日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI22] 計算科学による惑星形成・進化・環境変動研究の新展開

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*牧野 淳一郎(理化学研究所計算科学研究機構)、林 祥介(神戸大学・大学院理学研究科 惑星学専攻/惑星科学研究センター(CPS))、井田 茂(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、相川 祐理(筑波大学計算科学研究センター)、小河 正基(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、梅村 雅之(筑波大学計算科学研究センター)

17:15 〜 18:30

[MGI22-P08] 地球型系外惑星の気候の数値的探索

*石渡 正樹1納多 哲史2中島 健介3高橋 芳幸4竹広 真一5林 祥介4 (1.北海道大学大学院理学研究院、2.京都大学大学院 理学研究科、3.九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門、4.神戸大学大学院理学研究科、5.京都大学数理解析研究所)

キーワード:大気大循環モデル、系外惑星、生命存在可能性、暴走温室状態、全球凍結状態

ケプラー宇宙望遠鏡による探査では1000個以上の系外惑星が発見されている. これらの中にはスーパーアースと呼ばれる地球の数倍程度の質量を持つ惑星も存在している. 地球に似た惑星に関する考察は, 地球外生命の存在可能性に関する議論へ発展する可能性を持つと同時に, 地球のような温和な環境が実現されるための条件および地球環境の安定性に関する理解を深めるものでもある. このように気候研究の対象が急速に増えている状況を踏まえて, 我々は様々な惑星の気候を数値的に探索することを目指している.
我々の目的は, 惑星の気候状態の多様性を把握した上で惑星が海洋を持つための条件に関して理解を深めることである. 海洋の存在条件を規定するものとして, 全球凍結状態の発生と暴走温室状態の発生が挙げられる. 全球凍結状態に関する考察として, 気候レジーム図を作成した Budyko (1969) が知られている. 彼の気候レジーム図は, 太陽定数の変化に対して部分凍結解・全球凍結解・氷無し解のうちのいずれが存在するかを表すものである. 一方, 暴走温室状態とは, 表面に海が存在する惑星の湿潤な大気において, 入射フラックスが大気によって射出可能な赤外放射量上限値 (射出限界) を上回り, 熱収支が均衡しえなくなる状態である (Nakajima et al., 1992). 暴走温室状態が発生すると海洋は全て蒸発すると考えられる. これより, 我々は, 大気大循環モデルを用いて全球凍結状態・暴走温室状態を含めた多様な気候状態の探索の一環としていくつかの計算を行なってきた.
用いているモデルは大気大循環モデル DCPAM5 (http://www.gfd-dennou.org/library/dcpam) である. サブグリッドスケールの物理素過程は気象学分野で標準的なパラメータ化の方法を用いて表現する. 雲水量については, 生成・移流・乱流拡散・消滅を考慮した時間発展方程式を解くことにより求めている. 現在のところ, 消滅に関しては消散時間を外部パラメータとして与えるという簡単な取り扱いに留まっている. 我々の数値実験はパラメータスイープを中心とするものであるため, 比較的小規模な実験を多数実施するというものである. 南北 1 次元モデルを用いた Budyko (1969) の計算とは異なり, 3 次元 GCM 計算による気候レジーム図の作成には大量の計算資源が必要となる. いくつかの実験について高解像度の大規模計算を行なうための計算資源に加えて, 多数の小規模計算を行なうのに適した計算資源が特に必要である.
我々がこれまでにおこなってきたことは, 同期回転惑星, 陸惑星, 水惑星などを対象とした暴走温室状態の発生条件に関する調査である. これまでの計算で, 雲の有無・日射分布によらず太陽定数が増大した場合に赤外放射量最大値を全球平均日射吸収量が越えると暴走温室状態が発生するようだ, ということが見えつつある.
これまでの我々の計算は, 基本的に現在の地球に準拠した設定になっていた. 放射過程は地球用の放射スキーム (Chou et al., 1996 および Chou et al., 2001) を用いている. 雲の消滅時間については, 放射収支が現在地球のものと似た結果になるようにパラメータチューニングしている. また, 地表面についても簡単化しており, 地表面は全て比熱が 0 の沼地であると仮定していた. 現在, 我々のモデルの計算能力を高めるべく, H2O-CO2 大気用放射スキームの開発・海洋モデルの開発などを進めているところである. 今後は, これらの開発を行ないながら, 様々な系外惑星的設定において全球凍結状態と暴走温室状態を含めた気候レジーム図を作成することを行なっていく予定である.