17:15 〜 18:30
[MGI23-P01] 地学に関する枝分かれ現象を理解する簡単実験
キーワード:枝分かれ、フラクタル解析、ホートンの法則
地学は様々な時間スケール・空間スケールで生じる現象を扱う分野であり,地学現象の一部始終を実際に観察することは難しい.したがって,実感を持って地学現象を理解するためには,実際の時間・空間スケールを実験室で再現できる程度に拡大・縮小した模擬実験が重要な役割を果たす.
現在,自然界では成長する時間・空間スケールが異なる様々な枝分かれの形態を観察することができる.地学に関係するものでは,河川網,稲妻,溶岩流,雪の結晶や霜の形態などが枝分かれによって形成したものである.これらの形成に関する時間スケールは,稲妻のように一瞬で形成するものや河川網のように長い時間を掛けて形成するものまで様々である.したがって,枝分かれが形成する一部始終を実際に観察することは困難であり,それらがどのように形成したのかを理解するのは難しい.
本研究では,枝分かれの形態に注目して,それらがどのような過程で形成したかを理解することを目的とした実験を行った.実験では,枝分かれ現象を手のひらサイズで再現することができるため,実験者が自らの手の上で枝分かれが成長する様子を観察することができる.本研究ではさらに,実験で形成した枝分かれの形態をフラクタル解析やホートンの法則を用いて数値化し,定量的に扱うことで自然界の枝分かれと比較することも試みた.
実験は,2 枚のアクリル板でアクリル絵の具を挟み,その状態からアクリル板をゆっくりはがすものである.アクリル板をはがす際に,空気がアクリル絵の具に侵入し,枝分かれをしながら発達していく.結果的に空気がアクリル絵の具に侵入した経路と侵入されたアクリル絵の具の両方で枝分かれの模様が形成される.本研究では 4 回の実験を行い,実験で形成した模様についてフラクタル解析およびホートンの法則による解析を行った.
アクリル絵の具と空気の経路のフラクタル次元はそれぞれ Dpaint = 1.59〜1.64,Dair = 1.86〜1.89 となり,両者の合計は Dpaint + Dair = 3.48〜3.50 である.アクリル絵の具と空気の経路のフラクタル次元はわずかに負の相関があるように見えるが,両者の合計はほぼ一定である.ホートンの法則では,分岐比がアクリル絵の具で Rpaint = 4.57〜5.38,空気の経路で Rair = 2.98〜4.72 となり,実験毎に幅があるものの,すべての実験においてアクリル絵の具の方が大きくなっている.枝分かれの最高次数(n)は,アクリル絵の具が npaint = 5,空気の経路が nair = 4 で,アクリル絵の具の方が大きい.
自然界の枝分かれとの類似性を考えると,空気がアクリル絵の具に侵入する様子は,低粘性流体が高粘性流体に侵入する様子に類似しており,自然界で生じる枝分かれ現象を再現しているといえる.フラクタル次元については,アクリル絵の具が Dpaint = 1.59〜1.64 となり,拡散で形成する DLA モデルのコンピュータシミュレーション結果(D = 1.71)に比較的近い値となっている.したがって,アクリル絵の具の形態は自然界の枝分かれ現象をシミュレーションした DLA モデルに類似したモデルと判断できる.また,アクリル絵の具と空気の経路のフラクタル次元の合計はほぼ一定である.したがって,アクリル絵の具に侵入する側の空気と侵入される側のアクリル絵の具のどちらか一方のフラクタル次元が分かれば,他方の次元も分かることになる.ホートンの法則では,アクリル絵の具と空気の経路で,分岐比・最高次数ともにアクリル絵の具の方が大きく,より分岐が発達した図形といえる.また分岐比を,天然の河川網の分岐比(高木,1992)と比較すると,アクリル絵の具(Rpaint = 4.57〜5.38)が北海道の河川やアマゾン川よりも分岐しているのに対して,空気の経路(Rair = 2.98〜4.72)はナイル川〜北海道の河川程度の分岐であることが分かった.
本研究で紹介した実験は,簡単であること,さらに自然界の枝分かれと類似していることから自然界の枝分かれを理解する最適な実験と考えられる.
現在,自然界では成長する時間・空間スケールが異なる様々な枝分かれの形態を観察することができる.地学に関係するものでは,河川網,稲妻,溶岩流,雪の結晶や霜の形態などが枝分かれによって形成したものである.これらの形成に関する時間スケールは,稲妻のように一瞬で形成するものや河川網のように長い時間を掛けて形成するものまで様々である.したがって,枝分かれが形成する一部始終を実際に観察することは困難であり,それらがどのように形成したのかを理解するのは難しい.
本研究では,枝分かれの形態に注目して,それらがどのような過程で形成したかを理解することを目的とした実験を行った.実験では,枝分かれ現象を手のひらサイズで再現することができるため,実験者が自らの手の上で枝分かれが成長する様子を観察することができる.本研究ではさらに,実験で形成した枝分かれの形態をフラクタル解析やホートンの法則を用いて数値化し,定量的に扱うことで自然界の枝分かれと比較することも試みた.
実験は,2 枚のアクリル板でアクリル絵の具を挟み,その状態からアクリル板をゆっくりはがすものである.アクリル板をはがす際に,空気がアクリル絵の具に侵入し,枝分かれをしながら発達していく.結果的に空気がアクリル絵の具に侵入した経路と侵入されたアクリル絵の具の両方で枝分かれの模様が形成される.本研究では 4 回の実験を行い,実験で形成した模様についてフラクタル解析およびホートンの法則による解析を行った.
アクリル絵の具と空気の経路のフラクタル次元はそれぞれ Dpaint = 1.59〜1.64,Dair = 1.86〜1.89 となり,両者の合計は Dpaint + Dair = 3.48〜3.50 である.アクリル絵の具と空気の経路のフラクタル次元はわずかに負の相関があるように見えるが,両者の合計はほぼ一定である.ホートンの法則では,分岐比がアクリル絵の具で Rpaint = 4.57〜5.38,空気の経路で Rair = 2.98〜4.72 となり,実験毎に幅があるものの,すべての実験においてアクリル絵の具の方が大きくなっている.枝分かれの最高次数(n)は,アクリル絵の具が npaint = 5,空気の経路が nair = 4 で,アクリル絵の具の方が大きい.
自然界の枝分かれとの類似性を考えると,空気がアクリル絵の具に侵入する様子は,低粘性流体が高粘性流体に侵入する様子に類似しており,自然界で生じる枝分かれ現象を再現しているといえる.フラクタル次元については,アクリル絵の具が Dpaint = 1.59〜1.64 となり,拡散で形成する DLA モデルのコンピュータシミュレーション結果(D = 1.71)に比較的近い値となっている.したがって,アクリル絵の具の形態は自然界の枝分かれ現象をシミュレーションした DLA モデルに類似したモデルと判断できる.また,アクリル絵の具と空気の経路のフラクタル次元の合計はほぼ一定である.したがって,アクリル絵の具に侵入する側の空気と侵入される側のアクリル絵の具のどちらか一方のフラクタル次元が分かれば,他方の次元も分かることになる.ホートンの法則では,アクリル絵の具と空気の経路で,分岐比・最高次数ともにアクリル絵の具の方が大きく,より分岐が発達した図形といえる.また分岐比を,天然の河川網の分岐比(高木,1992)と比較すると,アクリル絵の具(Rpaint = 4.57〜5.38)が北海道の河川やアマゾン川よりも分岐しているのに対して,空気の経路(Rair = 2.98〜4.72)はナイル川〜北海道の河川程度の分岐であることが分かった.
本研究で紹介した実験は,簡単であること,さらに自然界の枝分かれと類似していることから自然界の枝分かれを理解する最適な実験と考えられる.