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[MIS06-P01] 溶存酸素の三酸素同位体組成自動分析手法の開発
キーワード:溶存酸素、三酸素同位体、鉛直分布,貧酸素化
酸素分子(O2)には三種の安定同位体(質量数16、17、18)があり、その相対存在比は、自然界の諸過程(化学反応など)において、同位体分別する。光合成や呼吸の際に進行する一般の同位体分別では、16Oに対する17Oの濃縮度(δ17O)が、16Oに対する18Oの濃縮度(δ18O)の約半分になるように同位体分別するのに対して、成層圏で進行するある種の光化学反応では、16Oに対する17Oの濃縮度が、16Oに対する18Oの濃縮度とほぼ等しくなるように同位体分別する。このため、大気中のO2を基準にすると光合成由来O2の三酸素同位体組成(∆17O = ln(δ17O + 1) – 0.518ln(δ17O + 1))は、約+150 ~ +250 per megの値になる。水環境中の溶存酸素の∆17Oは、呼吸などの一般的な反応では変化しないため、水中内の光合成反応で生成された固有の∆17O値(∆17O = +150 ~ 250)を持つO2と大気から溶け込むO2(∆17O = +8 ~ 18)の混合のみを反映する。その混合比を高精度で定量化することにより、大気−水環境ガス交換係数の見積もり(光合成の起こらない夜間限定)や、水環境中の総一次生産量の定量に応用することができる。しかし、O2とArの大気圧下における沸点差はごく僅かでカラム特性も似ているため、分離に長時間を要する。これまでに報告された∆17O値は、アルゴン(Ar)を除去せずに定量していたため、ArがO2の同位体定量に及ぼす影響を考慮した複雑な補正が必要であった。そのため、O2/Ar比の変化が大きい水環境で応用するために十分な精度を得ることは難しかった。そこで本研究では、水試料中の溶存ガスを抽出し、そこからO2のみを分離・精製し、高精度で∆17Oを測定する分析システムを構築し、O2/Ar比が大きく変動するような水環境でも∆17Oを定量できるようにした。この手法を用いて、近年富栄養化・低酸素化が顕著である琵琶湖(滋賀県)北湖でDOの三酸素同位体組成の鉛直分布を、その時間変化とともに定量化してその影響を評価したので、結果を報告する。