日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT23] 環境リモートセンシング

2016年5月23日(月) 15:30 〜 17:00 202 (2F)

コンビーナ:*石内 鉄平(明石工業高等専門学校)、島崎 彦人(独立行政法人国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校)、近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、長谷川 均(国士舘大学文学部地理学教室)、桑原 祐史(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)、座長:島崎 彦人(独立行政法人国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校)

15:30 〜 15:45

[HTT23-07] インドネシアの森林火災発生地域の予測に向けた衛星画像解析とスペクトル測定

*鈴木 光1高橋 唯人1太田 哲資1橋本 朝陽1鎌田 夏実1秋田 萌花1荻野 由香1長谷川 陽子1成瀬 延康1,2高橋 幸弘2,3 (1.北海道大学グローバルサイエンスキャンパス、2.北海道大学高等教育推進機構、3.北海道大学大学院理学研究院)

キーワード:インドネシア、森林火災、植生指数、表層土壌水分量、スペクトル、リモートセンシング

熱帯林での森林火災は、地球温暖化や生物多様性などへの影響が大きいため、火災の発生を最小限に抑える、もしくは森林火災発生域を予測することが極めて重要である。森林火災は、人為的な要因以外にも降水量を反映した土壌表面の水分量が関係している可能性がある。また、火災前には表層土壌水分量の変化以外にも、植物が乾燥ストレスに影響されているなど多くの予兆があると思われる。こうした変化をリモートセンシングにより観測すれば、森林火災発生地域の事前推定が可能となる。
先行研究では、古本らが、インドネシアのカリマンタン島の一部領域の正規化植生指数NDVI(Normalized Difference Vegetation Index)が、乾期と雨期で異なる数値となっており、降雨特性とNDVIとの間の相関関係を見出している。また、彼らは降雨量とNDVIの変化には1-2ヶ月の時間差があることも指摘している。しかしながら、インドネシアは広くピートランドに覆われており、火災時には土壌も燃えてしまうため、植生指数だけを考慮していては効果的な森林火災の発生予測には成らない可能性がある。また、衛星画像から表層土壌水分量を推定するには、赤外波長域の衛星画像が従来用いられてきているが、森林火災の発生域の予測には、空間分解能に乏しい。
本研究では、衛星画像解析により森林火災発生地点を高い空間分解能で予測する方法の開発を目的とした。実際にインドネシアに自生する植物を様々な土壌水分量の条件下で育て、葉の反射スペクトルの実測から、NDVIのみならず、森林火災とより高い相関を有する植生指数を探求すると同時に、表層土壌水分量など、植生指数以外の指標も考慮することにより高い精度での予測を目指した。
まず、インドネシア南スマトラ島、マルタプラ周辺のLandsat7、8の衛星画像を入手し、衛星画像内の100m×250mの範囲において、NDVIと衛星画像の画素内に含まれる土壌面積の影響を考慮した指標であるSAVI(Soil Adjusted Vegetation Index)を算出し、年推移を調査した。草本領域と、樹木領域とで植生指数の年推移を比較したところ、草本領域の方が植生指数は低くなった。また、エルニーニョ発生年に両植生指数が急落したことから、降水量の減少がこの地域の植生指数に影響を与えたことがわかった。また、SAVIと、NDVIとでは有意な差が見られた。植生指数の草本領域のエルニーニョ発生年の変化率が樹木領域よりも大きいことから、乾燥ストレスの影響が草本の反射スペクトルに強く表れることが示唆された。
次に、過去に森林火災が発生した場所をNGO団体”Eyes On The Forest”のWebサイトで調べ、植生指数減少域と森林火災発生域を比較した。2015年のマルタプラ周辺衛星画像において、SAVIが0以上0.3以下の領域と、森林火災が発生した場所を表す画像を重ね合わせた結果、二つが良く一致していた。