日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS26] 火山噴煙・積乱雲のモデリングとリモートセンシング

2016年5月26日(木) 10:45 〜 12:15 コンベンションホールB (2F)

コンビーナ:*鈴木 雄治郎(東京大学地震研究所)、前野 深(東京大学地震研究所)、佐藤 英一(気象研究所)、前坂 剛(防災科学技術研究所)、座長:鈴木 雄治郎(東京大学地震研究所)、前坂 剛(防災科学技術研究所)

11:45 〜 12:00

[MIS26-11] 降灰予測モデルの検証のための太陽電池発電量を利用した降灰量推定

*宇野 史睦1,2新堀 敏基2橋本 明弘2大竹 秀明1,2石井 徹之3 (1.産業技術総合研究所、2.気象庁気象研究所、3.電力中央研究所)

キーワード:降灰量推定、太陽光発電

2015年3月より気象庁は日本の火山を対象に新しい降灰予報の提供を開始し、その予測モデルの精度検証もいくかの噴火事例において実施されている(Hashimoto et al 2012, 新堀ほか 2014)。しかし、国内火山の噴火に対して降灰量の測定は地点数が限られ、時間間隔も日/月積算値と粗く予測モデルの検証に不十分である。そのため、衛星や気象レーダーによるリモートセンシングを用いた予測の検証は盛んに実施されているが、大気中の火山灰輸送の時間変化や分布を評価できるが量的な議論は難しい。これらのことから、時間・空間的に高解像度・高密度な地上における降灰量データの取得が必要とされている。近年、太陽電池モジュール上に堆積する土壌や火山灰による発電量の低下が報告されており、堆積量と発電量の低下率に線形な関係があることが報告されている(Kaldellis and Kapsali 2011)。発電量データの多くは数分程度でモニタリングされており、また太陽光発電所はすでに数多く導入されている。つまり、発電量データから降灰量を推定することができれば、高い時間・空間解像度で降灰量データが得られる可能性がある。
本研究では、この関係を利用し太陽光発電量データを利用した降灰量の推定の構築を目的とする。今回は初期段階として先行研究で見られた火山灰の降灰量と発電効率の低下率について調査し、降灰量と発電量の低下率を利用した降灰量推定手法の利用可能性について検証を行った。2013年7月における鹿児島県桜島の噴火事例を対象とし、その北側に位置する霧島市における太陽光発電量データと降灰量観測データを利用した。
太陽光発電量、日射計による日射量はそれぞれ5分間隔で測定し、降灰量は臨時で6回期間の積算値として観測を行った。ただし、降灰量の観測間隔は不定期で実施された。また、本研究では発電量として短絡電流(Isc)を利用する。本来は電流と電圧の積が発電量であるが、太陽電池モジュールにおける電圧はモジュールの温度によって変動するため、温度に影響がないIscを利用した。
その結果、太陽電池モジュール上への降灰による発電効率の低下が見られた(図)。7/8から7/18まで断続的な降灰があり、発電効率が平均して10%低下し、最大で20%の減少が確認された。その後再び降水により火山灰が洗い流され、7/19には発電効率は降灰以前の値まで回復した。このような発電効率の低下は他の月でも確認され、発電効率が20%以上低下した事例は2013年において72日確認された。
この結果から、桜島の火山灰による太陽電池モジュールの発電効率の減少を確認することができた。当日は、鹿児島県で実施している日降灰量データを利用した複数年における発電効率の低下事例について発表する予定である。
謝辞
本研究はJST/CREST「太陽光発電予測に基づく調和型電力系統制御のためのシステム理論構築」(HARPS)並びに、気象庁気象研究所共同研究に よって実施された。また本研究で利用した発電量データ等は産業技術総合研究所平成24年度分野イノベーション推進予算により取得し、データ取得に関して産業技術総合研究所九州センター佐藤梨都子氏にご助力いただいた。ここに記して御礼申し上げます。
参考文献
Hashimoto A., T. Shimbori, and K. Fukui, 2012: Tephra Fall Simulation for the Eruptions at Mt. Shinmoe-dake during 26−27 January 2011 with JMANHM, SOLA, Vol. 8, 037−040, doi:10.2151/sola.2012-010.
新堀敏基・甲斐玲子・林 洋介・林 勇太・菅井 明・長谷川嘉彦・橋本明弘・高木朗充・山本哲也・福井敬一, 2014: 領域移流拡散モデルによる降下火砕物予測 -2011 年霧島山(新燃岳)噴火の事例-,気象研究所研究報告, 65 , 75-107, doi:10.2467/mripapers.65.75
Kaldellis J. K., and M. Kapsali, 2011: Simulating the dust effect on the energy performance of photovoltaic generators based on experimental measurements, Energy, 36, 5154-5161, doi:10.1016/j.energy.2011.06.018.