日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI20] 山岳地域の自然環境変動

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*鈴木 啓助(信州大学理学部)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(信州大学理学部)

17:15 〜 18:30

[MGI20-P06] 乗鞍岳東斜面における雪面の熱収支解析

*西村 基志1鈴木 啓助1 (1.信州大学理学部)

キーワード:熱収支解析、融雪、乗鞍高原

融雪水は時により土壌へ大量の水分を供給するため、斜面崩壊などを引き起こす可能性がある。また、積雪はアルベドが高く地表面に届く大気放射を反射するため、気温の上昇を緩和するともいわれている。そのため、自然災害の危険を予知したり、大気環境へ与える影響を予測するためにも、積雪表面の融解量およびその融解過程を明らかにすることは重要である。雪面における表面融解量の推定には日平均気温を用いるdegree-day法がこれまで広く用いられてきた。しかし、融解量の時間変化や詳細な空間分布を議論しようとする場合にはdegree-day法では困難である。そこで本研究では乗鞍岳東斜面における気象観測データを用いて熱収支解析を行い、積雪表面での融解量および融解過程を検討した。
乗鞍岳東斜面の標高1590 m地点で気象観測を行い、観測地点での平坦な雪面に対し、熱収支解析を行った。観測データは気温、短波放射、長波放射、湿度、降水量、気圧、風速、積雪深である。熱収支解析には熱収支法を、乱流輸送量の計算にはバルク法を用いた。熱輸送量は雪面に向かう下向きの方向を正とした。データの解析は2011年から2014年までの積雪期間について行った。
この地点では150‐180 cmの最大積雪深が観測される。また、この観測地点における積雪期間の平均風速は0.8‐1.0 m/s程度であり、積雪期間の平均気温は-3.7 ℃であった。熱収支解析の結果によると、放射収支に由来する熱量が融雪に最も大きく寄与しており、その割合は総融解熱量に対し110%程度であった。また、顕熱輸送量が14%の割合を占め、次いで大きかった。一方、潜熱輸送量は負の方向(上向き)に大きく寄与していた。放射収支量の寄与の割合が大きいのは乱流輸送量が少ないためであると考えられ、観測地点における積雪期間の平均風速が0.8-1.0 m/sと弱いことが乱流輸送量を小さくし、さらに、積雪期間の平均気温が-3.7 ℃と低いことも顕熱輸送量を小さくしている要因であると考えられる。