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[MIS34-P07] 稠密臨時観測データを用いた2016年熊本地震における地震活動の時間発展(1) 前震から本震にかけて
キーワード:2016年熊本地震、地震活動、非火山性微動、布田川−日奈久断層帯、震源分布、緊急合同地震観測
2016年4月14日に益城町で震度7を観測する地震が発生した.地震発生直後は,余震域が日奈久断層帯の北東部から布田川断層帯の南西部の領域であったが,16日の気象庁マグニチュード7.3の地震発生以降,布田川断層帯の北東部全体に広がった.また,それに誘発されたと見られる活動が,阿蘇山の北東部や別府市にいたるまで発生し,現在も活発な活動が続いている.
一連の経過から,4月14日の気象庁マグニチュード6.5の地震が前震,4月16日の気象庁マグニチュード7.3の地震が本震と見られているが,両者の関係を明らかにするには,余震活動の時間的な発展の把握が重要である.本発表では,震源域周辺の定常観測点に加え,震源域の直上に位置する臨時観測点データおよび熊本地震に伴って設置された臨時の合同余震観測のデータを使用し,前震から本震までの地震活動の時間発展を詳細に見ることで,両者の関連性について検討する.
解析は,まずMatched Filter法(Gibbons and Ringdal, 2006; Shelly et al., 2007)により,群発する地震によって読み取りが困難な連続波形記録からのイベント検出を行った.次に,テンプレートとしたイベントと検出したイベントとの相関を元に,信頼性の高い検測時刻を含む読み取り値から震源決定を行った.そのため,検出されたイベントは,テンプレートを中心とした周囲に分布している.余震域直上の観測データを使用した結果,断層帯近傍の観測点でしか観測できないような,微小なイベントまで検出出来ていることが確認できた.
断層帯のやや深い部分で発生したテンプレートでの検出数を比較すると,前震から本震にかけての領域で,周辺よりも多数のイベントが検出された.また,本震発生にかけて,南西部では活動度が減少しているのに対し,前震から本震にかけての領域は活動を維持したままであった.このことは,断層帯の深部において,前震の地震活動が本震の断層帯へ影響を及ぼした可能性を示唆していると考えられる.また,前震から本震発生までに起きた地震をテンプレートに用いると,本震発生後で検出個数が減少する傾向が見られた.本震発生後に活発な活動域が布田川断層帯側に移動したためか,本震によって応力場ないしは構造が変化したことにより,テンプレートの検知能力が変化したことが示唆される.
また,Miyazaki et al.(2015)やChao and Obara (2016)で見いだされた,日奈久断層帯南部で発生している非火山性微動についても解析を行った.その結果,規模の大きな地震が発生した後に活動が活発化する傾向が見て取れた.長期的な活動レートは,地震発生前の長期間のレートとあまり変化していないことや浅部での余震活動が比較的低調なことから,影響の規模はあまり大きくないようであるが,今後の活動実態把握のためにモニタリングの拡充をおこなう必要がある.
謝辞
本発表では,九州大学の定常・臨時観測点の他に,気象庁・防災科学研究所の定常観測点および,2016年熊本地震合同地震観測による臨時観測データを使用した.本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の支援を受けた.また,本研究の一部は,科学研究費補助金「2016 年熊本地震と関連する活動に関する総合調査」(代表:清水 洋)によって実施された.加えて,東京大学地震研究所共同研究プログラムの援助を受けた.ここに記して感謝する.
Reference
Chao, K., and K. Obara (2016), Triggered tectonic tremor in various types of fault systems of Japan following the 2012 Mw8.6 Sumatra earthquake, J. Geophys. Res. Solid Earth, 121, 170–187, doi:10.1002/2015JB012566.
Gibbons, S. J., and F. Ringdal (2006), The detection of low magnitude seismic events using array-based waveform correlation, Geophysical Journal International, 165(1), 149-166, doi: 10.1111/j.1365-246X.2006.02865.x.
Miyazaki, M., S. Matsumoto, and H. Shimizu (2015), Triggered tremors beneath the seismogenic zone of an active fault zone, Kyushu, Japan,
Earth Planets Space, 67, 179, doi:10.1186/s40623-015-0346-4.
Shelly, D. R., S. Ide, and G. C. Beroza (2007), Non-volcanic tremor and low-frequency earthquake swarms, Nature, 446(7133), 305-307, doi: 10.1038/nature05666.
一連の経過から,4月14日の気象庁マグニチュード6.5の地震が前震,4月16日の気象庁マグニチュード7.3の地震が本震と見られているが,両者の関係を明らかにするには,余震活動の時間的な発展の把握が重要である.本発表では,震源域周辺の定常観測点に加え,震源域の直上に位置する臨時観測点データおよび熊本地震に伴って設置された臨時の合同余震観測のデータを使用し,前震から本震までの地震活動の時間発展を詳細に見ることで,両者の関連性について検討する.
解析は,まずMatched Filter法(Gibbons and Ringdal, 2006; Shelly et al., 2007)により,群発する地震によって読み取りが困難な連続波形記録からのイベント検出を行った.次に,テンプレートとしたイベントと検出したイベントとの相関を元に,信頼性の高い検測時刻を含む読み取り値から震源決定を行った.そのため,検出されたイベントは,テンプレートを中心とした周囲に分布している.余震域直上の観測データを使用した結果,断層帯近傍の観測点でしか観測できないような,微小なイベントまで検出出来ていることが確認できた.
断層帯のやや深い部分で発生したテンプレートでの検出数を比較すると,前震から本震にかけての領域で,周辺よりも多数のイベントが検出された.また,本震発生にかけて,南西部では活動度が減少しているのに対し,前震から本震にかけての領域は活動を維持したままであった.このことは,断層帯の深部において,前震の地震活動が本震の断層帯へ影響を及ぼした可能性を示唆していると考えられる.また,前震から本震発生までに起きた地震をテンプレートに用いると,本震発生後で検出個数が減少する傾向が見られた.本震発生後に活発な活動域が布田川断層帯側に移動したためか,本震によって応力場ないしは構造が変化したことにより,テンプレートの検知能力が変化したことが示唆される.
また,Miyazaki et al.(2015)やChao and Obara (2016)で見いだされた,日奈久断層帯南部で発生している非火山性微動についても解析を行った.その結果,規模の大きな地震が発生した後に活動が活発化する傾向が見て取れた.長期的な活動レートは,地震発生前の長期間のレートとあまり変化していないことや浅部での余震活動が比較的低調なことから,影響の規模はあまり大きくないようであるが,今後の活動実態把握のためにモニタリングの拡充をおこなう必要がある.
謝辞
本発表では,九州大学の定常・臨時観測点の他に,気象庁・防災科学研究所の定常観測点および,2016年熊本地震合同地震観測による臨時観測データを使用した.本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の支援を受けた.また,本研究の一部は,科学研究費補助金「2016 年熊本地震と関連する活動に関する総合調査」(代表:清水 洋)によって実施された.加えて,東京大学地震研究所共同研究プログラムの援助を受けた.ここに記して感謝する.
Reference
Chao, K., and K. Obara (2016), Triggered tectonic tremor in various types of fault systems of Japan following the 2012 Mw8.6 Sumatra earthquake, J. Geophys. Res. Solid Earth, 121, 170–187, doi:10.1002/2015JB012566.
Gibbons, S. J., and F. Ringdal (2006), The detection of low magnitude seismic events using array-based waveform correlation, Geophysical Journal International, 165(1), 149-166, doi: 10.1111/j.1365-246X.2006.02865.x.
Miyazaki, M., S. Matsumoto, and H. Shimizu (2015), Triggered tremors beneath the seismogenic zone of an active fault zone, Kyushu, Japan,
Earth Planets Space, 67, 179, doi:10.1186/s40623-015-0346-4.
Shelly, D. R., S. Ide, and G. C. Beroza (2007), Non-volcanic tremor and low-frequency earthquake swarms, Nature, 446(7133), 305-307, doi: 10.1038/nature05666.