15:30 〜 16:45
[MIS16-P09] 国際深海科学掘削計画第352次研究航海で掘削された前弧玄武岩とボニナイトの物性研究
キーワード:国際深海科学掘削計画第352次研究航海、伊豆・小笠原前弧、火山岩、密度、P波速度、帯磁率
日本の南東には,伊豆・小笠原・マリアナ弧(IBM弧)が形成されている.IBMプロジェクトは,島弧進化の総合的理解と大陸地殻成因の解明を目的としたプロジェクトである.その一環として,国際深海科学掘削計画第352次研究航海(IODP Exp.352)が2014年7月30日から9月29日に行われた.小笠原海溝前弧域で掘削を実施し,沈み込み開始初期に特徴的な岩石である前弧玄武岩とボニナイトの採取に成功した.海溝側の2サイト(U1440,U1441)では前弧玄武岩,島弧側の2サイト(U1439,U1442)ではボニナイトが掘削された.本研究の目的は,Exp.352で掘削されたボニナイトと前弧玄武岩の物性を明らかにすることである.ボニナイトと前弧玄武岩を用いて,薄片観察及び物性測定を行った.物性測定では,密度,空隙率,弾性波速度,そして帯磁率を測定した.弾性波速度は常圧で測定し,一部試料は封圧下で測定した.薄片観察の結果,前弧玄武岩は無斑晶質な組織がみられた.ボニナイトは,ハイアロクラスタイトや間粒状組織,無斑晶組織など多様な産状が観察された.物性測定の結果,密度は2~3g/cm3,空隙率は5~40%,常圧下の弾性波速度は3~5.5 km/sであった.密度と弾性波速度の関係に正の相関が認められた.この正の相関は,帯磁率と関係があり,帯磁率の高いグループ(>5×10-3)には,密度が高い前弧玄武岩とボニナイトが存在し,帯磁率の低いグループ(<5×10-3)には,密度が低いボニナイトのみが存在することがわかった.薄片観察において,帯磁率の高いグループでは磁鉄鉱が認められた.強磁性鉱物である磁鉄鉱は高い帯磁率と比較的高い密度をもつため,磁性鉱物のもつ高い密度が岩石全体の密度を押し上げている可能性があると考察した.この傾向は船上分析の結果においても確認できた.