日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 結晶成長、溶解における界面・ナノ現象

2016年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 A07 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*木村 勇気(北海道大学低温科学研究所)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、塚本 勝男(大阪大学大学院工学研究科)、佐藤 久夫(三菱マテリアル株式会社エネルギー事業センター那珂エネルギー開発研究所)、座長:佐藤 久夫(三菱マテリアル株式会社エネルギー事業センター那珂エネルギー開発研究所)

09:00 〜 09:30

[MIS12-01] 高速原子間力顕微鏡によるカルサイト溶解過程の原子分解能観察

★招待講演

*福間 剛士1 (1.金沢大学)

キーワード:原子間力顕微鏡、カルサイト、結晶溶解

炭酸カルシウム鉱物は、地球規模の炭素循環において重要な役割を果たし、それにより地球の大気・水質・地質環境に大きな影響を及ぼす。なかでもカルサイトは、最も豊富に存在し、かつ、反応性に富むため、その結晶成長・溶解過程はとりわけ重要である。特に、最近では大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑制するために、地中への大規模かつ長期的な炭素貯蔵が検討されており、貯蔵された炭素の漏洩の原因となるカルサイトの結晶溶解過程は、大きな注目を集めている。このような長期的かつ大規模な炭素循環を正確に予測するためにも、カルサイト結晶の溶解機構を正確に知る必要がある。
これまでにも、カルサイトの溶解過程は様々な手法により研究されてきた。マクロな挙動については、溶解過程に伴う溶液中のイオン濃度変化を解析することで研究が進められてきた。ナノスケールの挙動については、原子間力顕微鏡(AFM)や光学的な手法により、単原子ステップのフローを実空間観察することで、その溶解機構が研究されてきた。しかし、原子レベルの結晶溶解モデルを理解するためには、ステップ近傍の原子レベルの挙動を正確に知る必要がある。しかし、従来の分析手法ではこれを直接観察することが困難であったため、未確立の部分が残されている。
周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)は従来超高真空中での原子・分子レベルの表面構造・物性計測に用いられてきた技術である。2005年に我々は、この顕微鏡を液中で動作させる技術を開発し、液中原子分解能観察を可能とした。さらに、近年、我々は液中FM-AFMの観察速度を、従来の~1 frame/minから~1 frame/secへと格段に向上させることに成功した。本研究では、この高速FM-AFMを用いて、カルサイトの溶解過程を直接原子分解能観察することに成功した。その結果、溶解途中の単原子ステップ近傍に、1-8 nm程度の幅を持つ遷移領域が存在することを発見した。この遷移領域の起源については、現在検討段階であるが、原子レベルの結晶溶解機構の理解を大きく進める発見であることは間違いない。このように、従来見ることのできなかったリアルタイムの構造変化を直接観察する技術により、今後、様々な結晶の成長・溶解過程に関する理解が進むものと期待される。