17:15 〜 18:30
[MIS06-P02] 炭化板パッシブサンプラーによる大気中水銀濃度モニタリング
ー首都圏と北海道の大気中水銀濃度の比較ー
キーワード:大気汚染モニタリング、炭化板パッシブサンプラー、水銀
[はじめに]
大気中に存在する水銀は95%以上がHg0(ガス状元素態水銀)、その他にHg2+(酸化水銀)、Hg-P(粒子状水銀)に大別される。大気中で主要なHg0は、不活性で溶解度が低いため、大気中での滞留時間が1~2年と見積もられている。そのため、ユーラシア大陸で放出された水銀が日本に大気輸送され、日本の生態系へ取り込まれることが懸念されている。日本での観測は1997年から開始され、現在では全国300地点以上のモニタリングステーションで金アマルガム捕集法により大気中水銀を採取し、濃度を測定している。しかし、測定頻度は月1回、24時間捕集であり、採取日も地点毎に異なり、日本全国の平均的な濃度分布の概略を知るためには有効なデータだと考えらえるが、この手法では測定が市街地に限られており、電源確保の困難な地点での測定が困難なため、山間部や林間部などの遠隔地点の大気中水銀濃度の調査は極めて少ない。そこで、本研究では安価で簡単に作成可能であり、電源を必要とせず山間部を含めた多地点での測定が可能な「炭化板パッシブサンプラー」を用いた大気中濃度の測定を開始している。本講演では北海道、群馬県、山梨県、埼玉県において実施した大気中水銀濃度の測定結果を述べる。
[方法]
本研究で作成した炭化板パッシブサンプラーを北海道雨竜郡幌加内町字母子里(北海道大学雨龍研究林)、北海道札幌市(北海道大学札幌キャンパス)、埼玉県熊谷市(立正大学熊谷キャンパス)、埼玉県加須市(埼玉県環境科学国際センター)に2014年7月に全地点に炭化板パッシブサンプラーを設置し2015年8月まで1ヶ月毎にサンプラーを交換した。また、炭化板パッシブサンプラーの水銀吸着量から大気中水銀濃度に換算するため、熊谷市と加須市では並行して大気中水銀濃度も測定した。回収した炭化板パッシブサンプラーはパラフィルムで密閉し、実験室にて吸着面積を測定後、日本インスツルメンツ製のMA-2000を用いて測定した。大気中水銀濃度は、ポンプを用いて50mL/minの吸引速度で捕集管に金アマルガム捕集し、回収した捕集管はブチルゴム栓付試験管に保管し、実験室にて日本インスツルメンツ製のWA-50を用いて測定した。
[結果]
大気中積算水銀濃度をM、炭化板パッシブサンプラー中の水銀吸着量をPとすると、両者の関係はM=0.003P+0.06(r=0.09、n=20)となった。この式を用いて、各地点の大気中水銀濃度を求めた結果、幌加内町における大気中水銀濃度は0.1~1.3ng/m3、札幌市では0.6~1.5ng/m3、中之条町では0.2~1.4ng/m3、熊谷市では1.7~3.1ng/m3、加須市では1.9~2.9ng/m3、韮崎市では0.4~1.8ng/m3であり、どの地点も季節変動は小さかった。全国のモニタリングステーションの平均濃度は約2.3ng/m3であり、北米やヨーロッパンの遠隔地域の濃度は1.5~1.7ng/m3と言われている。熊谷市と加須市は、日本の平均的な濃度を示し、札幌市、母子里、中之条町、韮崎市は、北米やヨーロッパの遠隔地域の濃度よりもやや低い値を示した。
大気中に存在する水銀は95%以上がHg0(ガス状元素態水銀)、その他にHg2+(酸化水銀)、Hg-P(粒子状水銀)に大別される。大気中で主要なHg0は、不活性で溶解度が低いため、大気中での滞留時間が1~2年と見積もられている。そのため、ユーラシア大陸で放出された水銀が日本に大気輸送され、日本の生態系へ取り込まれることが懸念されている。日本での観測は1997年から開始され、現在では全国300地点以上のモニタリングステーションで金アマルガム捕集法により大気中水銀を採取し、濃度を測定している。しかし、測定頻度は月1回、24時間捕集であり、採取日も地点毎に異なり、日本全国の平均的な濃度分布の概略を知るためには有効なデータだと考えらえるが、この手法では測定が市街地に限られており、電源確保の困難な地点での測定が困難なため、山間部や林間部などの遠隔地点の大気中水銀濃度の調査は極めて少ない。そこで、本研究では安価で簡単に作成可能であり、電源を必要とせず山間部を含めた多地点での測定が可能な「炭化板パッシブサンプラー」を用いた大気中濃度の測定を開始している。本講演では北海道、群馬県、山梨県、埼玉県において実施した大気中水銀濃度の測定結果を述べる。
[方法]
本研究で作成した炭化板パッシブサンプラーを北海道雨竜郡幌加内町字母子里(北海道大学雨龍研究林)、北海道札幌市(北海道大学札幌キャンパス)、埼玉県熊谷市(立正大学熊谷キャンパス)、埼玉県加須市(埼玉県環境科学国際センター)に2014年7月に全地点に炭化板パッシブサンプラーを設置し2015年8月まで1ヶ月毎にサンプラーを交換した。また、炭化板パッシブサンプラーの水銀吸着量から大気中水銀濃度に換算するため、熊谷市と加須市では並行して大気中水銀濃度も測定した。回収した炭化板パッシブサンプラーはパラフィルムで密閉し、実験室にて吸着面積を測定後、日本インスツルメンツ製のMA-2000を用いて測定した。大気中水銀濃度は、ポンプを用いて50mL/minの吸引速度で捕集管に金アマルガム捕集し、回収した捕集管はブチルゴム栓付試験管に保管し、実験室にて日本インスツルメンツ製のWA-50を用いて測定した。
[結果]
大気中積算水銀濃度をM、炭化板パッシブサンプラー中の水銀吸着量をPとすると、両者の関係はM=0.003P+0.06(r=0.09、n=20)となった。この式を用いて、各地点の大気中水銀濃度を求めた結果、幌加内町における大気中水銀濃度は0.1~1.3ng/m3、札幌市では0.6~1.5ng/m3、中之条町では0.2~1.4ng/m3、熊谷市では1.7~3.1ng/m3、加須市では1.9~2.9ng/m3、韮崎市では0.4~1.8ng/m3であり、どの地点も季節変動は小さかった。全国のモニタリングステーションの平均濃度は約2.3ng/m3であり、北米やヨーロッパンの遠隔地域の濃度は1.5~1.7ng/m3と言われている。熊谷市と加須市は、日本の平均的な濃度を示し、札幌市、母子里、中之条町、韮崎市は、北米やヨーロッパの遠隔地域の濃度よりもやや低い値を示した。