日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI21] 情報地球惑星科学と大量データ処理

2016年5月24日(火) 10:45 〜 12:15 A02 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*村田 健史(情報通信研究機構)、野々垣 進(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質情報研究部門 情報地質研究グループ)、堀 智昭(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、豊田 英司(気象庁予報部業務課)、寺薗 淳也(会津大学)、若林 真由美(基礎地盤コンサルタンツ株式会社)、堀之内 武(北海道大学地球環境科学研究院)、大竹 和生(気象庁気象大学校)、座長:若林 真由美(基礎地盤コンサルタンツ株式会社)、大竹 和生(気象庁気象大学校)

11:30 〜 11:45

[MGI21-10] HAKUTOプロジェクトにおける月面縦孔探査を目指したマイクロローバーの設計と開発状況

*清水 敏郎1吉田 和哉2,1Britton Nathan1Walker John2田中 利樹1古友 大輔1 (1.ispace technologies, inc.、2.東北大学)

キーワード:月、ローバー、HpFP、縦孔探査、UDP、TCP/IP

HAKUTOは日本で唯一、国際宇宙開発レース「Google Lunar XPRIZE (GLXP)」に参加しているチームであり、ベンチャー企業、東北大学、そしてプロボノメンバーにより構成されるチームとして、2017年末までに月面探査ローバーの開発・打ち上げを目指している。GLXPでは、民間出資によって開発されたロボット探査機で、1.ローバーを月面に到達させる、2.月面を500m移動する、3.月面の高画質な写真や動画を地上に送る、という3つのミッションを達成することが各チームに課せられており、これらのミッションを達成するには、月-地球間の高遅延・低帯域・途絶が多発する通信環境下で、安定的・正確に効率的な通信を行い、ローバーを月面の過酷な環境で動作・走行させる必要がある。
HAKUTOでは、これに加えて、月面上の縦孔の一つの近くに着陸し、縦孔探査を行うことを目標にしている。「縦孔」とは、2009年に日本の月面探査衛星「かぐや」によって発見された月面に垂直に開いた穴で、月の誕生をよりよく理解する鍵となることが期待されており、また将来人類が長期滞在する基地を設営するための有力候補地でもあると考えられている。その後の米国の月探査機であるLunar Reconnaissance Orbiter (LRO) により、同様の縦孔構造が多数確認され、これらの縦孔の下に空洞構造が存在することを強く示すデータも得られており、今後のきわめて重要な探査対象と考えられる。
HAKUTOでは、不整地走行ロボットや超小型衛星開発などで培われた技術を応用し、GLXPミッションを実行することを目的とし、世界最小の月面探査ローバーを開発している。2014年後半にはプリフライトモデル(PFM)を用いて、宇宙機として機能することを証明するために、振動試験、熱真空試験を実施し、ローバーが宇宙環境に耐久性があることを確認した。2014年12月には静岡県浜松市にある中田島砂丘にてフィールドテストを実施し、運用シーケンス、画像を用いた遠隔でのローバー制御テスト、斜度30°の斜面を含む500m以上の区間の連続走行実証実験を行い、2015年1月にはGLXPにおける中間賞「モビリティサブシステム」部門を受賞した。2016年2月には月-地球間の高遅延環境を克服するために、NICT/クレアリンク社で開発したHpFP(High-performance and Flexible Protocol)を利用した通信実験も行い、現在は打ち上げに向けた最終機(フライトモデル)の設計・開発を進めている。
発表では、HAKUTOのマイクロローバーについて概要紹介、開発のステータスの説明、通信・データ処理に関する報告を行う。