日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学環境・エネルギー研究推進センター)、森田 澄人(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門)

17:15 〜 18:30

[MIS09-P04] 日本海東縁のガスハイドレート胚胎海域における堆積速度の特徴

*大井 剛志1秋葉 文雄2松本 良1 (1.明治大学 研究知財戦略機構、2.有限会社 珪藻ミニラボ)

キーワード:メタンハイドレート、堆積年代、微化石

背景
日本海東縁に分布するメタンハイドレート胚胎海域上で採取されたコア堆積物では,ハイドレートやカーボネイトなどが含まれることで堆積層序比較に有効なTL層が認定しづらく,堆積年代の予測が難しい.大井ほか(2015MS)により,飛島西方海域最上トラフでのハイドレートを介在するコアとリファレンスコアに認められる明瞭な堆積年代の違いがハイドレートの成長による周辺の堆積物を押し広げたことにあると予察した.
研究目的
本研究では,2015年8月~10月にかけて実施された掘削航海において,上越市沖海鷹海脚および隠岐トラフに分布するメタンハイドレート胚胎海域で集中掘削された長さ数十mの堆積物コアの年代層序を,①放射性炭素年代,②珪藻化石による推定年代によるイベント年代の2つの指標から明らかにした.さらに,昨年度の最上トラフで採取された約60mの長尺コア(大井ほか,2015)と堆積速度の変遷について比較検討する.
手法
放射性炭素同位体(14C)年代測定には,船上でサンプリングした貝殻片や植物片および泥質堆積物から抽出した浮遊性有孔虫殻10mg分(約1000個体)を使用した.各試料の測定では,塩酸や超純水で汚染部を除去後,㈱加速器分析研究所所有の14C-AMS専用装置(NEC社製)でシュウ酸(HOxⅡ)を標準試料とし,δ13C補正と年代較正を行った(Reimer et al. 2013;Bronk Ramsey 2009).珪藻化石分析には,海底コア中の泥質試料と塊状~層状のハイドレートに含まれる泥質部を用いた未処理散布スライド(秋葉ほか,1982)を使用した.化石帯の認定は,北太平洋地域で広域に適用される標準層序区分のYanagisawa and Akiba (1989)と日本海の上部第四系層序区分の秋葉ほか(2014)に従った.
考察
2015年度掘削調査で採取した試料より30個の14C年代測定が実施され,コア上位の堆積速度を推定した.その結果,上越沖海鷹海脚(28-47cm/kyr)では隠岐トラフ(11-19cm/kyr)や先行研究の最上トラフ飛島西方海域(約20cm/kyr;大井ほか、2015)に比べて,過去50kaで平均して2~3倍の堆積速度を有することが判明した.これらの違いは陸からの距離の差に関係していると推測される.珪藻化石のProboscia curvirostrisの絶滅層準が示す標準的な層序区分面(30万年前)を各コアで追跡した結果,隠岐からは複数のコアの20-25mbsfに認められたのに対し,堆積速度の速い海鷹海脚からは約88mbsfだった.最上トラフでは約42mbsfであったため堆積速度の遅い隠岐トラフと速い海鷹海脚という特徴が顕著に表れている.本発表では,メタンハイドレートを含むその他のコアについての年代層序についても議論する.なお,本調査研究は経済産業省のメタンハイドレート資源開発促進事業の一環として実施されたものである。
引用文献
秋葉ほか,2014.石油技術協会誌.79,130-139.秋葉ほか,1982.地調月報,33,215-239.Bronk Ramsey C. 2009. Radiocarbon 51(1),337-360.大井ほか,2015.堆積学会,つくば大会.Reimer P.J. et al. 2013. Radiocarbon 55(4):1869–1887. Yanagisawa, Y. and Akiba, F., 1998. Jour. Geol. Soc. Japan, 104, 395-414.