日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS07] ジオパーク

2016年5月25日(水) 09:00 〜 10:30 101A (1F)

コンビーナ:*尾方 隆幸(琉球大学教育学部)、植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)、有馬 貴之(帝京大学 経済学部 観光経営学科)、大野 希一(島原半島ジオパーク協議会事務局)、松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、座長:大野 希一(島原半島ジオパーク協議会事務局)

09:45 〜 10:00

[MIS07-04] ジオパークを取り入れた自然地理学の授業:長崎県立大学の事例

*植木 岳雪1 (1.千葉科学大学危機管理学部)

キーワード:島原半島ジオパーク、長崎県、自然地理学

長崎県立大学の専門科目「自然地理学」では,地形学,気候学のような系統地理学ではなく,地誌学の観点を重視している.そこで,地誌学の具体例としてジオパークに関する野外体験学習を取り入れている.授業の対象学生は全学の1~4年生であり,毎年履修希望者は100名以上になるが,野外体験学習でのバス2台の定員70名に履修者を制限している.ただし,地理・歴史科の教員免許を取得する数名を除いて,地理学の単位取得は特に必要ない.彼らにとって,地理学を学習するのは,おそらく人生で最後の機会になるだろう. 長崎県には,日本で最初に世界ジオパークに認定された島原半島ジオパークがある.ジオパークに関する野外体験学習には,集中講義3日間のうち,2日目を充当している.ジオサイトは,大野木場小学校,原城趾,早崎海岸,小浜温泉,千々石展望台の5カ所であり,それぞれ,火山災害,歴史,火山岩と植物・石垣,産業,活断層である.3日目には野外体験学習に関するポスター発表会を行い,集中講義終了後にはレポートの課題を出している. 2015年度のアンケート調査によると,実際にジオパークに行ったことがある者は8 %,ジオパークという言葉を聞いたことがある者は60 %であった.数年前には,ジオパークという言葉を聞いたことがある者はほとんどいなかったことから,ジオパークは徐々に大学生に浸透してきたことがわかる.ジオパークに関する野外体験学習については,「とてもよかった」,「よかった」という肯定的な評価が98 %であったが,今後ジオパークに行ってみたいかという問いには「機会があれば行ってみたい」という消極的なものが89 %であった.このことから,野外体験学習は大学生にジオパークを知ってもらうきっかけになったが,ジオパークに興味・関心を高めるためには,別の機会に働きかけを積極的に行う必要があると思われる.また,大学生のジオパークについてのイメージは,野外体験学習の後で「自然だけでなく,歴史や産業のような人の営みのことも考えることができるところ」のように変わったことがわかった.大学生に地誌学的な視点を育成するためには,ジオパークを例にすることが有効と考えられる.