日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] 南北両極のサイエンスと大型研究

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*中村 卓司(国立極地研究所)、杉本 敦子(北海道大学大学院 地球環境科学研究院)、杉山 慎(北海道大学低温科学研究所)

17:15 〜 18:30

[MIS19-P03] 80万年を超える深層アイスコア掘削による気候復元研究

*川村 賢二1,2藤田 秀二1,2東 久美子1,2本山 秀明1,2ドームふじ アイスコアコンソーシアム3 (1.大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所、2.総合研究大学院大学 複合科学研究科 極域科学専攻、3.ドームふじアイスコアコンソ-シアム)

キーワード:南極、氷床、アイスコア

国立極地研究所およびドームふじアイスコアコンソーシアム(http://polaris.nipr.ac.jp/~icc/NC/htdocs/)を中心とした研究者グループは、東南極ドームふじ近傍において80万年(現存最古のドームCコア)を大きく超える年代のアイスコア(仮称:第3期ドームふじ氷床コア)の掘削を提案する。この目的に向け、第IX期南極地域観測事業重点研究観測(2016〜2021年度)では、掘削候補地域における氷床表面及び内部層、底面状態の精緻な調査を行い、深層掘削地点を選定し、その上で深層コアの取得に向けたパイロット孔掘削とケーシング、中層深度までの深層ドリルによる掘削を目指している。第X期の早期に氷床底部までの掘削を完遂し、最古のアイスコアを取得する。
気候変動の歴史をさかのぼると、現在卓越している10万年周期の氷期サイクルが確立したのは約80万年前であり、それ以前、特に120万年前以前には4万年周期の氷期サイクルが卓越していた。その時代の気候変動を形成した外的要因や地球システムの内部相互作用、現在の10万年周期への遷移メカニズム等、気候変動の理解のためには避けて通れない重要課題が氷期・間氷期変動に含まれている。気候変動の強制力として、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが重要であることは論を待たず、80万年以上さかのぼってそれらの変動を正確に復元するための媒体は南極のアイスコアしかない。また、南極(南大洋)は底層水の供給や二酸化炭素の海洋への貯蔵を規定する重要地域であり、その気候変動のタイミングが、最近80万年間にみられるように北半球の気候変動と一致していたのかどうかなど、アイスコアから得られる南極気候変動の情報は、全球的視野においても不可欠である。
これまで、ドームふじ深層氷床コア解析や広域氷床観測などに基づき、第四紀後期から近年にかけての南極域から全球規模に至る様々な時空間スケールの環境変動史を復元し、全球気候変動に南極が果たす役割を解明すべく研究を行ってきた。特に、ドームふじにおける深層掘削によって過去70万年間をカバーするコアが得られ、現在その解析と研究成果発表が進められている。第VIII期南極地域観測事業(2010〜2015年度)においては重点研究観測サブテーマ3「氷期-間氷期サイクルから見た現在と将来の地球環境」を実施し、ドームふじコアの持ち帰りや浅層コア掘削、広域雪氷観測、沿岸域中層掘削等を進めた。
日本も参加しているアイスコア研究の国際組織IPICS(PAGES, SCAR, IACSが支援する、アイスコア研究者・設営関係者で構成される組織)では、今後の大目標の一つとして、氷期・間氷期サイクルの卓越周期が変化した時代をカバーする150万年のアイスコアの掘削を挙げている。それへの貢献を視野に入れ、現ドームふじ基地近傍における新基地の建設を構想しつつ、第VIII期においては地上レーダー探査による底面環境の調査と掘削候補地域の大まかな選定を行ってきた。有力候補地域は現ドームふじ基地から約60km圏内である。
第IX期から第X期にかけて、新たな深層コア掘削点を探るための雪氷学的調査を実施したうえで、掘削点を選定し、深層掘削を目指している。深層コア掘削に向けた最重要課題は、掘削位置の選定である。氷床探査レーダーによる内部層、基盤地形、底面状態の解析をもとに、以下の条件を得られることが必要である。
・氷床下の基盤地形が高原状であり、深部の氷の層位が流動によって乱されていない。
・氷床底部が凍結しており古い氷が残っている。そのためには、氷床厚は3000mより薄いこと(その場合、比較的短期間での掘削が見込める)。
・氷期・間氷期を通じて、風による剥離などなく、積雪が連続して堆積している。
掘削地の選定には、堆積環境や環境シグナル記録プロセスを押さえるための氷床表面の雪氷観測、候補地における浅層掘削やフィルン空気解析も必要である。
アイスコア掘削と気候復元を速やかに成功させるためには、新たな深層掘削機やコア処理・分析機器の開発などの技術的課題や、燃料・物資の輸送や建設などの設営的課題も大きい。