日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS06] 生物地球化学

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*楊 宗興(東京農工大学)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

17:15 〜 18:30

[MIS06-P04] 貧栄養な条件におけるヒノキの樹冠の窒素滞留時間と葉寿命

*中西 麻美1稲垣 善之2 (1.京都大学フィールド科学教育研究センター、2.森林総合研究所四国支所)

キーワード:樹冠の窒素滞留時間、葉寿命、葉生産量、ヒノキ、堆積有機物

樹木は吸収した窒素を効率的に利用するために、窒素を樹体内に長く保持する仕組みを持つ。樹体の窒素滞留時間は、葉寿命と窒素引き戻し率によって決まる。樹種間の比較では、貧栄養な土壌条件に葉寿命の長い樹種がみられる。しかしながら、同一樹種では土壌条件に対して葉寿命や窒素滞留時間をどう変化させているかについての情報は少ない。ヒノキは常緑で葉がりん片状で非常に小さく、葉齢の判別が難しいため葉寿命を知ることが難しい。このため、樹冠葉量を年間落葉量で割って葉寿命を算出する。本研究では、京都市北区の天然更新したヒノキ壮齢林の土壌条件が異なる10地点において、ヒノキの樹冠における窒素滞留時間(leaf-N MRT)に葉寿命と窒素引き戻し率が及ぼす影響について明らかにした。
堆積有機物の窒素量をリターフォールの窒素量で割って算出した堆積有機物窒素の平均滞留時間(A0N-MRT)は5.4~38.3年と広い範囲を示した。これらの値は他の地域のヒノキ林と比べて大きかった。A0N-MRTが長いほど、葉寿命とleaf-N MRTは長くなり、落葉量(葉生産量)、落葉窒素量は小さい傾向を示した。一方、窒素引き戻し率、樹冠葉量、樹冠窒素量、生葉および落葉の窒素濃度とA0N-MRTとは明らかな関係は認められなかった。土壌の窒素資源量が乏しいほど葉の生産を小さくして葉寿命を長くしていた。落葉前の窒素引き戻し率は他の地域のヒノキ林と比べて高かった。窒素引き戻し率はいずれのプロットでも高いため、A0N-MRTと有意な関係が認められなかったと考えられる。また、壮齢のヒノキ林では、立木密度や土壌条件によらず、樹冠葉量は一定量に達していると考えられた。以上の結果から、本調査地におけるヒノキは、leaf-N MRTを長くするために、まず、窒素引き戻し率を高くし、さらに、林分による土壌の窒素資源量に応じて葉生産量を調節することにより葉寿命を変化させていることが明らかとなった。