日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI21] 情報地球惑星科学と大量データ処理

2016年5月24日(火) 10:45 〜 12:15 A02 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*村田 健史(情報通信研究機構)、野々垣 進(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質情報研究部門 情報地質研究グループ)、堀 智昭(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、豊田 英司(気象庁予報部業務課)、寺薗 淳也(会津大学)、若林 真由美(基礎地盤コンサルタンツ株式会社)、堀之内 武(北海道大学地球環境科学研究院)、大竹 和生(気象庁気象大学校)、座長:若林 真由美(基礎地盤コンサルタンツ株式会社)、大竹 和生(気象庁気象大学校)

11:45 〜 12:00

[MGI21-11] 遅延・パケットロス環境で高速データ伝送を行うためのUDPベースの高信頼性通信プロトコル:HpFP

*水原 隆道1高木 文博1福島 啓介1村田 健史2山本 和憲2長屋 嘉明2村永 和哉3木村 映善4 (1.株式会社クレアリンクテクノロジー、2.情報通信研究機構、3.株式会社セック、4.愛媛大学医学部)

筆者らはパケット損失や遅延が生じる長距離広帯域伝送ネットワーク環境においても高い伝送効率を実現するトラスポート層プロトコル「HpFP(High-performance and Flexible Protocol)」を開発し、Web公開を開始した(http://hpfp.nict.go.jp)。近年のネットワーク広帯域化に伴って、10Gbpsを超えるような高速データ伝送プロトコルの必要性が高まっている。これまでにも様々なTCPをベースとしたプロトコルが開発されているが、ネットワークにおいて一定値以上のパケット損失や遅延が生じる場合に伝送効率が大きく劣化するため、期待するような高速データ伝送が提供できないという課題があった。HpFPは、このような課題を解決するために、TCPではなくUDPをベースに独自プロトコルとして設計した。この制御方式ではACKパケットによってフィードバックされるスループット、パケットロス率および受信バッファ使用率を総合的に評価して、次の送出スループットを決定する。この制御方式を導入するためにHpFPが実装した機能としては、固定間隔でのACK送信、送信可能な最大パケット長探索、帯域予測に基づくパケット送出間隔制御、再送パケットの送信優先制御などがあげられる。HpFPが採用する制御方式では、一時的に生じるパケット損失や遅延に起因するスループット低下に対して、目標値へ速やかに回復するような工夫がなされている。制御量として用いるスループット値は、初期値には目標値の50%を設定する。さらにスループット予測値をもとに、制御量として用いるスループット値をフィードバック制御によって更新する。更新に際しては、直前の測定値よりも高い場合に予測値よりもさらに高いスループット値を設定することで、ネットワーク環境の一時的な劣化によるスループット低下からの回復を速やかする。一方、スループット予測値が直前の測定値よりも低い場合、予測値と過去数回分の測定値から得た加重平均値を制御量とすることで、一時的なネットワーク環境の劣化による影響を少なくするよう工夫している。得られた制御量としてのスループット値から送信可能な最大パケット長の探索結果に基づいてパケット送出間隔を算出することで、スループット変動にも対応するデータ伝送プロトコルとしている。HpFPによる伝送性能の実証として、10Gbpsネットワークを利用した室内実験では、パケット損失0.1%、通信遅延10ミリ秒のネットワーク環境において約9Gbpsの通信速度を達成した(TCPの場合と比較して145倍の速度)。また、超高速インターネット衛星「きずな」とインマルサット衛星による衛星間回線実験では、2000ミリ秒を超える遅延が生じる環境であっても、理論上の伝送速度の最大値に迫る2.6Gbpsでのデータファイル転送が行えることを確認した。さらに、日米間回線(パケット損失0.5%、往復遅延時間150ミリ秒)においては、10000個のデータファイル(ファイルサイズは1MB)を理論値に近い伝送速度をもって転送することに成功した。今回開発したHpFPはカーネル非依存であることから、カーネル(オペレーティングシステム)やハードウェアによらずに動作する特長をもつ。サーバ系(Linux)やPC系(WindowsおよびMacOSX)だけではなく、モバイル系(AndroidおよびiOS)等での利活用が期待される。