17:15 〜 18:30
[MIS10-P05] 回転球殻中の磁気対流により引き起こされる平均帯状流の外側安定成層への貫入
キーワード:地球外核、水星外核、核マントル境界、ダイナモ、地磁気永年変動、アルフベン波
最近の地震波観測とその解析は地球の核マントル境界直下に厚さオーダー 100km の安定成層が存在することを示唆している. 深部対流運動の外側安定成層への貫入の程度はダイナモ過程通じての磁場生成ならびに磁気永年変導の成因を考える上で重要な問題のひとつである.
Takehiro and Lister (2001) は磁場がない場合に柱状対流の安定成層への貫入厚さを理論的に導出し, 貫入厚さが惑星の自転角速度に比例し, 安定成層のブラントバイサラ振動数ならびに擾乱の水平波数に反比例することを示した. Takehiro (2015) では安定成層が強い場合の磁場の影響下での貫入厚さのスケーリングを見積り, アルフベン速度と拡散係数及び擾乱の全波数の比で表されることを示した. しかしながら, これらのスケーリングは安定成層下の運動が振動あるいは伝播する場合にのみ適用可能であり, 磁気対流により引き起こされる定常な平均帯状流の安定成層への貫入に関しては適用することができない. Takehiro and Lister (2002) では磁場がない場合の回転球殻内の柱状対流によって引き起こされる平均帯状流の安定成層の貫入を調べ, 貫入の初期の段階では Takehio and Lister (2001) によるスケーリングで貫入の程度が説明できるが, 時間発展後は最終的に粘性による拡散の効果が卓越し, 平均帯状流が水平スケールと同程度に安定成層に貫入することを示している. これに対して, 磁場の影響下での定常な流体運動の安定成層の貫入に関してはまだ議論されていない. ここでは, 安定成層下の定常対流運動に対する安定成層内の磁場擾乱の振舞いを理論的に調べる.
Takehiro (2015) の理論モデルを再吟味し, 下面境界からの定常な流体運動が鉛直方向半無限空間に存在する密度成層した磁気流体中へと貫入する状況を考える. 系の回転軸は鉛直軸から傾いている. 粘性と拡散の効果を無視し, 安定成層が十分に強く基本場磁場が弱いことを
仮定すると, 磁気流体運動が 2 つの磁気流体波動に分類されることが線形解析からわかる. ひとつは速いモードであり, コリオリ力・浮力およびローレンツ力が足しあわさって波の復元力がもたらされている. もう一つは遅いアルフベン波であり, 流体運動が水平方向に制限されている. 下面から与えられる擾乱の振動数が十分小さければ, 速いモードは安定成層を伝わることができず, その貫入距離は磁場のない場合のものに帰着する. これに対して遅いモードは, 与えられる擾乱の振動数がどんなに小さくても安定成層中を伝播することができる. 下面の擾乱の振動数 0 の場合の貫入メカニズムはアルフベン速度の大きさに依存して変化する. アルフベン速度が小さい場合には粘性拡散が卓越し, 貫入距離は下面の運動の水平スケールと同程度となる. このことは Takehiro and Lister (2002) の磁場のない場合の結果と整合的である. 一方, アルフベン速度が大きくなると, より深く深くできるようになり, 貫入距離はアルフベン速度と粘性および磁気拡散係数の相乗平均及び擾乱の全波数の比で表される. この結果は, 振動数が 0 でない場合の擾乱の貫入距離の表現が粘性および磁気拡散係数の相加平均に依存していることと対照的である.
伝播距離の理論的なスケーリングの正当性を評価するために, 一様磁場中に埋めこまれた上層に安定成層を伴う高速に回転する球殻中の磁気熱対流の非線形時間発展計算を行った. 強い安定成層を与えると, 基本場磁場を強めていくにつれて, 安定成層下に閉じ込められていた中立モードの柱状流体運動と磁気擾乱が次第に安定成層へ貫入していく. 得られた平均帯状流の貫入距離は理論的スケーリングと良くあっている.
* 参考文献
Takehiro and Lister (2001) Earth Planet. Sci. Lett., 187, 357-366.
Takehiro and Lister (2002) Geophys. Res. Lett., 29, 50-1-4.
Takehiro (2015) Phys. Earth Planet. Inter., 241, 37-43.
Takehiro and Lister (2001) は磁場がない場合に柱状対流の安定成層への貫入厚さを理論的に導出し, 貫入厚さが惑星の自転角速度に比例し, 安定成層のブラントバイサラ振動数ならびに擾乱の水平波数に反比例することを示した. Takehiro (2015) では安定成層が強い場合の磁場の影響下での貫入厚さのスケーリングを見積り, アルフベン速度と拡散係数及び擾乱の全波数の比で表されることを示した. しかしながら, これらのスケーリングは安定成層下の運動が振動あるいは伝播する場合にのみ適用可能であり, 磁気対流により引き起こされる定常な平均帯状流の安定成層への貫入に関しては適用することができない. Takehiro and Lister (2002) では磁場がない場合の回転球殻内の柱状対流によって引き起こされる平均帯状流の安定成層の貫入を調べ, 貫入の初期の段階では Takehio and Lister (2001) によるスケーリングで貫入の程度が説明できるが, 時間発展後は最終的に粘性による拡散の効果が卓越し, 平均帯状流が水平スケールと同程度に安定成層に貫入することを示している. これに対して, 磁場の影響下での定常な流体運動の安定成層の貫入に関してはまだ議論されていない. ここでは, 安定成層下の定常対流運動に対する安定成層内の磁場擾乱の振舞いを理論的に調べる.
Takehiro (2015) の理論モデルを再吟味し, 下面境界からの定常な流体運動が鉛直方向半無限空間に存在する密度成層した磁気流体中へと貫入する状況を考える. 系の回転軸は鉛直軸から傾いている. 粘性と拡散の効果を無視し, 安定成層が十分に強く基本場磁場が弱いことを
仮定すると, 磁気流体運動が 2 つの磁気流体波動に分類されることが線形解析からわかる. ひとつは速いモードであり, コリオリ力・浮力およびローレンツ力が足しあわさって波の復元力がもたらされている. もう一つは遅いアルフベン波であり, 流体運動が水平方向に制限されている. 下面から与えられる擾乱の振動数が十分小さければ, 速いモードは安定成層を伝わることができず, その貫入距離は磁場のない場合のものに帰着する. これに対して遅いモードは, 与えられる擾乱の振動数がどんなに小さくても安定成層中を伝播することができる. 下面の擾乱の振動数 0 の場合の貫入メカニズムはアルフベン速度の大きさに依存して変化する. アルフベン速度が小さい場合には粘性拡散が卓越し, 貫入距離は下面の運動の水平スケールと同程度となる. このことは Takehiro and Lister (2002) の磁場のない場合の結果と整合的である. 一方, アルフベン速度が大きくなると, より深く深くできるようになり, 貫入距離はアルフベン速度と粘性および磁気拡散係数の相乗平均及び擾乱の全波数の比で表される. この結果は, 振動数が 0 でない場合の擾乱の貫入距離の表現が粘性および磁気拡散係数の相加平均に依存していることと対照的である.
伝播距離の理論的なスケーリングの正当性を評価するために, 一様磁場中に埋めこまれた上層に安定成層を伴う高速に回転する球殻中の磁気熱対流の非線形時間発展計算を行った. 強い安定成層を与えると, 基本場磁場を強めていくにつれて, 安定成層下に閉じ込められていた中立モードの柱状流体運動と磁気擾乱が次第に安定成層へ貫入していく. 得られた平均帯状流の貫入距離は理論的スケーリングと良くあっている.
* 参考文献
Takehiro and Lister (2001) Earth Planet. Sci. Lett., 187, 357-366.
Takehiro and Lister (2002) Geophys. Res. Lett., 29, 50-1-4.
Takehiro (2015) Phys. Earth Planet. Inter., 241, 37-43.