日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 津波堆積物

2016年5月26日(木) 10:45 〜 12:00 国際会議室 (2F)

コンビーナ:*後藤 和久(東北大学災害科学国際研究所)、宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、西村 裕一(北海道大学大学院理学研究院)、座長:宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

11:00 〜 11:15

[MIS11-08] 九州薩摩半島南西岸域のイベント堆積物調査

*原口 強1吉永 佑一2内村 公大3福田 穣4 (1.大阪市立大学大学院理学研究科、2.株式会社防災地質研究所、3.西日本技術開発株式会社、4.九州電力株式会社)

キーワード:南九州、津波堆積物

東シナ海に面した南九州・薩摩半島西岸から南岸域において,過去の巨大津波来襲の可能性の解明を目的とした堆積物調査を実施している.
調査地域は約130kmに及ぶ海岸線を有し,地形的な特徴から5つに区分できる.阿久根から串木野に至る南北約40kmの岩石海岸主体の北部地域,市来から南さつま市に至る南北約30kmの砂浜海岸地域,野間半島を中心とする約20kmの岩石海岸主体の南西部地域,枕崎から指宿に至る東西約40kmの火山山地および台地が広がる南部地域,唯一の島嶼で約25kmに延びる岩石海岸主体の甑島地域である.
機械ボーリングは,合計11地区,14地点,浜堤背後の湿地を中心に選定した.すべての地点で過去6000年間をカバーする地層を確認した.その中で,甑島の中山地点で,泥炭層中に扁平な粘板岩の海浜小礫の薄層を複数枚確認した.中山地点は南東に開いた湾奥の浜堤背後の標高3.3mの湿地で,厚さ約13m弱の堆積層を確認している.湿地を限る浜堤および前面海浜は主に扁平な海浜礫から構成されている.13mの堆積層の下位は海成で,地表から9m以浅からが泥炭となる.泥炭の堆積開始時期が約4000年前で,内湾環境から浜堤が発達したのち湾口が閉じ陸化して湿地環境に変化したと見られる.上述の越波イベントは湿地環境下の2500年~3500年前に集中している.越波イベントの卓越する時期が,湾口の締め切り・陸化する時期と近い.すなわち,浜堤の発達初期で高さが現在よりも低い時期で,越波の影響を受けやすかった可能性がある.一方,東シナ海を隔てた対岸の羽島地点およびほかの9地区でも越波イベントは確認できない.このことは中山地区の越波イベントが局所的な現象である可能性を示している.とはいえ,津波堆積物が保存される条件は現地の地形・地質条件によって異なることが東日本大津波でも確認されている.
以上のことから,当該地域沿岸部に巨大津波が襲来した可能性は低いと考えられるものの,越波イベント堆積物の形成プロセスを慎重に検討していくことが必要である.
謝辞:本研究のX線CT画像撮影は電力中央研究所のご協力により所有機材を使用させていただいた.