日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT24] 地理情報システムと地図・空間表現

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、吉川 眞(大阪工業大学工学部)、鈴木 厚志(立正大学地球環境科学部)

17:15 〜 18:30

[HTT24-P03] 既知の史料をもちいた過去の自然現象および災害情報の抽出

*加納 靖之1 (1.京都大学防災研究所附属地震予知研究センター)

キーワード:歴史記録、明治15年2月、火山噴火、黄砂

歴史資料をもちいた過去の自然現象や災害についての調査は,地球科学の広い分野ですでに多くの研究がなされている.その成果として,それぞれの分野におけるイベント等に関する記述を採集した史料集が公刊されている.たとえば,「増訂大日本地震史料」,「日本地震史料」,「新収日本地震史料」,「日本噴火志」,「日本気象史料」,「日本天文史料」,「近世日本天文史料」などである.これらの史料集には,たとえば地震と洪水などそれぞれの分野のイベントについての記事が,同じ史料の別々の部分から収録されていることも多い.特に日記など,長期間にわたっておおむね均質な記録がなされている史料の場合その傾向が強い.それぞれの史料集は,対象とするイベントや,興味・関心,史料集の紙幅の制約などに依存した個別の編集方針で編まれており,別の分野のイベントは通常収録されない.そのため,ある分野では既知の史料であっても,別の分野では未知の史料となっている可能性があり,採集されないままになっているイベントも多数存在すると考えられる.
最近,過去から収集されてきた膨大なデータを検索可能な形で公開されはじめている.そのなかには記事が記録された場所,あるいは,史料の現在の所在をしめすデータをもつものがある.自然現象や災害の影響は,一般的に一定の空間的広がりをもって記録されることが多い.既知の史料の場所に関する情報をもとに,未知のイベントの発見や,既知のイベントのより詳細な調査を実施することが可能である.このような情報を効果的に利用するためには,地図および地理情報システムを活用した検索が有効である.
このようなイベントの例として,明治15年2月に発生した泥雨について調査をおこなった.鹿島神宮の宮司の日記である「桜斎随筆」に泥雨についての記事があり,京都から東北地方にわたる各地の新聞にも同様の記事がみられる.既知の史料を活用し,この泥雨についての日本各地のデータの追加を試みた.灰あるいは砂状のものが降り,場所によっては薄くつもった.当時人々は火山の噴火によるものかと噂したが,同じ時期に火山の噴火は知られていない.この泥雨は3日間かけて西から東へ移動していったようにみえる.この泥雨の原因は,火山噴火による降灰,黄砂,局地的な砂塵などが考えられる.