日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG24] 福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*北 和之(茨城大学理学部)、恩田 裕一(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、中島 映至(宇宙航空研究開発機構)、五十嵐 康人(気象研究所 環境・応用気象研究部)、山田 正俊(弘前大学被ばく医療総合研究所)、竹中 千里(名古屋大学大学院生命農学研究科)、山本 政儀(金沢大学環低レベル放射能実験施設)、神田 穣太(東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科)、篠原 厚(大阪大学)

17:15 〜 18:30

[MAG24-P02] 大気中Cs-137濃度の長期予測モデル式の提案とAICによる評価

*小西 将貴1羽田野 祐子1 (1.筑波大学)

キーワード:放射性核種濃度、エアロゾル、再浮遊

福島第一原子力発電所の事故により、大気中に放出された放射性核種の一つであるCs-137は半減期が約30年と非常に長く、大気中に長期的とどまり、汚染をし続ける。大気中の濃度変化を長期的に予測できる大気中Cs-137濃度の長期予測モデル式が提案されてきた。
本研究では、はじめに、大気中Cs-137濃度変化の季節変動に注目し、長期予測モデル式と実データの残差の時系列データの解析を行った。エネルギースペクトル、大気中Cs-137濃度には1年間の周期的な変動が見られた。濃度は、夏に上がり冬に下がる、1年周期のサインカーブのような挙動を示すことが分かった。この変動は、季節依存の変化であると考えられる。これを従来のモデル式に組み込み、季節変動を考えた新たなモデル式として提案した。続いて、現在提案されているモデル式の評価を行った。大気中Cs-137濃度変化を示すモデル式はいくつか提案されているが、どのモデルが最良であるか、定量的な評価がなされていない。これを、モデル式と実データの残差と、自由パラメータ数で評価する、赤池情報量基準(AIC)を用いて、モデル式の評価を行った。まず、季節変動を入れたモデルと入れないモデルの比較を行った。その結果、季節変動を考えたモデルのほうが、実データとの整合性が高く、良いモデルであると判断された。続いて、モデル式同士の評価を行った。その結果、C(t)=Aexp(-λdecayt)t-α(C(t)は時間tでの濃度、A、αは自由パラメータ)が現在提案されている中では最良のモデル式であると判断された。以上から、現在提案されているモデルでは、C(t)=Aexp(-λdecayt)t-αに季節変動を考えたものが、長期的な濃度変化を表すモデルであると考えられる。