日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI22] 計算科学による惑星形成・進化・環境変動研究の新展開

2016年5月24日(火) 10:45 〜 12:15 A07 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*牧野 淳一郎(理化学研究所計算科学研究機構)、林 祥介(神戸大学・大学院理学研究科 惑星学専攻/惑星科学研究センター(CPS))、井田 茂(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、相川 祐理(筑波大学計算科学研究センター)、小河 正基(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、梅村 雅之(筑波大学計算科学研究センター)、座長:小河 正基(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)

10:45 〜 11:00

[MGI22-06] 地球形成の「ABELモデル」から導かれる今後の太陽系惑星形成論の新展開

*丸山 茂徳1戎崎 俊一2 (1.東京工業大学地球生命研究所、2.理研)

キーワード:惑星形成理論、ABELモデル

地球は、大気・海洋成分を全くもたないドライな状態で45.6億年前に誕生し、約44億年前に、大気・海洋成分が二次的に付加した。このようなプロセスで説明される地球形成モデルをABELモデル(Advent of Bio-Elements Landing Model)と呼ぶ。固体地球の起源がエンスタタイトコンドライトであることは、酸素同位体組成ほか7種類の元素の同位体分析によって明らかであるのと同時に、地球の水の起源が炭素質コンドライトであることは水素同位体比によって強く裏付けられている。これらを最もうまく説明するのがABELモデルであり、生命誕生に至る代謝のプレカーサ―であったことが強く示唆される。
ABELモデルの提案に基づき改めて導かれる、「計算科学による惑星形成・進化・環境変動研究の新展開」の具体的描像を展望する。(1)月形成論(ジャイアントインパクト説):ジャイアントインパクトの有無と時期(地球のコアの温度が低すぎる、これを説明するには地球だけが寡占的に成長しその他の惑星が小さいまま進化するモデルが必要)。(2)小惑星帯の化学組成累帯構造:観測の事実はGrand Tackモデルが予言するランダムな組成分布を支持しない。水平方向に物質循環を起こす新しいモデルを構築し小惑星帯領域に質量の欠損を持つ新しいモデルの構築が必要(たとえば戎崎・今枝のタンデムモデル)。(3)隕石の年代学の学際研究:コア、マントルの分離はアステロイドのステージに完了し、それらの衝突融合による層状構造の発達が大規模層状分化をまねいた。したがってコアの組成は低圧で完了していた。(4)H2ガス:隕石の年代学に基づき、隕石簿天体が破壊され、内部の高温マントルや核が九例された年代をコンパイルすると最古の年代は円盤形成後300万年が経過する前に水素ガスは晴れていたことになる。今後年代測定の数が増加すればこの年代はさらに性格になる。小惑星の破壊が可能になった原因を水素ガスの晴れ渡りだとすれば小惑星帯の位置で水素ガスは3Maの頃にはすでに晴れていたことになる。
これらの知見をもとに新たな太陽系惑星形成論に期待される新展開を解説する。