日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 結晶成長、溶解における界面・ナノ現象

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*木村 勇気(北海道大学低温科学研究所)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、塚本 勝男(大阪大学大学院工学研究科)、佐藤 久夫(三菱マテリアル株式会社エネルギー事業センター那珂エネルギー開発研究所)

17:15 〜 18:30

[MIS12-P06] 粘土の固化過程の結晶成長:スメクタイトのゼオライト化反応

*佐藤 久夫1 (1.三菱マテリアル株式会社エネルギー事業センター那珂エネルギー開発研究所)

キーワード:スメクタイト、ゼオライト化、成長速度、体積変化

地球表層では、造岩鉱物は水との反応により、微細な粘土鉱物へと風化する。微細な粘土鉱物は表層環境では土壌として安定に存在し続けるが、堆積して地下深部に埋没する過程では、地下水との再平衡によって、未固結の泥質物質は続成作用によって固化し、安定な堆積岩となる。我々の生活において最も身近な粘土鉱物はスメクタイトである。このスメクタイトは地下環境において、アルカリ溶液との反応があると、溶解してゼオライト化するため、スメクタイトを主成分とする岩石であるベントナイトには必ずゼオライトが共存している。
この現象を実験室で再現し、反応に必要な溶液や温度圧力条件を知ることは、未固結の粘土質物質が安定化する時間スケールを知る上で重要である。そこで、Naモンモリロナイトを1.0M NaOH溶液中120 ℃にて変質させ、ゼオライトの成長を位相シフト干渉計を使ってその場観察[1]した。単純化した反応式を表すと、□Al2Si4O10(OH)2 + 2NaOH = 2NaAlSi2O6(H2O)である。この条件では、Naモンモリロナイトの溶解は9.5E-10 mol/m2/sで進行し[2]、モル体積136.4E-6 m3/molから求めた面溶解速度では6.9E-6 m/sとなる。生成したアナルサイムの成長速度は1.1E-10 m/sであった。モンモリロナイトの溶解は反応表面積の増減で2-3桁変化できるが、それを考慮すると、溶解と成長の物質的バランスには大きな矛盾はない。しかし、反応前後の体積変化は193.96 – 173.91 = +20.05 cm3/mont molとなり、この反応は体積拘束のある閉鎖系では抑制されることを意味している。さらに、シリンジ型セルを用いた大過剰のNaOHのある系での圧縮実験を行うと、ハイドロソーダライトが、3□Al2Si4O10(OH)2 + 20NaOH = Na8Al6Si6O24(OH)2 + 6Na2SiO3 + 12H2Oによって生成した。この反応前後の体積変化は+54.67 cm3/mont molであり、変質はさらに抑制される。このように反応系のアルカリは、粘土のゼオライト化反応を起こすが完全な置換には至らず、粘土の空隙を充填することで安定化することがわかる。
[1] Satoh et al. (2007) American Mineralogist, 92, 503-509.
[2] Sato et al. (2005) Proc. of the Int. Workshop on Bentonite-Cement Interaction in Repository Environments, A3-38-41.