日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] 遠洋域の進化

2016年5月23日(月) 10:45 〜 12:15 203 (2F)

コンビーナ:*松岡 篤(新潟大学理学部地質科学科)、栗原 敏之(新潟大学大学院自然科学研究科)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、尾上 哲治(熊本大学大学院自然科学研究科)、木元 克典(独立行政法人海洋研究開発機構)、野崎 達生(海洋研究開発機構海底資源研究開発センター)、植田 勇人(新潟大学理学部地質科学科)、小林 健太(新潟大学理学部地質科学科)、長谷川 卓(金沢大学自然システム学系)、座長:尾上 哲治(熊本大学大学院自然科学研究科)、松岡 篤(新潟大学理学部地質科学科)

11:00 〜 11:15

[MIS13-08] オマーンオフィオライトWadi Hilti地域における遠洋性堆積物の岩相層序と放散虫化石年代:特にV2溶岩層の噴出年代について

*栗原 敏之1原 康祐1安喰 由実1 (1.新潟大学大学院自然科学研究科)

キーワード:オマーンオフィオライト、放散虫、白亜紀、セノマニアン

アラビア半島東端部に位置するオマーンには,後期白亜紀に形成されたネオテチス海の上部マントル―海洋地殻が変成・変形をほとんど被ることなく衝上している.このオフィオライトの地殻セクション最上部を占める噴出溶岩層は,メタリフェラス堆積物と遠洋性堆積物を密接に伴っている.これらの堆積物は保存良好な後期白亜紀の放散虫化石を含むことでも知られている(Tippit et al., 1981).噴出溶岩は異なるセッティングで形成された3つのユニットに区分されており,それぞれN-MORBに類似するV1溶岩,未熟な島弧の火山岩に組成が類似するV2溶岩およびプレート内玄武岩のV3溶岩である.最近ではV1溶岩とV2溶岩に関係する深成岩のジルコンについて高精度のU-Pb年代が測定され,それらの形成史が議論されている(Rioux et al., 2012, 2013, 2014).本研究で検討対象としたオマーンオフィオライト北部のWadi Hilti地域にはV1~V3溶岩が分布しており,V2溶岩層上およびV3溶岩内部・上位に堆積物が存在しているため,堆積物の微化石年代はそれら溶岩の噴出年代に制約を与えることができる.本研究は,この地域の堆積物の岩相層序と年代を明らかにし,溶岩-堆積物の形成過程に精度の高い時間軸を入れることを目的としている.
Wadi Hilti地域にはV1~V3溶岩とメタリフェラス堆積物・遠洋性堆積物が分布し,V2溶岩はKusano et al. (2014),V3溶岩はUmino (2012)によって研究されている.特にV2溶岩はLV2溶岩とUV2溶岩に区分され,UV2溶岩はボニナイトからなる(Kusano et al., 2014).この地域ではUV2溶岩上に最も厚く遠洋性堆積物が発達しており,溶岩直上にメタリフェラス堆積物が,その上位に赤色泥岩とミクライト質石灰岩が累重する.これらの堆積物について複数のセクションで検討した結果,下位からUV2溶岩-メタリフェラス堆積物-赤色泥岩と連続的に重なる層序における赤色泥岩から,Guttacapsa guttaThanarla pulchraなどが産出した.これらの共産する期間はU. A. zone(O’Dogherty, 1994)の17-19で,中期~後期Cenomanianを示す.また,これより上位の赤色泥岩・ミクライト質石灰岩およびV3溶岩上の珪質泥岩からは,Rhopalosyringium scissumHemicryptocapsa polyhedraなどが産出した.O’Dogherty (1994)などに基づけば,これらを含む堆積物の年代はTuronianである.
このような溶岩と堆積物の層序関係と放散虫年代から,UV2溶岩(ボニナイト)は後期Cenomanianには噴出が終了し,V3溶岩はTuronianに噴出したと結論づけられる.V1溶岩の噴出も中~後期Cenomanianに終了していた(Hara and Kurihara, 2015)ことから,V1溶岩の噴出終了からV2溶岩の活動は中~後期Cenomanianにおける短期間で終了したといえる.これは,Rioux et al. (2014)などによって報告されたジルコンのU-Pb年代(V1溶岩が96.0 Ma~95.5 Ma,V2溶岩が95.5~95.0 Ma)と調和的である.