日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS06] 生物地球化学

2016年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 A03 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、座長:大河内 直彦(海洋研究開発機構)、岩田 智也(山梨大学生命環境学部)、角皆 潤(名古屋大学大学院環境学研究科)

10:15 〜 10:30

[MIS06-06] 兵庫県豊岡盆地の地下水質

*横尾 頼子1 (1.同志社大学理工学部)

兵庫県北部の豊岡盆地を貫き日本海に注ぐ円山川は下流域が非常に緩勾配であり,支流の出石川との合流地点付近まで海水が遡上する.また,豊岡盆地の地下水は水道用・工業用・農業用・生活用・消雪用として多量に使用されており,地下水位の低下に伴って,軟弱な粘土層が収縮しておこる地盤沈下や,化石塩水や遡上海水による地下水の塩水化が問題となっている.本研究では,このような地形の特徴や水資源の利用によって,水位の低下や塩水化が懸念されている豊岡盆地の地下水を11地点で2008年6, 8, 10 月および2009年2月に採取し,採取時期,採取地点,井戸の深さによる地下水の水質の特徴をまとめた.
豊岡盆地の地下水の水温は平均16.8℃であった.井戸の深さに応じた水温変化はみられなかった.6月に平均18.1℃,2月に平均15.5℃と夏から冬にかけて低下する傾向がみられた.豊岡盆地の地下水は採取地点や井戸の深さにより異なる水質を示した.
盆地南部の4地点では,地点によってNa・Ca- HCO3型, Mg・Ca- HCO3型, Ca・Na- HCO3型の水質を示した.井戸の深さは10〜25 mと浅い. pHは弱酸性から中性であり,ORPは正で酸化的環境を示していた.NO3-以外のイオンの濃度およびECは他の地点に比べて低く,NO3-濃度は5〜10 ppmと高かった.円山川に合流する出石川周辺の地下水のイオン組成とECは出石川の河川水質と同じであることから,この地下水は河川の伏流水であると考えられる.盆地南西部の地下水のイオン組成とECは,付近を流れる円山川支流の河川水質と似ている. Mg・Ca- HCO3型の水質から,流域の地質を構成する玄武岩や安山岩の砕屑物が帯水層に存在する浅層地下水であると考えられる.円山川と出石川が合流する地点の地下水のpHは弱アルカリ性,ORPは負の値であることから,河川の伏流水以外の影響も受けていると考えられる.
盆地北東部の地下水のイオン組成はNa-HCO3型であった.井戸の深さは40 mであり,pHは弱酸性から中性,ORPは負の値であった.盆地南部のNa・Ca- HCO3型の水質から盆地北東部のNa-HCO3型への変化は,円山川と出石川の合流点より上流の地域と円山川支流からの河川水およびこれらの地域への降水の一部が,Ca- HCO3型の浅い地下水となり,円山川に沿って北に下がるにつれて土壌とのイオン交換が進行し,Na- HCO3型の地下水となる地下水流動に伴う水質変化を示している.
盆地南東部の出石川付近の井戸の深さは8 mと浅いが,ORPは負の値であり,ECは高かった.イオン組成はNa-HCO3型であった SO42-は検出されず,採水後の試料には鉄酸化物の赤い沈殿物がみられたことから,浅くても帯水層が還元的な環境の地下水である.2月の採取試料のみ,NO3-濃度が33 ppmと高い時期的変動がみられた.他の地点に比べて, K+, HCO3-およびSi濃度が高いことから,岩石の風化過程起源のイオンの寄与が示唆される.
盆地中央部の地下水のイオン組成はNa-Cl・HCO3型であった.井戸の深さは30.8〜47 mであり,pHは弱アルカリ性, ECは42.8〜50.7 mS/m,ORPは−104〜−158 mVで,3地点で同じような値を示した.イオン組成には時期的変動がみられた.この3地点は豊岡盆地の中心部に位置し,地盤沈下と冬期の地下水位の低下がみられる地域であるため,地下水位の変動に応じてイオン組成が変化する可能性が示唆される.豊岡盆地の円山川西側では,金剛寺断層上の深井戸から鉱泉的な塩水と考えられる高塩水が湧出し,この塩水が被圧地下水と混合してNa-Cl型の地下水が分布していることが報告されている.円山川東側についてはこれまで高塩水の湧出の報告はなく, Na-Cl・HCO3型の水質は地下水位の低下に伴う地下水の新たな塩水化を示している.
盆地北部の円山川と支流の奈佐川の合流付近と盆地東部の円山川支流の六方川上流部付近の地下水の主要イオン組成はNa-Cl型で,塩水の組成を示した.井戸の深さはそれぞれ40 m,70 mと深い.pHは弱アルカリ性であり,NO3-以外のイオンの濃度およびECは他の地点に比べて高かった.盆地北部では円山川を遡上する海水を起源とする高塩水が報告されており,円山川と奈佐川の合流付近の地下水は遡上海水の影響を受けていると考えられる.盆地東部での地下水の塩水化の報告はこれまでなく,地下に化石塩水が存在していることが新たに示された.