09:00 〜 09:15
[MIS17-13] 日記天候記録と古気象観測記録による歴史時代の高精度・高分解能気候復元
★招待講演
キーワード:気候復元、気候変動
過去数百年間に及ぶ歴史時代の気候変動を、古い文書記録や観測記録から明らかにし、 現在の気象観測記録と連結させることにより、その長期傾向や周期性を検出することができれば、長期的な変動やその周期性が明らかになり、将来の気候予測に役立てることが可能になる。気候復元に用いられる史料やデータの多くは、過去からの記録として各地の図書館や資料館、寺社、個人宅等に長期間保存されてきた紙ベースのものが主体となるが、劣化・紛失したものも多く、貴重な気候代替資料(proxy)のデータベース化が急務と考えられる。したがって、歴史時代の気候復元研究の遂行と進展には、日本だけでなく世界各地に眠っている膨大な量の歴史気候資料を発掘(発見)し、その電子ファイル作成とデータベース化が重要である。
上記のように, 歴史時代の気候変動研究において用いられる資料・データは全国各地に多数残されているが、その中で17世紀以降の江戸幕藩体制下で毎日記録された藩日記類の天候記録は、場合によっては300年間に及ぶ長期間の連続的な気候資料として世界的にも希有なproxy文書記録と言える。藩日記だけではなく、寺社の日記や農事日誌、旧家に残る代々の日記など、毎日の天候を記録した様々な日記が残されている。日記の天候記録は、単にその日の天気の概要を記したものから、時々刻々と変化する天気や風などを詳細に記したものまで多種多様である。これらの記録を月単位で集計し、長期間の時系列グラフにしたり、全国多地点の天候を日単位でマップ化して天気分図を作成することも可能である。
また、古気象観測記録についても、気象庁による公式気象観測の開始される1872年以前にさかのぼって、1820年代から断続的ではあるが1850年代まで続く長崎・出島における気象観測記録(主に出島在駐のオランダ人医師らによる)をデータベース化してきた。さらに、大阪、横浜、水戸など各地の日本人による非公式気象観測記録の収集とデジタル化が行われており、19世紀以降に関しても、気象庁の公式観測とは別に、明治期(1870~80年代)の灯台気象観測記録(未発表)などの記録収集とデジタル化も試みられている。ただし、歴史時代の気象観測記録は、観測機器や設置環境、1日の観測回数などが統一されていない。一方、現在の気象観測データは、観測点の移動や観測機器・観測時刻の変更等を考慮すれば、 ほぼ均質で信頼できる数値データとしてそのまま研究に用いることができる。しかし、気象庁の公式観測によらない古気象データであっても、時間・空間的に補完することで新たな研究成果を生み出す可能性が高い場合には、適切な補正・均質化を行うことで有効活用ができる。ここで言う有効活用とは、公式気象観測データと非公式気象観測データを連結して長期的な連続データとして活用可能という意味である。
一方、藩日記の天候記録のようなproxy文書記録の場合は、そのままでは現在の気象観測データと連結させることはできない。そこで、何らかの方法で定性的な天候記録を定量的な気象数値(気温、降水量など)に変換(読み替え)する必要がある。このような変換(いわばAD変換)の手法は確立されていないが、多くの場合、特定の天気出現特性と気温等の気象数値との相関関係を現在の気象観測データを用いて統計学的に求め、気象観測記録の得られない歴史時代の天気出現特性から回帰式(多くの場合, 単回帰)を適用して算出する方法がとられている。
いずれにしても、数百年前までさかのぼれる日記天候記録や19世紀前半までさかのぼれる古気象観測記録を適切な補正・均質化で定量化できれば、現在の公式気象観測記録と連結することによって、数百年間の連続データを復元することが可能になるであろう。
上記のように, 歴史時代の気候変動研究において用いられる資料・データは全国各地に多数残されているが、その中で17世紀以降の江戸幕藩体制下で毎日記録された藩日記類の天候記録は、場合によっては300年間に及ぶ長期間の連続的な気候資料として世界的にも希有なproxy文書記録と言える。藩日記だけではなく、寺社の日記や農事日誌、旧家に残る代々の日記など、毎日の天候を記録した様々な日記が残されている。日記の天候記録は、単にその日の天気の概要を記したものから、時々刻々と変化する天気や風などを詳細に記したものまで多種多様である。これらの記録を月単位で集計し、長期間の時系列グラフにしたり、全国多地点の天候を日単位でマップ化して天気分図を作成することも可能である。
また、古気象観測記録についても、気象庁による公式気象観測の開始される1872年以前にさかのぼって、1820年代から断続的ではあるが1850年代まで続く長崎・出島における気象観測記録(主に出島在駐のオランダ人医師らによる)をデータベース化してきた。さらに、大阪、横浜、水戸など各地の日本人による非公式気象観測記録の収集とデジタル化が行われており、19世紀以降に関しても、気象庁の公式観測とは別に、明治期(1870~80年代)の灯台気象観測記録(未発表)などの記録収集とデジタル化も試みられている。ただし、歴史時代の気象観測記録は、観測機器や設置環境、1日の観測回数などが統一されていない。一方、現在の気象観測データは、観測点の移動や観測機器・観測時刻の変更等を考慮すれば、 ほぼ均質で信頼できる数値データとしてそのまま研究に用いることができる。しかし、気象庁の公式観測によらない古気象データであっても、時間・空間的に補完することで新たな研究成果を生み出す可能性が高い場合には、適切な補正・均質化を行うことで有効活用ができる。ここで言う有効活用とは、公式気象観測データと非公式気象観測データを連結して長期的な連続データとして活用可能という意味である。
一方、藩日記の天候記録のようなproxy文書記録の場合は、そのままでは現在の気象観測データと連結させることはできない。そこで、何らかの方法で定性的な天候記録を定量的な気象数値(気温、降水量など)に変換(読み替え)する必要がある。このような変換(いわばAD変換)の手法は確立されていないが、多くの場合、特定の天気出現特性と気温等の気象数値との相関関係を現在の気象観測データを用いて統計学的に求め、気象観測記録の得られない歴史時代の天気出現特性から回帰式(多くの場合, 単回帰)を適用して算出する方法がとられている。
いずれにしても、数百年前までさかのぼれる日記天候記録や19世紀前半までさかのぼれる古気象観測記録を適切な補正・均質化で定量化できれば、現在の公式気象観測記録と連結することによって、数百年間の連続データを復元することが可能になるであろう。