日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 古気候・古海洋変動

2016年5月24日(火) 15:30 〜 17:00 A04 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)、多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、中川 毅(立命館大学)、林田 明(同志社大学理工学部環境システム学科)、座長:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

[MIS17-33] 東赤道太平洋域の温度躍層深化に伴う漸新世の浮遊性有孔虫生息深度変化

*松井 浩紀1西 弘嗣2高嶋 礼詩2黒柳 あずみ2池原 実3高柳 栄子1井龍 康文1 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻、2.東北大学学術資源研究公開センター、3.高知大学海洋コア総合研究センター)

キーワード:東赤道太平洋、漸新世、生息深度、浮遊性有孔虫、酸素炭素同位体比

浮遊性有孔虫は鉛直方向に棲み分けをしており,その生息深度を理解することは,正確な古環境復元を行う上で重要である.しかしながら,漸新世から鮮新世までの長期間,広範囲で生息した浮遊性有孔虫Dentoglobigerina venezuelanaの生息深度については,不明な点が多い.東赤道太平洋域における先行研究では,前期漸新世には表層に生息していたD. venezuelanaが,中新世以降には中深層に生息していたと報告されている.これまで,同種の生息深度が変化した時期は特定されておらず,また漸新世の気候変動との関連性も明らかになっていない.
そこで本研究では,東赤道太平洋域で掘削されたIODP Site U1334の試料を用いて,D. venezuelanaおよびParagloborotalia siakensis group(表層種)の漸新世を通じた連続的な酸素,炭素同位体比を測定した.D. venezuelanaP. siakensis groupの酸素同位体比を比較することにより,二段階のD. venezuelanaの生息深度変化が明らかになった.はじめに~27.4 Maに上部表層から下部表層へと移行し,続いて~26.3 Maに下部表層から中深層へとさらに深化した.加えて,浮遊性有孔虫群集解析を行った結果,中層種卓越から表層種優勢へと群集組成が大きく変化しており,上記の生息深度変化が東赤道太平洋域の温度躍層深化と関連していることが示唆された.
さらに,~27.4 Maの生息深度変化について,Site U1334の結果を近傍の2地点と比較した結果,3地点で深度変化のタイミングは一致せず,南へ向かって20万年以内で生息深度変化が起こっていた.東赤道太平洋域において,全般的に温度躍層が深化し,東西の温度勾配が減少したためと解釈される.二段階のD. venezuelanaの生息深度変化は,氷床量が減少する時期と一致することから,後期漸新世の温暖化傾向が東赤道太平洋域の温度躍層深化,湧昇流減少を引き起こし,最終的に浮遊性有孔虫の中深層への適応を招いたと考えられる.