日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 古気候・古海洋変動

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)、多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、中川 毅(立命館大学)、林田 明(同志社大学理工学部環境システム学科)

17:15 〜 18:30

[MIS17-P06] 汽水湖における降水型ラミナの形成過程と古降水量の推定

*瀬戸 浩二1香月 興太1園田 武2 (1.島根大学汽水域研究センター、2.東京農業大学)

キーワード:降水型ラミナ、古降水量、年縞、藻琴湖

亜寒帯気候に属する北海道東部オホーツク海沿岸には,多くの汽水湖が分布する.特に網走市周辺では,サロマ湖,網走湖,能取湖,濤沸湖など様々な特徴を持った汽水湖が分布し,日本有数の汽水湖群を形成している.その中の藻琴湖において2009年に採取された09Mk-1Cコアと09Mk-2Cコアにラミナセットが見られ,その解析結果から夏季の降水の影響による年層と考えられている.2015年3月に新たにコアを採取した.本研究の目的は,2009年と2015年に藻琴湖から得られた柱状試料を詳細に対比し,新たに加わったラミナと降水パターンを比較することによってラミナの形成と降水の関係を明らかにし,さらに過去のラミナのパターンから古降水量解析の可能性を検討することである.
15Mk-3Cコアと09Mk-1CコアについてソフトX線写真を用いて比較した結果,一部を除いてラミナレベルで対比することが可能である.2つのコアの対比線はほぼ平行で,同様な堆積速度を示しているものと思われる.それらの対比から新たに堆積した部分は,約13cmであった.これらのコアの採取日時の差は約6年であることから,現在の堆積速度は約2cm/yと早いことになる.
この期間について約1.25mm間隔で分取し,CNS元素分析を行なった.低密度を示すラミナの時は,全有機炭素(TOC)濃度,全窒素(TN)濃度,全イオウ(TS)濃度が高く,C/N比が低い.一方,高密度を示すラミナの時は,TOC濃度, TN濃度, TS濃度が低く,C/N比が高い.これらは,低密度ラミナが通常時,高密度ラミナは降水時を示唆している.
この6年間のラミナのパターンと降水のパターンの比較検討を行った.相対的に密度の高いラミナ(高密度ラミナ)は,116枚確認された.一方で,7日間の累計20mmを越える降雨は108回観測されている.したがって,もし,高密度ラミナの形成が降雨によるものであれば,7日間の累計20mm以上の降雨で形成されることになる.また,全体的に高密度のラミナセットを見ると,7日間の累計60mmを越える降雨が短い期間に連続的に起るときと対応する.ラミナセットの密度の高低のパターンとラミナのパターンを組み合わせて降水量のパターンと比較するとほぼ一致する.これらのことから,降水のある時に高密度ラミナが形成されているようだ.しかし,降水量が多い時と少ない時の高密度ラミナの厚さに優位な差はなかった.これは懸濁物を含む水塊のボリームに制限があることを示唆している.すなわち,過剰に流入した懸濁物を含む水塊は湖沼に堆積することなく系外に排出されるためだと思われる.全体的に高密度のラミナセットは,堆積速度が遅く,圧密を受けている年代では,一つの厚い高密度を示すラミナになると思われる.そういう降水パターンが見られる時は,年降水量が多い時に対応するだろう.したがって,厚い高密度を示すラミナを解析すれば,ある程度の降水量を推定できる可能性があるだろう.