10:00 〜 10:15
[MIS07-05] ドーナツ型風洞を用いた風紋描画装置の開発
キーワード:ドーナツ型風洞、カラーサンド、砂漣・風紋、2次流、平面的分級、循環型風洞
はじめに
風紋は鳥取砂丘の魅力的な観光資源のひとつである。風紋は風向きに直交する横列の微地形で,砂が移動して作られ形を時々刻々と変える。風紋の動態をメンテナンスフリーで展示できる装置があれば,鳥取の新たな観光素材となる。その際,砂の粒径に応じて着色された材料を用いることで,紋様が変化する描画装置となり,風紋をひと味違った形で楽しむことができる。本研究の目的は,循環することでメンテナンスフリーとなるドーナツ型風洞実験装置を開発し,風紋描画装置の実用化に向けた課題を明らかにすることである。
調査方法
透明アクリル製のドーナツ型風洞を設計し,6分割して業者に依頼した。ドーナツの内径は200 cm,外径260 cm,深さ50 cmで,耐久性を考慮して厚さ8 mmのアクリル板を用いた。円弧状湾曲を保持するために,内壁の天地・左右には幅10cm の帯をつけ,隣り合う内壁パーツをボルトで固定した。外壁はロープで縛り付けて歪みを調整した。天板もアクリル製で,円弧外側長で100cm,40 cm,20 cmの3種を組み合わせて発注した。風洞床には,高さ10 cmのドーナツ型木枠を別途発注した。カラーコンパネを用いて3.6 m四方の架台を作り,送風機のアジャスター(整流槽)を自作して,ドーナツ型風洞実験装置を組み立てた。
風速の制御には周波数変換器(Mitsubishi,FR-FS-0.8K)を用いて,送風機(マキタ製,MF302)の回転数を調整した。試運転で1台の送風機により風紋形成に適する風速5 m/sec~12 m/secを実現できたため,本研究では1台の送風機のみを使用した。また天板から空気を抜くためのネット(幅30 cm,長さ40cm)の設置個所を,送風機から送り出された風の最下流端に固定した。実験中には,天板の一部を適宜外して風速を計測した。
220 リットルの細砂~中砂を用いた実験(厚さ10cmで風洞床に敷く)と,56 リットルのカラーサンド(赤φ0.67 mm:9.4 リットル,白φ0.4 mm:18.7リットル,青φ0.25 mm:28.1リットル)を用いた実験の2種類を実施した。前者では風紋の形成・消滅の確認と,砂床面の安定形状(断面形)を計測した。この結果を踏まえて後者では,安定形状の断面を径2 mmのポリプロピレン粒子で作成し,その表面を厚さ1mmのゴム板で覆いこれを風洞床として,そこにカラーサンドを厚さ3 cmで敷いた。送風機の周波数は35 Hz~60 Hzで調整した。実験中は砂床形の変化を観察して,必要に応じて断面形を計測し,平面写真に記録した。
実験結果
細砂~中砂を用いた50 分間の実験後に5か所で計測した。断面の位置は,送風機の接合部を起点として反時計回りに360度で表現した。30°・120°・240°では風洞の内側が外側と比べ10cmほど高くなった類似の断面形を示した。これらと比べ,風の導入口の0°付近では,初期の砂面より低下し,逆に330°では2~4 cm高くなった。
カラーサンドでは10分の実験(6.0 m/s)を3回行った。実験では峰部に粗い赤粒子が集まり風紋がドーナツ風洞全体に形成されたが,実験を繰り返すにつれて,平面的分級(粒度偏析)が進み,課題が顕在化した。この状況は60 Hz(12.5 m/s)の強風を流しても改善されなかった。0°~120°では赤色粗粒子が卓越し,120°~300°では赤色粒子は外壁沿いに集まり,白色と青色粒子が卓越し風紋を作った。300°~360°では青色細粒子が集積した。青色細粒子の集積(堆積)と砂面低下に伴う赤色粗粒子の残留集積は,風の流入口付近の乱れに起因する。
今後の課題
3つの課題が浮き彫りとなった。①風を抜く天井ネットの設置箇所を様々に変えて,風速分布をより均一にすることが,風洞の上下流における平面的な分級を防止することにつながる。②カラーサンドの混合割合を変えることが,赤色粗粒子の残留集積機会を減らすこととなる。③粗粒子が外壁側に,細粒子が内壁側に集積する対策は,今のところ見当たらない。
風紋は鳥取砂丘の魅力的な観光資源のひとつである。風紋は風向きに直交する横列の微地形で,砂が移動して作られ形を時々刻々と変える。風紋の動態をメンテナンスフリーで展示できる装置があれば,鳥取の新たな観光素材となる。その際,砂の粒径に応じて着色された材料を用いることで,紋様が変化する描画装置となり,風紋をひと味違った形で楽しむことができる。本研究の目的は,循環することでメンテナンスフリーとなるドーナツ型風洞実験装置を開発し,風紋描画装置の実用化に向けた課題を明らかにすることである。
調査方法
透明アクリル製のドーナツ型風洞を設計し,6分割して業者に依頼した。ドーナツの内径は200 cm,外径260 cm,深さ50 cmで,耐久性を考慮して厚さ8 mmのアクリル板を用いた。円弧状湾曲を保持するために,内壁の天地・左右には幅10cm の帯をつけ,隣り合う内壁パーツをボルトで固定した。外壁はロープで縛り付けて歪みを調整した。天板もアクリル製で,円弧外側長で100cm,40 cm,20 cmの3種を組み合わせて発注した。風洞床には,高さ10 cmのドーナツ型木枠を別途発注した。カラーコンパネを用いて3.6 m四方の架台を作り,送風機のアジャスター(整流槽)を自作して,ドーナツ型風洞実験装置を組み立てた。
風速の制御には周波数変換器(Mitsubishi,FR-FS-0.8K)を用いて,送風機(マキタ製,MF302)の回転数を調整した。試運転で1台の送風機により風紋形成に適する風速5 m/sec~12 m/secを実現できたため,本研究では1台の送風機のみを使用した。また天板から空気を抜くためのネット(幅30 cm,長さ40cm)の設置個所を,送風機から送り出された風の最下流端に固定した。実験中には,天板の一部を適宜外して風速を計測した。
220 リットルの細砂~中砂を用いた実験(厚さ10cmで風洞床に敷く)と,56 リットルのカラーサンド(赤φ0.67 mm:9.4 リットル,白φ0.4 mm:18.7リットル,青φ0.25 mm:28.1リットル)を用いた実験の2種類を実施した。前者では風紋の形成・消滅の確認と,砂床面の安定形状(断面形)を計測した。この結果を踏まえて後者では,安定形状の断面を径2 mmのポリプロピレン粒子で作成し,その表面を厚さ1mmのゴム板で覆いこれを風洞床として,そこにカラーサンドを厚さ3 cmで敷いた。送風機の周波数は35 Hz~60 Hzで調整した。実験中は砂床形の変化を観察して,必要に応じて断面形を計測し,平面写真に記録した。
実験結果
細砂~中砂を用いた50 分間の実験後に5か所で計測した。断面の位置は,送風機の接合部を起点として反時計回りに360度で表現した。30°・120°・240°では風洞の内側が外側と比べ10cmほど高くなった類似の断面形を示した。これらと比べ,風の導入口の0°付近では,初期の砂面より低下し,逆に330°では2~4 cm高くなった。
カラーサンドでは10分の実験(6.0 m/s)を3回行った。実験では峰部に粗い赤粒子が集まり風紋がドーナツ風洞全体に形成されたが,実験を繰り返すにつれて,平面的分級(粒度偏析)が進み,課題が顕在化した。この状況は60 Hz(12.5 m/s)の強風を流しても改善されなかった。0°~120°では赤色粗粒子が卓越し,120°~300°では赤色粒子は外壁沿いに集まり,白色と青色粒子が卓越し風紋を作った。300°~360°では青色細粒子が集積した。青色細粒子の集積(堆積)と砂面低下に伴う赤色粗粒子の残留集積は,風の流入口付近の乱れに起因する。
今後の課題
3つの課題が浮き彫りとなった。①風を抜く天井ネットの設置箇所を様々に変えて,風速分布をより均一にすることが,風洞の上下流における平面的な分級を防止することにつながる。②カラーサンドの混合割合を変えることが,赤色粗粒子の残留集積機会を減らすこととなる。③粗粒子が外壁側に,細粒子が内壁側に集積する対策は,今のところ見当たらない。