日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI20] 山岳地域の自然環境変動

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*鈴木 啓助(信州大学理学部)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(信州大学理学部)

17:15 〜 18:30

[MGI20-P14] 深層崩壊と上高地の自然史

*苅谷 愛彦1松四 雄騎2原山 智3高岡 貞夫1木田 千鶴4松崎 浩之5 (1.専修大学、2.京都大学、3.信州大学、4.専修大学・院、5.東京大学)

キーワード:大規模岩盤地すべり、自然史、景観形成、最終氷期、完新世

上高地は氷河性の谷や圏谷,周氷河性の岩屑被覆斜面,河川性の氾濫原のほかに高山帯-亜高山帯の植生連続帯からなる圧倒的な景観によって構成される。このため,この景勝地には多くの登山者や観光客が訪れる。上高地でなされた第四紀地形学・地質学的研究は過去数十年間に大きく進展してきた。これまでの研究では第四紀の氷河作用や周氷河作用が強調されてきたが,上高地は火山・地震性の活動環境下にあるにもかかわらず地すべり作用の役割については必ずしも焦点が合わせられてこなかった。筆者らの最近の地形学的再評価によれば,岩盤の重力変形に関連した大規模岩盤地すべりは上高地における景観(地形と植生)の発達に影響を及ぼす要因であることが判明してきた。
たとえば,弁天沢岩石なだれと明神池岩石なだれは,堰き止め性の湖沼や氾濫原をもたらした河道閉塞を起こしてきた。岳沢岩石なだれは岩塊流のように表層土壌を欠いた岩塊原を形成した。玄文沢岩石なだれは5-10 mの高さを持つ多数の流れ山を形成した。
地すべり堆積物は,地すべり地以外の場所とは異なる特有の自然環境を醸成してきており,これが多様性に富むユニークな景観の形成をもたらしてきた。筆者らは,上高地の大規模岩盤地すべりをとらえた編年表や地形学図,斜め空中写真を提示する予定である。