日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS06] 生物地球化学

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

17:15 〜 18:30

[MIS06-P03] 富士山麓アカマツ林におけるオゾンフラックス

*熊谷 凌太1和田 龍一1高梨 聡2深山 貴文2中野 隆志3谷 晃4米村 正一郎5 (1.帝京科学大学、2.森林総合研究所、3.富士山科学研究所、4.静岡県立大学、5.農業環境技術研究所)

キーワード:オゾン、フラックス、森林

【はじめに】森林生態系における微量気体の吸収・放出は炭素循環や気候変動に直接的・間接的な影響を及ぼす(Ollinger et al., 2002)。本発表では、森林生態系における窒素酸化物とオゾンのフラックスを、物質の濃度勾配より輸送量を計測する傾度法により、富士吉田アカマツ林(FJY)にて、検討した結果を報告する。
【方法】2014年9月26日~2014年11月13日、富士吉田アカマツ林微気象観測タワー(FJY)にて、大気NO、NO2O3およびCO2濃度の計測を行った。また2015年10月15日~2016年1月21日にO3とCO2濃度の計測を行った。微気象観測タワーと樹冠の高さはそれぞれ32 mと約25 mである。NOとNO2濃度の計測は、Moコンバータ化学発光分析装置(Thermo Scientific, 42i-TL)を用いた。O3とCO2の計測には、それぞれ紫外吸収分析装置(Thermo Scientific, 49i)と赤外吸収分析装置(Li-cor, Li-820)を用いた。大気サンプル口は、アカマツ林の樹冠上2高度(2014年は26 mと32 m、2015年は26 mと34 m)に設置し、各高度の大気を、PFAチューブを用いて地上の分析装置まで吸引し、バルブを用いて交互に各5分間計測を実施した。同時に高度26.5 mに設置したクローズドパス CO2/H2O ガス分析装置(Li-cor, LI-6262)により、CO2フラックスを渦相関法により求め(森林総合研究所CO2フラックス観測データ)、傾度法で求めたCO2フラックスと比較した。
【結果・考察】2014年の観測期間中のCO2フラックスは、傾度法と渦相関法によりそれぞれ-9.0±7.3 micromol m-2 s-1, -8.6±6.5 micromol m-2 s-1(±の後ろの数値は観測値の標準偏差)と得た。傾度法で得られたCO2フラックスは渦相関法で得られた値よりも小さいが、誤差範囲にて一致した。傾度法が機能していることを確認した。窒素酸化物(NO,NO2)の26 mと32 mの濃度に、有意差は計測されなかった。高度間の窒素酸化物の濃度差が小さいことから、市販の計測装置を用いた窒素酸化物の傾度法によるフラックス計測は、検出感度の点から難しいことが分かった。一方O3の26 mと32 mの濃度には、有意な差が計測され、O3のフラックス計測値が得られることが分かった。2014年、2015年の秋季のO3フラックスをそれぞれ-1.1±1.5 nmol m-2 s-1、-1.9±2.5 nmol m-2 s-1と得た。2015年冬季のO3フラックスを-0.9±2.6 nmol m-2 s-1と得た。秋季に比べて冬季でO3の吸収・沈着が小さい傾向があることが明らかとなった。この傾向は先行研究であるカリフォルニアの同じマツ科ポンデローサマツ林でのO3フラックスの観測結果(Fares et al., 2010)とも一致した。
References: Ollinger et.al., 2002, Global Change Biology 8, 545-562. Fares et al., 2010, Agric For Meteorol. 150, 420-431 .