[M-IS15] 南大洋・南極氷床が駆動する全球気候変動

[MIS15-P06] 氷床モデルを用いた氷床海洋相互作用と南極氷床の安定性に関する数値実験

*小長谷 貴志¹、阿部 彩子^1,2、齋藤 冬樹²、草原 和弥³、羽角 博康¹ (1.東京大学大気海洋研究所、2.海洋研究開発機構、3.タスマニア大学南極域気候生態系共同研究センター)

キーワード：南極氷床、南大洋、南極氷床海洋相互作用、棚氷

南極氷床における棚氷を通した氷床と海洋の相互作用は、気候や海水準を理解する上で重要な問題である。南極氷床を後退させる氷床外部の要因として、北半球氷床変動による海水準上昇による浮力の増加とその速度(Ritz et al., 2001; Goelzer et al., 2016)、海水温上昇による棚氷底面の融解速度の増加(Huybrechts 2002; Pollard and Deconto 2009)、および氷床融解水が南大洋の成層をつよめて亜表層の水温をあげることで氷床融解を加速するということ(Golledge et al., 2014)がいわれている。棚氷底面融解に対して重要な棚氷近傍の水温は、大陸棚上の海氷生産による水塊形成があるために、大陸棚より沖合いの南大洋の水温と異なることが示されてたが(Obase et al., submitted)、これまでの氷床モデリング研究では南大洋の水温を使っていたために、氷床と海洋との相互作用の物理の表現が不十分だった。そのため、南極域の領域海洋モデルと気候モデルによる実験の結果をつかって、気候変化および南大洋への氷床融解水と棚氷底面融解との関係性を調べて、氷床モデルに入力として使うことが可能な棚氷底面融解の速度を求める式を導出する。導出した棚氷底面融解の式を用い、水平-鉛直2次元の氷床-棚氷結合モデルを用いた数値実験によって、棚氷底面融解の速度変化と海水準変化に対する氷床-棚氷の振る舞いの物理特性を調べる。複数箇所の南極大陸鉛直断面を地形の境界条件として使用して海底地形への依存性も同時に調べ、氷床後退のしきい値の決定要因を定量的に整理する。