日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS16] 地球掘削科学

2016年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 103 (1F)

コンビーナ:*山田 泰広(海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、菅沼 悠介(国立極地研究所)、新井 和乃(海洋研究開発機構)、梅津 慶太(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、座長:森下 知晃(金沢大学理工研究域自然システム学系)、道林 克禎(静岡大学学術院理学領域)

14:15 〜 14:30

[MIS16-15] たいりくプロジェクト:西之島から大深度掘削(IBM-4)へ

*田村 芳彦1 (1.海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター)

キーワード:西之島、大陸、IBM-4、たいりくプロジェクト

2013年11月に始まった西之島の噴火現象は、単なる島の拡大というだけではない。西之島で噴火した溶岩はすべて安山岩であった。「安山岩」と花崗岩は大陸の主要成分であり、海洋底をつくる玄武岩とは成分が異なっている。なぜ安山岩マグマが太平洋のただ中で噴出するのか。西之島の噴火のプロセス及び噴出する溶岩が大陸を構成する岩石の生成プロセスを顕わしており、海洋からの「大陸の誕生」を再現している可能性がある。我々はこの仮説の検証のため、2015 年6 月に海洋調査船「なつしま」により、ディープ・トウを用いて西之島火山の本体である海底火山調査をおこなった。7月にはNHKとの共同研究で今回の一連の噴火による溶岩の採取に成功した。西之島は、絶海の孤島であるが、火山体の大部分は海面下にある。水深3,000mから成長した、底径50㎞の巨大な海底火山が西之島海底火山であり、海面上に現れた直径2kmの山頂部が西之島なのだ。
一方、西之島のある伊豆小笠原マリアナ弧やニュージーランドを含むトンガーケルマディック弧は典型的な海洋島弧といわれる。海洋島弧の発生と進化は、なぜ、どこでプレートの沈み込みが始まるのか、また、どのようにして大陸地殻と大陸プレートが形成されるのか、というプレートテクトニクスの本質的な問題を提起する。近年、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)においても、海底掘削によって、海洋島弧の形成と進化を明らかにしようとする試みが始まった。2014 年3 月30 日から9 月29 日にかけて「島弧進化の総合的理解と大陸地殻成因の解明」を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号の研究航海が実施され、現在採取された掘削コアの分析・解析、成果発表が進んでいる。「たいりくプロジェクト」は西之島のような海底火山の溶岩、およびIODP 掘削コアから、つまり、海から大陸の成因に迫ろうとする試みである。最近の地下構造調査(エアガンを震源とする地震探査や自然地震観測)による研究によって、伊豆小笠原マリアナ弧の海底火山の下に大陸地殻(安山岩)を特徴づける地殻構造が発達することが明らかになってきている。2014年の掘削の成果を受けて、将来的にはIBM-4において「ちきゅう」を用いた大深度掘削を実行し、地球の殻(上部地殻)を破り、大陸誕生の場である「中部地殻」に到達し、その岩石を採取し、大陸生成の全容解明を目的としている。西之島から見えてきた「大陸のでき方」と大深度掘削IBM-4による「たいりく全容解明プロジェクト」の関係を議論する。