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[MIS17-04] 浅海堆積物に記録された放散虫群集の古海洋学的意義
キーワード:沿岸環境、対馬海流、日本海固有水
一般的に放散虫化石の分析は,その多産が期待される深海堆積物を対象として行われることが多いが,条件が整っていれば比較的に浅い水深(300m程度)の堆積物にも多くの化石が保存される.このような浅海堆積物に記録されている放散虫群集には,深海堆積物からは取得できない重要な古海洋情報が記録されている場合がある.
例えば,浅海域は,陸に近い沿岸に広がっている場合が多い.現在の日本海においては,日本列島の沿岸を対馬海流の第1分枝が北上し,沖合よりも強くこの暖流水の影響を受ける.鳥取沖(水深316 m)から採取されたコアGH872-308と,その沖合の隠岐堆(水深946 m)から採取されたコアD-GC6に記録されていた温暖種の産出変化を調べた結果,完新世における温暖化が沿岸域でより早く起こっていることが明らかとなった.このように,沿岸と沖合の古海洋記録を比較することは,より詳細な古海洋循環を復元する上で重要である.
また,プランクトンである放散虫は,種により生息深度が異なることから,表層のみではなく中深層の環境指標としても期待されている.現在の日本海においては,表層付近では対馬海流の影響を受けた温暖群集で構成され,中層以深には日本海固有水に適応した寒冷種が生息している.しかし,過去における深度分布が現在と同じであったとする保証はなく,深海堆積物からは産出した放散虫が当時どこの水深に生息したかは分からない.一方,浅海堆積物に記録された放散虫は,コアが採取された水深より浅い水柱に生息する種が記録され,深海種は含まれないはずであり,過去の放散虫の深度分布を知る上で重要な情報となる.コアGH872-308とほぼ同一地点のIODP Site U1427から採取されたコア試料からは,現在の日本海では水深1,000 m以深の日本海固有水に適応しているCycladophora davisianaが,MIS-12など幾つかの層準で多産することが明らかとなった.このことは,本種の生息水深の上限が当時は300 mよりも浅い水深にまで移動していたことを示している.これは,当時の中深層水の沈み込み深度が表層低塩分化のために浅くなっていたことが原因かもしれない.
例えば,浅海域は,陸に近い沿岸に広がっている場合が多い.現在の日本海においては,日本列島の沿岸を対馬海流の第1分枝が北上し,沖合よりも強くこの暖流水の影響を受ける.鳥取沖(水深316 m)から採取されたコアGH872-308と,その沖合の隠岐堆(水深946 m)から採取されたコアD-GC6に記録されていた温暖種の産出変化を調べた結果,完新世における温暖化が沿岸域でより早く起こっていることが明らかとなった.このように,沿岸と沖合の古海洋記録を比較することは,より詳細な古海洋循環を復元する上で重要である.
また,プランクトンである放散虫は,種により生息深度が異なることから,表層のみではなく中深層の環境指標としても期待されている.現在の日本海においては,表層付近では対馬海流の影響を受けた温暖群集で構成され,中層以深には日本海固有水に適応した寒冷種が生息している.しかし,過去における深度分布が現在と同じであったとする保証はなく,深海堆積物からは産出した放散虫が当時どこの水深に生息したかは分からない.一方,浅海堆積物に記録された放散虫は,コアが採取された水深より浅い水柱に生息する種が記録され,深海種は含まれないはずであり,過去の放散虫の深度分布を知る上で重要な情報となる.コアGH872-308とほぼ同一地点のIODP Site U1427から採取されたコア試料からは,現在の日本海では水深1,000 m以深の日本海固有水に適応しているCycladophora davisianaが,MIS-12など幾つかの層準で多産することが明らかとなった.このことは,本種の生息水深の上限が当時は300 mよりも浅い水深にまで移動していたことを示している.これは,当時の中深層水の沈み込み深度が表層低塩分化のために浅くなっていたことが原因かもしれない.