルノゲイトウ群落のポリゴンを撮影時期ごとに作成した.これにより,群落面積,位置,形などを求めた.また,橋の欄干に定点カメラを設置し,河道区間を10分間隔で連続撮影し,生長の様子や流出する群落の確認を行った.
3.結果と考察
対象区間全体の群落面積は,5月に1239.8㎡,10月に2080.2㎡となったが,この間に,協働駆除作戦が実施されており,740㎡ほどが駆除されたこと,また降雨などで自然に流出する群落が確認され,トータルで309.7㎡ほどが流出していたため,この間に実質的には約2.5倍に群落が拡大したことになる.8/26~9/23の期間で168.2㎡の群落が流出しており,これは9/6~9/10の台風18号に伴った豪雨の影響であると推測される.定点カメラの画像から9/6~9/10に桑納川の水位が上昇し,群落が流出している様子が確認されたが,この期間に消失した群落の個数とは一致せず,定点カメラで観測できない夜間に流出した群落もあると考えられる.群落ごとに面積拡大量を確認すると,6/22~7/25で拡大速度が大きい群落が多かったが,群落ごとに拡大速度が大きくなる時期にばらつきがみられた.群落が生長し大きくなると,拡大速度も比例して大きくなり,群落面積が拡大した観測後期に拡大速度が大きくなる傾向が見られた.一方,面積拡大率では,5/30~6/22の観測初期に拡大率の大きい群落が多かった.桑納川では群落面積の大きさに比例して面積拡大量がおおきくなることと,5/30~6/22の生長が速く,その後は次第に定常に近づくことが明らかとなった.これは大規模な防除作業を行う上で,群落の生育が活発になる初夏前に防除作業を行うことで,防除作業量を減らすことができると同時にその後の治水リスクを軽減できる可能性を示唆している.ナガエツルノゲイトウは河岸から切り離され移動後,漂着した先で再び河岸に根を伸ばし,定着することが知られている.観測対象区間では観測期間中に12㎡以上の比較的大きな群落の移動が計8個確認されたが,その群落はすべて桑納川流域には定着せず流出した.この結果から桑納川では,比較的大きい群落が移動を始めると再定着せず,そのまま下流の新川に流出し,新川での再定着,群落拡大や排水機場へ漂着することで治水機能に影響を及ぼす可能性が高いと考えられる.一方で2㎡未満の新たな群落の出現が数多く確認され,今後これらの小さな群落の生長,流出が推測される.このことは,桑納川が流域内の群落拡大の源となっている可能性を示唆している.