日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT23] 環境リモートセンシング

2016年5月23日(月) 13:45 〜 15:15 202 (2F)

コンビーナ:*石内 鉄平(明石工業高等専門学校)、島崎 彦人(独立行政法人国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校)、近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、長谷川 均(国士舘大学文学部地理学教室)、桑原 祐史(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)、座長:野中 崇志(日本大学 生産工学部 環境安全工学科)

15:00 〜 15:15

[HTT23-06] 多時期LANDSATデータを用いたホルチン地域の土地利用変遷に関する検討

*布和 宝音1哈申 格日楽2近藤 昭彦1千春 本郷1田村 栄作1 (1.千葉大学環境リモートセンシング研究センター、2.千葉大学大学院理学研究科)

キーワード:ホルチン地域、土地利用変遷、ランドサット、内蒙古統計年鑑、ArcGIS

はじめに
2000年頃までは中国内モンゴル自治区ホルチン地域で砂漠化が進行してきたことが知られている。例えば、大立入・武内(1998)では旧日本軍が作成した1930年代の地形図と中国科学院が作成した1980年代の砂漠化類型図を比べた結果、ホルチン地域の奈曼旗では約1.8倍の流動砂丘の拡大が見られたとした。また厳・宮坂(2004)では、1961年のCORONA画像と1988、1994、2000年のTMデータを用いて土地被覆分類図を作成し、この間に砂漠化が一貫して進行したとした。しかし、これらの研究はホルチン地域の一部の対象とした研究であり、ホルチン全域を対象とした研究は少ない。近年パソコンの性能も良くなったこともあり本研究では内モンゴル自治区に位置する全ホルチン地域を対象とした。
2000年以降,内モンゴル自治区では,生態移民(小長谷ほか,2005),退耕還林還草,新三牧(巴図,2007)などの環境保護政策が実施されているが,一方で内モンゴル全域が西部大開発の対象地域ともなっている.よって2000年以降は内モンゴル自治区の土地利用変化が大きいと考えられる.布和宝音・近藤(2015)では内モンゴル自治区における2000以降の植生変動を解析した。その結果ホルチン周辺地域では植生増加傾向が明瞭であったが、気候と明瞭な関係が見られなかった。人間活動による耕地面積の拡大、植林面積および灌漑面積の増加で明瞭な植生増加傾向であることが示唆された。しかし、耕地増加地域および植林されている地域を具体的に示されなかった。
本研究の目的は多時期のLandsatデータおよび統計年鑑データを用いて2000年を境に前後15年間、トータル30年間ホルチン地域の土地利用変遷を明らかにすることである。
対象地域
本研究でのホルチン地域は内モンゴル自治区に含まれる領域を対象とする。対象地域は赤峰市の五つの県、通遼市の八つの県及び興安盟の二つの県の合計15個の県から構成される。概ね東経117°45′~123°40′、北緯41°30′~46°10′の範囲に位置し、面積は約12.5万㎢である。
使用データ
・ランドサットデータ TM、ETM+、OLI
本研究では1985年のランドサット5号TM、2000年のランドサット7号ETM+、2014年のランドサット8号OLIの三時期のそれぞれ10シーンの画像を用いて土地被覆の解析を行った。
・内蒙古統計年鑑(1987年~2012年)
ホルチン地域における耕地面積、灌漑面積、大型家畜、小型家畜などを統計年鑑からデジタル化し、時空間変動について検討した。また、土地利用変遷との関連性について検討した。
手法
各シーンのLandsat画像をISODATA教師なし分類法によって25クラスに分類した。分類された画像の判読を行い沙漠、裸地、草地、耕地、森林、水域の6クラスに統合した。統合された画像をモザイクし土地被覆分類図を作成した。内蒙古統計年鑑から統計データをデジタル化してグラフ化、主題図してホルチン地域の土地利用変遷との関連性について検討した。
まとめ
画像解析の結果からは、ホルチン地域における砂漠化面積が1985年から2000年にかけて大きな増加が見られた、ホルチン全域では砂漠化地域の面積が約1.4倍まで増加した。しかし、2000年以降は退耕還林政策が取られていて、また禁牧などの政策によるが、砂漠化地域の減少が小さながら見られた。
Landsat画像解析結果からも耕地面積が1985年から2000年、2014年にかけて増加傾向であった。1985年から1999年までの耕地面積の増加について、1980年代後半には人民公社制度解体され、土地と家畜を個人に配分し、人々の生産意欲を引き出されたこと、1995年から米袋省長責任制を実施したことおよび996年の土地請負制度の導入食料生産をもっと重視したこと等が要因として考えられた。1999年から2014年までの耕地面積の増加については、2000年頃の農業と牧業の税金減免制度も導入されたことをきっかけに、農民と遊牧民の生産意欲が引き出されたこと、2003年の東北地域で冷害が発生した影響、2007~2008年にかけての食糧危機の影響で耕地面積が増加していると考えられた。
空間的に見ると標高が低い地域を中心に耕地面積の増加、植林面積の増加が明瞭であった。これらの変化は近年取られている政策対策をもの語っているようなものである。しかしながら、これらの地域では地下水位の低下が顕在化している。ホルチン地域の今後の持続的な発展が懸念される。