日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT24] 地理情報システムと地図・空間表現

2016年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 304 (3F)

コンビーナ:*小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、吉川 眞(大阪工業大学工学部)、鈴木 厚志(立正大学地球環境科学部)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、王尾 和寿(筑波大学)

09:15 〜 09:30

[HTT24-01] 災害時に求められる地理空間情報とは?

★招待講演

*栗栖 悠貴1宇根 寛1 (1.国土地理院)

キーワード:地理空間情報、災害対応、利用目的

近年、技術の進歩に伴い、地理空間情報はさまざまな方面で活用されている。特に防災・減災においては、リスク情報の可視化、災害状況の把握、救助・救援活動の支援、復旧・復興計画、災害情報の共有など、防災・減災のあらゆるステージにおいて、地理空間情報が重要な役割を果たす。このことは国際社会においても広く認識され、第3回国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組2015-2030」に地理空間情報活用の重要性が記載されるなど、必要不可欠な情報として重要視されている。本発表では、このうち、災害発生時の対応に着目し、災害時に求められる地理空間情報について議論する。
筆者らは、災害発生時における地理空間情報の役割を、次の4つに整理した:1)災害の全体像を迅速かつ正確にとらえること(空中写真撮影、リモートセンシング、空中写真判読、地図による情報の集約・可視化など);2)国土の変化を精密に把握すること(地殻変動観測、干渉SARなど);3)復旧・復興のための基準を提供すること(基準点改測、復興基図、GISを活用した進捗管理など);4)災害を分析し、次の災害に備えること(地殻変動解析、断層モデル、災害地理調査、防災計画見直しなど)。
災害対応において地理空間情報がどのように利用されたかを明らかにするため、筆者らは平成27年9月関東・東北豪雨の対応が一段落した後、災害対応に携わった国や地方の関係機関に対してアンケートを行い、地理空間情報がどのような目的で活用されたかの調査を行った。その結果、主に、被害予測、被害状況の把握、作業計画、実動部隊の資料、復興事業の査定資料の5つの業務に利用されたことがわかった。土地の標高等の地理空間情報から氾濫水の広がりの推定などの被害予測に活用され、空中写真画像等の地理空間情報は被害状況の把握に活用された。また、浸水範囲の判読結果は人員配置計画に活用され、正射画像は現地調査に活用されると共に復興事業の査定における資料として活用された。
迅速および確実かつ効果的な対応が求められる災害対応において、地理空間情報を効果的に活用するためには次の二つの視点が重要である。すぐ使える情報であること、信頼できる情報であることである。どちらか一方が欠けることは、救援救助活動に支障をきたすことに直結する国土地理院は、引き続き効果的な地理空間情報を提供することで、被害を軽減するための災害対応や救援救助・復旧復興活動を支援していく。