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[MIS34-04] GNSSデータに基づく西南日本のひずみ集中帯とその内陸地震長期評価への応用の可能性について
キーワード:ひずみ集中帯、GNSS、内陸地震
日本列島にGEONETに代表されるGNSS観測点が整備されて22年間が経過し,新潟−神戸ひずみ集中帯に代表されるような内陸域のひずみ集中帯が発見されてきた(例えばSagiya et al., 2000).しかし,測地学的に捉えられる数年間の地殻変動では,前弧域では南海トラフや日本海溝から沈み込む海洋プレートと大陸プレートのプレート間カップリングによる弾性変形が卓越するため,内陸地震や活断層といった内陸域の地殻内を起因とするようなテクトニックな変形を判別することは難しい.そこで,本研究では,ブロック断層モデル(McCaffrey, 2002)を用いて,内陸のブロック運動と南海トラフから沈み込むプレート間カップリングによる弾性変形を同時推定し,GNSS速度データからプレート間カップリングの影響を除去してひずみ速度分布を計算し,内陸域でのひずみ速度分布と内陸地震の震源分布を比較した結果について報告する.
用いたGNSS速度データは,西日本で顕著な地震やスロースリップイベントが発生していない2005年4月-2009年12月を平均したもので,国土地理院,海上保安庁,京都大学,IGSの観測点のRINEXデータをGIPSY6.2の精密単独測位法で解析した日座標値から計算した.ブロック断層モデルでは,Nishimura et al.(2015, AGU Fall Meeting)のモデルに準拠して,西南日本を12のブロックに分割し,それぞれのブロックにおける剛体回転運動と南海トラフから沈み込むフィリピン海プレート上面におけるプレート間カップリング分布を推定した.次に,推定されたプレート間カップリングからGNSS観測点での変位速度を計算して観測された速度から差し引き,プレート間カップリングの影響を除去した.そして,得られた変位速度データから,Shen et al(1996)の手法で距離減衰定数を15kmとして,面積ひずみ速度と最大剪断ひずみ速度の分布を計算した.
最大剪断ひずみ速度分布を見ると,九州では全体的にひずみ速度が大きく,特に別府から阿蘇,熊本,阿久根(布田川断層帯・日奈久断層帯)にかけてひずみ速度の大きな場所が連続する.2016年熊本地震と一連の地震活動もひずみ速度の大きな場所で発生した.また,九州山地や従来から指摘されている阿久根から霧島山,宮崎にかけての領域(九州南部剪断帯)でもひずみ速度が大きい.四国・中国地方では,島根県東部から鳥取県にかけての領域(山陰ひずみ集中帯)と中央構造線沿いや高知県東部でひずみ速度が大きい.近畿・中部地方では,和歌山市周辺の大きなひずみ速度が顕著で,淡路島から神戸,京都,琵琶湖を通り福井市付近にかけての帯状の領域(六甲—淡路断層帯,有馬高槻構造線,花折・琵琶湖西岸断層帯,)や濃尾断層系やから跡津川断層系の周辺域でひずみ速度が大きい.これらのひずみ速度分布と気象庁による1923年以降の内陸で発生した大地震(M≥6,20km以浅)の震源分布を比較すると,多くの大地震は,ひずみ速度の大きな場所で発生していることがわかる(図).
GNSSデータから得られる地表変位速度やひずみ速度は,弾性変形と非弾性変形の両方を含んでおり,過去の地震の余効変動なども考えると,将来発生する地震にそのまま対応するわけでない.とはいえ,測地学的ひずみ速度が大きい場所では,活断層が見つかっていないなくても内陸大地震が発生している場所もあることから,我が国でも諸外国のように地震の長期評価手法の1つとして,活断層に加えて測地データを採用することが望まれる.
用いたGNSS速度データは,西日本で顕著な地震やスロースリップイベントが発生していない2005年4月-2009年12月を平均したもので,国土地理院,海上保安庁,京都大学,IGSの観測点のRINEXデータをGIPSY6.2の精密単独測位法で解析した日座標値から計算した.ブロック断層モデルでは,Nishimura et al.(2015, AGU Fall Meeting)のモデルに準拠して,西南日本を12のブロックに分割し,それぞれのブロックにおける剛体回転運動と南海トラフから沈み込むフィリピン海プレート上面におけるプレート間カップリング分布を推定した.次に,推定されたプレート間カップリングからGNSS観測点での変位速度を計算して観測された速度から差し引き,プレート間カップリングの影響を除去した.そして,得られた変位速度データから,Shen et al(1996)の手法で距離減衰定数を15kmとして,面積ひずみ速度と最大剪断ひずみ速度の分布を計算した.
最大剪断ひずみ速度分布を見ると,九州では全体的にひずみ速度が大きく,特に別府から阿蘇,熊本,阿久根(布田川断層帯・日奈久断層帯)にかけてひずみ速度の大きな場所が連続する.2016年熊本地震と一連の地震活動もひずみ速度の大きな場所で発生した.また,九州山地や従来から指摘されている阿久根から霧島山,宮崎にかけての領域(九州南部剪断帯)でもひずみ速度が大きい.四国・中国地方では,島根県東部から鳥取県にかけての領域(山陰ひずみ集中帯)と中央構造線沿いや高知県東部でひずみ速度が大きい.近畿・中部地方では,和歌山市周辺の大きなひずみ速度が顕著で,淡路島から神戸,京都,琵琶湖を通り福井市付近にかけての帯状の領域(六甲—淡路断層帯,有馬高槻構造線,花折・琵琶湖西岸断層帯,)や濃尾断層系やから跡津川断層系の周辺域でひずみ速度が大きい.これらのひずみ速度分布と気象庁による1923年以降の内陸で発生した大地震(M≥6,20km以浅)の震源分布を比較すると,多くの大地震は,ひずみ速度の大きな場所で発生していることがわかる(図).
GNSSデータから得られる地表変位速度やひずみ速度は,弾性変形と非弾性変形の両方を含んでおり,過去の地震の余効変動なども考えると,将来発生する地震にそのまま対応するわけでない.とはいえ,測地学的ひずみ速度が大きい場所では,活断層が見つかっていないなくても内陸大地震が発生している場所もあることから,我が国でも諸外国のように地震の長期評価手法の1つとして,活断層に加えて測地データを採用することが望まれる.