日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 古気候・古海洋変動

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)、多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、中川 毅(立命館大学)、林田 明(同志社大学理工学部環境システム学科)

17:15 〜 18:30

[MIS17-P22] タイ東北部における、0.79 Ma衝突事変(オーストラリア・アジアテクタイトの起源)のエジェクタ層の探索

*多田 賢弘1多田 隆治1Carling Paul2常 昱1 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2.Geography & Environment, University of Southampton)

キーワード:小天体衝突、オーストラリア・アジアテクタイト、衝撃変成石英

小天体衝突は地球環境に重大な影響を及ぼし得る。例えば、白亜紀ー古第三紀境界の大量絶滅は直径およそ10 kmの小天体の衝突により引き起こされたとされている(Alvarez et al., 1980; Schulte et al., 2010)。衝突に伴い衝突地点の岩石は破砕・溶融・気化し放出され、クレーターが形成される。放出された物質はエジェクタと呼ばれ、堆積してエジェクタ層を形成する。クレーターの大きさと形状、エジェクタの分布は衝突天体の大きさ、衝突角度、衝突速度によって変化する。従って、クレーターとエジェクタ層は衝突の様式に関する情報を持つといえる(Melosh, 2011; French, 1998)。エジェクタ層には、衝撃変成石英などの衝撃変成鉱物や、スフェリュール(球状粒子)など衝突の証拠となるものが含まれる。テクタイトはスフェリュールの1種で、衝突地点の岩石が小天体衝突により溶融・放出され固化したガラス質物質であり、球形や楕円形、涙型などの形状を呈する。これまでテクタイトは地球上の4つの限られた地域から報告されている(Glass and Simonson, 2012; McCall, 2001)。このうちオーストラリア・アジア分布域は最も広く、かつテクタイトの形成年代が最も若い(0.79 Ma)分布域である(McCall, 2001)。オーストラリア・アジアテクタイトをもたらした衝突事変は直径40km程度のクレーターを形成したと推定されており(Glass and Koeberl, 2006)、比較的大規模な衝突としては最も年代が若いことから、小天体衝突がもたらす地球環境変動についてあらたな知見が得られる可能性がある。衝突地点は、陸上のテクタイトや海洋コア中のマイクロテクタイトの分布から、インドシナ半島東部にあると推定されている(Glass and Koeberl, 2006; Ma et al., 2004; Prasad et al., 2007; Schnetzler, 1992)が、衝突クレーターは未発見であり、正確な衝突地点や規模、様式などは十分明らかにされていない。エジェクタ層はクレーターに近いほど層厚が厚くなる性質があるため、衝突地点の正確な推定にはエジェクタ層の分布や層厚が重要である。この東南アジアにおける0.79 Ma衝突事変のエジェクタ層は、海洋コア中でのみマイクロテクタイト密集層として同定され、より衝突地点に近いと考えられるインドシナ半島陸上では同定されていない。このことが、クレーターが発見されない一因であると考えられる。タイ東北部では、地表下1~2 mにある”ラテライト”層と呼ばれる厚さ数十 cmの赤褐色礫層中及び上位の細粒砂層基底部からテクタイトが報告されている(Fiske et al., 1996, 1999; Songtham et al., 2011, 2012; Tamura, 1992)。しかしながら、これらのテクタイトについては再堆積の可能性が指摘されており、テクタイトや衝撃変成石英の産出のみによってエジェクタ層と同定することはできない(Fiske et al., 1996; Koeberl and Glass, 2000; Langbroek, 2015)。本研究では、東南アジアにおける0.79 Ma衝突事変の様式を解明するための第一歩として、エジェクタ層を同定するため、タイ東北部Kok Yai, Krahadの2セクションにおいて採取された”ラテライト”層直下の礫層、”ラテライト”層、”ラテライト”層を覆う細粒砂層の試料を用いて、粒度分析及び試料中のスフェリュールの観察・化学分析を行った。その予察的な結果を報告する。