日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学環境・エネルギー研究推進センター)、森田 澄人(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門)

17:15 〜 18:30

[MIS09-P02] 表層型メタンハイドレート広域調査で得られた日本海及び北海道周辺海盆域の海底地形

*佐藤 幹夫1大井 剛志2弘松 峰男3松本 良2 (1.産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門、2.明治大学 研究・知財戦略機構、3.海洋研究開発機構 地球情報基盤センター)

キーワード:海底地形図、海底地滑り、海底谷

表層型メタンハイドレートの資源量把握のための調査の一環として,日本海及び北海道周辺の表層型メタンハイドレートの賦存が期待される海盆域で,マルチビーム測深器(MBES)及び表層構造探査装置(SBP)を用いた広域地形地質調査を実施した.調査は,隠岐西方から奥尻海盆までの日本海と日高沖,十勝沖,網走沖の計10海域で,2013年43日(7K13航海),2014年62日(7K14航海),2015年75日(7K15航海)の3航海計180日実施された(松本ほか,2014;松本・佐藤,2015).使用船舶は調査船「第七開洋丸」(海洋エンジニアリング(株)所有,499トン),使用機器は同船搭載のEM302及びTOPAS PS18(ともにKongsberg社製)である.地形調査は,経度2分(約3km)間隔の南北測線を基本とし適宜補測線を追加,船速6〜7ノット,最大スワス角度は片舷75度,最大スワス幅は片舷1800mを基本として観測を行った.取得したデータは,データ処理ソフトウェア(Marine Discovery ver.4)でフィルター処理・ノイズ除去を行い,25mメッシュの水深グリッドデータ,等深線,後方散乱強度分布図を作成した.またSurfer 11を用いて25mメッシュデータから海底地形陰影図を作成した.これらのデータは表層型メタンハイドレートの資源量把握のための基礎データとして使用されたが,本発表では,この調査で得られたデータのうち海底地形データについて海底地形陰影図を示し,各海域について崩落崖,地滑りシート,海底谷などの海底地形の特徴を整理し,そこから読み取れる海盆埋積作用について推定を行う.
隠岐西方(対馬海盆南東縁),隠岐トラフ,隠岐北東方(大和海盆南西端)では,陸側斜面部に見られる崩落崖とその下部に位置する海盆底の地滑りシートのセットが多く認められ,特に隠岐トラフ南西部ではトラフ底はほぼ全てが地滑りシートで埋め尽くされている.一部海域の斜面上部には,円弧滑りに伴う溝状地形が認められる.一方,隠岐トラフ北東部では,南東縁の斜面では崩落崖とスライドシートのセットが分布するが,その他のトラフ底の地形は平坦で,半遠洋性堆積物による埋積が示唆される.これらの海盆では顕著な海底谷が存在しない,陸側斜面上部で構造性隆起が認められる,泥質堆積物が卓越するという共通の特徴が見られる.富山トラフでは,中央部に富山深海長谷によるchannel-levee systemが発達し,その外側には平坦なトラフ底が広がっている.また海域南東部には,鳥ヶ首海脚,海鷹海脚,上越海丘などの構造的高まりの雁行配列が認められる.最上トラフは,鳥海礁(とりみぐり)より南の南部と北の中部,男鹿半島西方の北部に分けられるが,中部から北部には最上深海長谷が南から北に断続的に続いている.また,鳥海礁などの地形的高まりの雁行配列が認められ,これらはテクトニックインバージョンにより形成された背斜構造と考えられている(岡村ほか,1996a,b).富山トラフの上越沖や佐渡西方,最上トラフの陸側斜面では崩落崖とスライドシートのセットからなる海底地滑り地形が認められるが,両海域ともトラフ内で卓越しているわけではない.西津軽海盆及び奥尻海盆は,海盆南または北の海底谷と平坦な海盆底で特徴づけられ,海底面からの反射強度は他の海域と比べ強く,海底谷起源のタービダイトが卓越していることが示唆される.日高トラフでは,西側斜面(下北〜渡島東方)及び北東側斜面(日高沖)で崩落崖とスライドシートのセットからなる海底地滑り地形が認められ,トラフ底の埋積に重要な役割を果たしていると考えられる.網走沖では,海域西側の北見大和堆と東側の知床半島の間に北側の千島海盆の深海盆が南に向かって湾入したような形状をしており,海域西部には網走海底谷と斜里海底谷が南から北に流れ,海域東部には高まりが南北方向に伸びている.両海底谷の間には南北方向の細長い海脚状地形が複数認められる.
本研究は経済産業省メタンハイドレート開発促進事業の一環として実施されたものである.
文献:
岡村行信・森尻理恵・土屋信之・佐藤幹夫(1996a) 粟島周辺海底地質図,海洋地質図47,地質調査所.
岡村行信・森尻理恵・佐藤幹夫(1996b) 秋田西方海底地質図,海洋地質図48,地質調査所.
松本 良・弘松峰男・青木伸輔・柳本 裕・佐藤幹夫・中嶋 健(2014) 広域地形地質調査:ガスチムニーの広域マッピング,表層メタンハイドレート・フォーラム 表層メタンハイドレートの資源化を目指して,3-1.
松本 良・佐藤幹夫(2015) 広域調査7K14報告:ガスチムニー構造のタイプと分類について,表層メタンハイドレート・フォーラム2014 資源量評価・2年目の成果,02.