日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS16] 地球掘削科学

2016年5月26日(木) 10:45 〜 12:15 103 (1F)

コンビーナ:*山田 泰広(海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、菅沼 悠介(国立極地研究所)、新井 和乃(海洋研究開発機構)、梅津 慶太(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、座長:白石 和也(海洋研究開発機構)、斎藤 実篤(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

11:45 〜 12:00

[MIS16-11] 南海トラフ地震発生帯掘削に関わる地震探査データの統合解析

*白石 和也1木下 正高2真田 佳典1MOE KYAW1山田 泰広1 (1.海洋研究開発機構、2.東京大学地震研究所)

キーワード:地震探査、南海トラフ地震発生帯掘削

南海トラフ周辺海域では、地震発生帯の詳細な地殻構造を明らかにするため、多くの地震探査データが取得されてきた。本講演では、熊野灘における地震発生帯深部掘削に関わる、主要な地震探査データに焦点を当て、各種データの持つ特徴や問題点を整理するとともに、今後の深部断層帯掘削に向けた取り組みや課題について述べる。
海底地震計とエアガンを用いた広角反射法探査は、屈折波や広角反射波の解析を基に、広域かつ深部の地殻構造や速度分布の理解に利用されている。一方、受振器の分布密度が低いことから、反射波イメージングに利用される例は少ない。近年の解析技術の発展として、地震波干渉法による反射波イメージング手法の改善、詳細な速度構造推定のためのフルウェーブインバージョン(FWI)の実用化が挙げられる。多重反射波をイメージングに利用することにより、受振器の疎らなOBS探査データから、広域の連続的な反射法断面が得られる。また、OBS広角反射法データはFWI解析に適していることから、詳細な速度構造推定が行われており、掘削地点周辺の物性分布の推定や反射法イメージの改善に寄与することが期待される。
孔内に鉛直に設置された多数の地震計と海上のエアガン発振によるVSP探査は、孔井近傍の詳細な構造把握や物性推定等に利用される。2009年に実施された南海トラフC09孔井におけるVSP探査では、周辺の反射波イメージングのほか、異方性や減衰等の解析が行われている。今後、深部掘削を目指すC02孔井において、孔井周辺および深部断層帯の詳細な反射波イメージング、掘削の前方予測のために、VSP探査が計画されている。現在は、データ取得の仕様策定に向け、数値シミュレーションによる事前検討が行われている。VSP探査の場合、鉛直方向の受振器展長が長い方が有利であるが、実際には掘削孔の条件による制約を受ける。そこで、解析領域を広げたり解析精度を高めるためには、海底や孔井内に設置されているその他の地震計による同時取得データを活用し、統合的な解析が有効になると考えられる。そのため、観測方法の最適化のみならず、新しい解析手法を考案する機会ともなる。
海上エアガン発振とマルチチャンネルハイドロフォンストリーマを用いる海上MCS反射法探査は、掘削対象地域の詳細な地下構造情報を得るために最善の方法である。これまで、2003年に実施された二次元探査では、比較的高密度に設定された多数の調査測線について、高分解能な地震探査断面が広域に得られている。さらに、2006年に実施された調査では、水中多重反射波や黒潮の影響によるノイズの影響を受けながらも貴重な三次元データが取得され、熊野堆積盆や付加体の内部の詳細な断層終曲構造、沈み込む海洋プレートと分岐する断層などの三次元的な構造が明らかにされた。しかしながら、深部掘削を遂行するために欠かせない、熊野堆積盆直下から分岐断層に至る付加体内部の詳細については、十分に地質構造が理解されているとは言えない。 深部断層帯掘削の実現のためには、詳細な三次元構造の理解が不可欠である。上記の三次元MCSデータについて、多重反射波抑制や広帯域化処理等の最新のデータ解析技術を用いて再解析を実施することで、速度モデルと地震探査イメージの改善が大いに期待される。その結果は、他の地震探査データの解析へフィードバックされるとともに、新規のVSP探査の最適化や取得データの高度解析にも活かされる。
このように、南海トラフにおいては、OBS探査、MCS探査、VSP探査の各種地震探査データ、さらには海洋科学掘削データが豊富に揃っている。それぞれの観測データや解析結果の特徴を活かし、新しい発見にがる統合解析研究の推進が必要である。