09:45 〜 10:00
[MAG24-04] 夏/秋季における大気中の放射性セシウムの再飛散過程~生物―大気循環の可能性
キーワード:福島原発事故、放射性セシウム、環境放射能、生物大気循環
平成23年3月の福島第一原発事故により環境中に多量に放出された放射性物質は、大気を通じ広域に拡散し陸域では土壌や植生に沈着した。放射性物質が沈着した地域では、それらが再飛散プロセスを経て再び大気中に戻ることで、現在も大気中に事故以前に比べ高濃度の放射性物質が浮遊している。この大気中に浮遊する放射性物質の濃度を継続的に監視することに加え、再飛散プロセスを定量的に理解していくことが、今後の推移を予測し対応を考える上で重要である。特に放射性物質の移行において、大気再飛散は、速く広範囲に移行を起こす可能性があるため、経路の一つとして重要である。
我々のグループでは、土壌や森林から大気への放射性セシウム再飛散プロセス解明のための観測を福島県川俣町山木屋地区内および浪江町津島地区内の5地点で実施している。ハイボリューエアサンプラーを用い、大気粒子を連続的にサンプリングし、そのセシウム放射能強度をGe検出器で測定し、大気放射能濃度(単位体積大気中の放射能)に換算している。津島地区では、大気中のセシウム放射能濃度は毎年夏季に極大となる季節変化を示す。この時期、大気放射能濃度は風速と弱い逆相関傾向が見られ、昼間より夜間に大気放射能濃度が高くなった。これは、風速によらず再飛散が発生しており、地表境界層の成長や風により希釈されるためであると解釈できる。
大気サンプリング試料を電顕観察すると、夏季(6~8月)および秋季(9~11月)には、生物起源と思われる炭素に富む有機粒子が多かった。2015年夏に行なった集中観測では、試料中のCの割合とセシウム放射能濃度がよく正相関する変化を示しており、この有機粒子が放射性セシウムの大気再飛散における担体となっている可能性が高い。集中観測時にバイオエアロゾルサンプリングも行い、菌類の胞子や細菌と思われる粒子が多く飛散していることがわかった。一部の試料を有機分析した結果、放射性セシウムが多い分画で、生物起源有機物が多かった。また、津島地区において採取した林内雨と林外雨中の放射性セシウムを比較すると、特に夏季に林内雨で数倍高い濃度となっており、また降水時に大気放射能濃度も高くなる傾向があることから、樹木の表面に放射性セシウムが多く存在しており、雨で大気や土壌に移行していることがわかる。
夏季および秋季の大気粒子試料を、純水および過酸化水素水によって抽出する実験を行なった。放射性セシウムの約45-65%が純水により抽出された。また、過酸化水素水で不溶性有機物を分解すると、さらに10-40%と残りの大半が抽出された。大気試料には、Na,Cl,S(SO4)など水溶性粒子も含まれているものの、その量は有機物に比べると極小であり、先に示した結果も合わせ、純水で抽出された放射性セシウムは何らかの形で有機粒子に含まれていたものと考えている。この純水抽出液でポプラを栽培し、植物体に放射性セシウムが移行するか確認する実験を行なった。ガラスビーズに抽出液を入れ、ポプラ3本を挿して48時間培養を行なった。大半の放射性セシウムがガラスビーズに残留したものの、残りの放射性セシウムは、抽出液、ポプラの根、およびポプラの枝葉にほぼ3分され、少なくとも一部は植物体に移行することが確認された。このことから、大気-降水-植生間で、放射性セシウムが循環している可能性が示された。
我々のグループでは、土壌や森林から大気への放射性セシウム再飛散プロセス解明のための観測を福島県川俣町山木屋地区内および浪江町津島地区内の5地点で実施している。ハイボリューエアサンプラーを用い、大気粒子を連続的にサンプリングし、そのセシウム放射能強度をGe検出器で測定し、大気放射能濃度(単位体積大気中の放射能)に換算している。津島地区では、大気中のセシウム放射能濃度は毎年夏季に極大となる季節変化を示す。この時期、大気放射能濃度は風速と弱い逆相関傾向が見られ、昼間より夜間に大気放射能濃度が高くなった。これは、風速によらず再飛散が発生しており、地表境界層の成長や風により希釈されるためであると解釈できる。
大気サンプリング試料を電顕観察すると、夏季(6~8月)および秋季(9~11月)には、生物起源と思われる炭素に富む有機粒子が多かった。2015年夏に行なった集中観測では、試料中のCの割合とセシウム放射能濃度がよく正相関する変化を示しており、この有機粒子が放射性セシウムの大気再飛散における担体となっている可能性が高い。集中観測時にバイオエアロゾルサンプリングも行い、菌類の胞子や細菌と思われる粒子が多く飛散していることがわかった。一部の試料を有機分析した結果、放射性セシウムが多い分画で、生物起源有機物が多かった。また、津島地区において採取した林内雨と林外雨中の放射性セシウムを比較すると、特に夏季に林内雨で数倍高い濃度となっており、また降水時に大気放射能濃度も高くなる傾向があることから、樹木の表面に放射性セシウムが多く存在しており、雨で大気や土壌に移行していることがわかる。
夏季および秋季の大気粒子試料を、純水および過酸化水素水によって抽出する実験を行なった。放射性セシウムの約45-65%が純水により抽出された。また、過酸化水素水で不溶性有機物を分解すると、さらに10-40%と残りの大半が抽出された。大気試料には、Na,Cl,S(SO4)など水溶性粒子も含まれているものの、その量は有機物に比べると極小であり、先に示した結果も合わせ、純水で抽出された放射性セシウムは何らかの形で有機粒子に含まれていたものと考えている。この純水抽出液でポプラを栽培し、植物体に放射性セシウムが移行するか確認する実験を行なった。ガラスビーズに抽出液を入れ、ポプラ3本を挿して48時間培養を行なった。大半の放射性セシウムがガラスビーズに残留したものの、残りの放射性セシウムは、抽出液、ポプラの根、およびポプラの枝葉にほぼ3分され、少なくとも一部は植物体に移行することが確認された。このことから、大気-降水-植生間で、放射性セシウムが循環している可能性が示された。