日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT24] 地理情報システムと地図・空間表現

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、吉川 眞(大阪工業大学工学部)、鈴木 厚志(立正大学地球環境科学部)

17:15 〜 18:30

[HTT24-P04] 合成広角画像を利用した地下景観表現

*黒 卓陽1 (1.法政大学)

キーワード:可視化、サインシステム、景観、地下空間、都市案内

近年,都市における地下利用が複雑化してきている.地下空間は地理的コンテクストが不明瞭であり,現在位置を知るためには案内サインや,案内図,デジタルデバイスの位置情報に頼るほかない.一方で,プロジェクションマッピング,デジタルサイネージを始めとしたディスプレイ技術の進歩に伴い,様々な表現方法の検討が可能である.従来の抽象的な位置関係を示した表現のみならず,イメージアビリティを重視した表現も考えられる.そこで,本文では地下空間からの地上空間の景観を擬似的に作成し,表現する方法を提案する.
まず、地下空間の地上空間表現方法について考える。基本的には、例えばプロジェクションマッピングや液晶ディスプレイを用いて、地面を基準とした表現の場合では地下空間の天井、または床面に、あるいは側面景観を中心に表現する場合は壁面に、実構造物を実物大、あるいは縮小やデフォルメして表示させる方法が考えられる。また地下空間において表現する箇所を工夫し、合わせて実物を、平面と側面を組み合わせた三次元表現することも可能である。
次に、地上空間をどのような「場面」で見せるか、表現手法観点からも考えていくと、立って見せる、線や面に沿って歩きながら見せる、この2つの方法が考えられる。前者は、人がその場でものを見るのと同じで、自分のいる場所から動かずに地上空間を見渡せるようにする。対して校舎は、歩きながら周辺を見るのと同じで、地下道や地下広場内での場所の位置関係を利用して地上空間を表現する。ここでは立って見せる視点について、これらの考えをもとに、対象範囲を設定、地下空間と地上空間の関係を調査、実際に地上を表現した画像を作成し、これを地下空間の画像に合成し、実際の地下空間における表現について検討した。
調査対象は、近年大規模再開発がされている渋谷駅とした。対象となる地下空間は、最も深い場所にある東京メトロ副都心線・東急東横線の渋谷駅ホーム吹き抜け部とする。副都心線・東横線の渋谷駅は平均深さ30m[1]とされており、Yahoo地図を参照すると明治通りの地下、ちょうど渋谷ヒカリエの明治通りをまたぐ連絡通路の直下に位置する。この吹き抜け部の天井に地上の景観を投影し,地上空間を表現することを考える.
吹き抜け部直上において、この空間の直上はこの連絡通路直下のため、やや南側にずらした位置からの表現とする。平面上に地上周辺構造物と渋谷ヒカリエの上端部を表現するためには、曲面を投影させた、魚眼レンズで撮影したような画像が望ましいと考えるが,実際には建物のみを魚眼レンズで撮影することは難しい。この場合、個人が所有するカメラで、歩道から周辺に向けて撮影し繋ぎ合わせる手法も有効だが、明治通りを挟む一方側の建物が大きく表現されてしまうため、車道からの周辺画像が望ましいとして、Google Street Viewを利用し、画像を作成した。
Google Street Viewから視点のおおよその斜角を定め、同じ角度で定めた地点から一周、いくつかの画像に分けてキャプチャし、画像処理ソフトを用いて画像を張り合わせた。このとき、Street Viewの画像は、周辺構造物が一通り見渡せるよう地面レベルに対し上30°程度とした。張り合わせた画像は、横長の長方形になるように張り合わせ方を設定とした。つぎに、この画像を極座標変換し、ドーナッツ状にした。極座標変換すると縦の長さが大きくつぶれてしまうため、曲面補正で奥行きを出すことで、ドーナッツの空洞部を縮小し、縦の高さが大きく出るようにした。すると画像は、周辺の構造物が表現されているが、渋谷ヒカリエ上部が欠けており、画像中心部に空洞が残っている。
そこで、再び上記と同様の手順で、今度は地面レベルに対しさらに高い角度でStreet Viewの画像を用いて360°画像を作成し、先ほどの画像と重ねた。これにより、空洞は消え、周辺構造物の上端は欠けることなく表現が可能となり、要件を満たす画像を作成できた。
作成した画像はそれ自体だけ画面や印刷物で示すと、どの視点でどれが表現されているのか、逆に位置関係が分かりづらくなる。そのため、副都心線・東横線渋谷ホーム吹き抜け部の天井に、作成した画像が投影されている様子を合成画像で示した。渋谷ヒカリエがシンボルとなって、連絡通路や周辺のビル群により地上空間に対する位置関係が理解しやすくなっているが、やや不要なディーテイルが多い。特に、渋谷駅前のバスが位置関係をわかりづらくしている。
ここで目的に立ち返り、利用者が自分のいる空間理解を促進させるためには、地上空間のディーテイル表現は不要であり、むしろイメージアビリティをもつ、着目しやすい表現のみが求められる。すると、実構造物や平面に忠実な表現にこだわらず、イメージのしやすさを中心に考えるのが望ましい。今後は、ノイズ消去方法についても検討を行っていくべきと考える。

≪出典≫
[1] 鹿島建設HP(http://www.kajima.co.jp/news/digest/jul_2008/tokushu/toku03.html)