日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 結晶成長、溶解における界面・ナノ現象

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*木村 勇気(北海道大学低温科学研究所)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、塚本 勝男(大阪大学大学院工学研究科)、佐藤 久夫(三菱マテリアル株式会社エネルギー事業センター那珂エネルギー開発研究所)

17:15 〜 18:30

[MIS12-P03] サイズ分布を考慮したモンモリロナイト溶解の数値計算

*窪川 浩太1三浦 均1佐藤 久夫2山口 耕平3 (1.名古屋市立大学大学院システム自然科学科、2.三菱マテリアル株式会社エネルギー事業センター那珂エネルギー開発研究所、3.三菱マテリアル株式会社)

近年、原子力発電所の利用に伴って生じた多量の放射性廃棄物の処分方法が課題となっている。我が国では、実現可能な処分手法として、「地層処分」が検討されている。地層処分とは、高レベル放射性廃棄物をガラス固化体にし、鉄製の容器に入れ、これをベントナイトという粘土鉱物(モンモリロナイト)を主成分とする緩衝材で覆い、地下数百メートルよりも深い場所に処分することである。モンモリロナイトは、水に接すると膨張し、止水する機能を持つ。しかし、数万年に及ぶ長期間における保存においては、モンモリロナイトが地下水と反応して溶解し、止水性としての機能が損なわれた結果、内部の放射性物質が地下水によって流出する危険性がある。したがって、長期の安定保存の為に、モンモリロナイトの溶解挙動を予想することは極めて重要である。
本研究では、モンモリロナイトの溶解挙動を調べるため、数値計算手法を用いたシミュレーションを行った。閉鎖的環境下でアルカリ性溶液にさらされた様々なサイズのモンモリロナイト粒子を想定し、溶解に伴う各粒子のサイズ変化と溶液の濃度変化を同時に計算した。粒子の溶解速度式には、過飽和度依存性とギブス・トムソン効果による粒子サイズ依存性を考慮した。溶液が未飽和な場合の溶解速度式には溶解実験で得られた経験式を用い、溶液が過飽和になった場合の成長速度式には溶解速度式の符号を逆にした式を仮定した[1]。溶液の過飽和度はPHREEQC[2]を用いて計算した。また、従来の研究ではほとんど考慮されていなかったサイズ分布の違いによる差にも着目した。初期の粒子サイズ分布として、一様分布、対数一様分布、正規分布、対数正規分布の4種類を想定した。
対数正規分布を持つ粒子を未飽和溶液と反応させた場合、計算初期は全サイズの粒子が溶解し、溶液の未飽和度が小さくなっていき、やがてほぼ飽和状態となった。ほぼ飽和になった状態では、ギブス・トムソン効果により、小さい粒子は溶解し、大きい粒子が成長に転じる様子が確認された。大きな粒子が成長に転じるまでに要する期間は、計算初期における溶液体積に対する全粒子体積の比(固液体積比)に依存した。固液体積比が10-5の場合は、計算開始から約7000年後に成長に転じた。固液体積比を大きくすると、成長に転じるまでに要する期間が約10~100年まで短縮されることが分かった。また、成長に転じるサイズの下限値も、固液体積比の増加と共に大きくなることが分かった。以上、サイズ分布を考慮したモンモリロナイト粒子溶解過程の数値計算により、長期の安定保存にはギブス・トムソン効果を考慮することが重要であることが示唆された。
参考文献: [1] Cama et al. (2000), Geochem. Cosmochim. Acta 64, 2701. [2] PHREEQC – A Computer Program for Speciation, Batch-Reaction, One-Dimensional Transport, and Inverse Geochemical Calculations. http://wwwbrr.cr.usgs.gov/projects/GWC_coupled/phreeqc/.