日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] 遠洋域の進化

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*松岡 篤(新潟大学理学部地質科学科)、栗原 敏之(新潟大学大学院自然科学研究科)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、尾上 哲治(熊本大学大学院自然科学研究科)、木元 克典(独立行政法人海洋研究開発機構)、野崎 達生(海洋研究開発機構海底資源研究開発センター)、植田 勇人(新潟大学理学部地質科学科)、小林 健太(新潟大学理学部地質科学科)、長谷川 卓(金沢大学自然システム学系)

17:15 〜 18:30

[MIS13-P03] 北海道三石地域における付加体緑色岩の層序と全岩組成による海山の復元

*小澤 愛美1 (1.新潟大学大学院自然科学研究科)

キーワード:海山、付加体、緑色岩

海山や海洋島は,地球上に多く存在する火山体である.その構造や成長過程は,深海底掘削や,ハワイ島周辺やカナリア諸島西方などの陸上に断片的に露出しているかつての海底部分の解析結果などからモデル化されている(たとえば Schmincke, 2010).しかし,現世の火山体の観察のみからでは,山体の内部構造の理解は難しい.
北海道の神居古潭帯には多量の付加体緑色岩が存在している.これら緑色岩類の形成場について中野・小松 (1979)では,エジリン輝石やケルスート閃石などの産出から,緑色岩を海洋島アルカリ岩であると解釈した.一方,Kimura et al. (1994) では,全岩組成による岩石化学的検討と,プレート運動復元モデルとの比較から空知海台説を提唱している.また榊原ほか (1999)ではチャートゼノリスの放散虫年代から,海台の形成はジュラ紀末とした.起源の議論はあるものの神居古潭帯の緑色岩は原岩の構造を残したものが多いため,海底火山の内部構造の情報を得られることが期待される.
本発表では,北海道神居古潭帯三石地域の付加体を構成する緑色岩や随伴する遠洋性堆積物の層序と堆積・噴出環境,および全岩化学組成から火山体の復元を試みる.調査対象とした三石地域の三石川支流二股川流域の二股川ユニットは,非変形な緑色岩類,緑色岩に随伴する堆積岩類と,泥質混在岩を主体とする剪断帯によって特徴づけられる.二股川ユニットの緑色岩類は,全岩化学組成から,非調和元素にやや富化した中央海嶺玄武岩(T-MORB)タイプ,海洋島アルカリ岩(OIA)タイプ,および海洋島玄武岩でソレアイトとアルカリ岩の中間的な組成を示す(OITB)タイプに分類することができる.二股川ユニットは構造的下位から順にシートA,シートB,シートCの3つのスラストシートに細分され,各シートは泥質混在岩を主体とする剪断帯によって区切られている.
緑色岩の層序と全岩組成からシートAの緑色岩類はT-MORBおよびOITBの枕状溶岩とOIAのドレライトシルからなり,チャートおよび砕屑性石灰岩の堆積がみられることから海洋島形成初期の海底火山期において火山体の山麓部の深海域で形成されたと推測した.シートBの緑色岩類は最下部のチャートと比較的均質なOITBの枕状溶岩および多量のドレライトシルから構成され,盾状火山期における火山体の山麓部の深海域で形成されたと推測した。シートCの緑色岩類はOITBに分類され,形成ステージの特定にまで至らなかったが,形成場は発泡した火砕岩を噴出する海底火山体の中央部であると考えられる.