日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS06] 生物地球化学

2016年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 A03 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、座長:大河内 直彦(海洋研究開発機構)、岩田 智也(山梨大学生命環境学部)、角皆 潤(名古屋大学大学院環境学研究科)

10:00 〜 10:15

[MIS06-05] 水文・水質モデリングによる流域スケールの窒素循環定量化の試み

*大西 健夫1宗村 広昭2平松 研1 (1.岐阜大学応用生物科学部、2.島根大学生物資源科学部)

キーワード:SWAT、脱窒

陸域生態系における窒素循環は、河川を通して湖沼・海洋の水域に大きな影響を及ぼし地球全体の窒素循環に重要な役割を果たしている。窒素循環の素過程や個別生態系における窒素循環に関する知見は実証的研究成果の蓄積とともに充実しつつある。しかし、個別生態系やそれらの複合からなる流域生態系における窒素循環を総合的に精度よく定量化することは未だ十分には果たされていない。個別生態系における窒素循環に関する知見が集積しつつある現在、モデリングによりこれらの知見を統合し、流域としての窒素循環定量化が必要であろう。そこで本研究では、大小7河川から構成される伊勢湾流域圏を対象として、水文・水質モデリングを行い、対象河川の流量、TN、NO3濃度の再現を通して窒素循環特性の定量化を試みた。モデリングにはSWAT(Soil Water Assessment Tools)モデルを用いた。モデルにおいては、水循環と窒素循環双方に関わる人為的な要因として流域の農業用水および家庭用水の取水排水量および無機態窒素の濃度を考慮した。また窒素循環に関わる人為的な要因として農地への施肥量を考慮した。流量および水質のキャリブレーション期間を2004年~2006年とし、バリデーション期間を2007年~2009年とした。2000回のLCS法によるキャリブレーションの結果、流量に関しては、NS値が0.6~0.8と比較的よい再現結果を得た。続いて、流量キャリブレーションと同様の方法でTN、NO3濃度の再現を試みたところ、あり得るパラメータの範囲内では、パラメータの不確実性を考慮しても過大評価傾向を示す河川があることがわかった。このことは、流域における脱窒量の評価において考慮されていない要因があることを示唆するものである。結果の検討より、モデルでは考慮されていない河岸域の脱窒、および農業排水路における脱窒、等を考慮する必要性が示唆された。