17:15 〜 18:30
[MIS34-P104] 一人一人が2016年熊本・大分での一連の地震にて強震動に遭った回数
-学校教育や耐震基準の再考に向け何を明らかにすべきか-
キーワード:平成28年(2016年)熊本地震、震度観測点、震度、理科・地学基礎、前震ー本震ー余震型、耐震基準
熊本・大分にて2016年4月から発生している一連の地震(以降,2016熊本地震と記す)にて,前震-本震-余震型の地震活動が生じている.この2016熊本地震による4月14日の前震以降の16日間を眺めると,震度5弱以上を記録した震度観測点が存在する地震の発生回数は18回であった.視点を変えて一つ一つの震度観測点から見た場合,震度5弱以上を記録した地震は当該期間に何回あったのであろうか.この結果が,今後の地震学へ与える意味,耐震基準の再考へ与える意味,および地震教育,地震防災・減災教育へ与える意味を考えてみたい.
本研究では,気象庁震度速報,気象庁震度データベース,K-NETおよびKiK-netのデータ,小学校の教科「理科」の現行教科書(全教科書:6社から6種類),中学校の教科「理科」の現行教科書(全教科書:5社から5種類),高等学校の教科「理科」の科目「科学と人間生活」および科目「地学基礎」それぞれの現行教科書(前者が4社から4種類の全教科書,後者が5社から5種類の全教科書)を用いた.
解析の結果,2016熊本地震にて震度5弱以上の揺れを当該期間でもっとも多く測定した震度観測点は3点あり,その回数は7回であった.これらの観測点は,玉名市天水町(6弱を2回,5強を1回,5弱を4回),益城町宮園(7を2回,6弱を1回,5強を1回,5弱を3回),熊本市西区春日(6強を1回,6弱を1回,5強を1回,5弱を4回)である.一方,平成16年(2004年)中越地震にて震度5弱以上の揺れを本震からの16日間でもっとも多く測定した震度観測点は小千谷市城内であり,6強を2回,6弱を2回,5強を7回,5弱を5回であった.ただし,K-NETの小千谷観測点(NIG019)の記録は本震にて震度7相当を示しており(例えば,石井ほか,2007),小千谷市城内では最大余震でも震度6強であったことから,近傍の軟弱地盤上では震度7が2回続いた可能性も否定できない.
また,地震調査研究推進本部(1998)によるまとめなどを参考に気象庁データベースを用いた調査を行った.その結果,内陸型地震にて前震―本震―余震型となった地震活動で前震がマグニチュード6.4以上であった地震はこれまで記録されていなかったが,今回の前震はマグニチュード6.5であったことから,内陸型地震の地震活動のあり方などを見直す必要性が示唆される観測結果を得たといえる.
学校教育に目を転じると,小学校および中学校「理科」の教科書に前震,本震,余震といった用語は現在記されていない.高等学校の教科書でも,前震に触れているのは「地学基礎」の1社からの1種類だけである.
現段階では以上の結果から,次の3つの課題を解決する必要性が浮き彫りになったと考えている.
(1) 震度7に連続して襲われたのが日本で初めてと本当にいえるのか.
(2) 内陸型地震にてマグニチュード6.4以上の地震が起きた場合,その後の地震活動として本震-余震型を想定するだけで良いのか.
((1),(2)の結果から,耐震基準の見直しをどうしたら良いのか.)
(3) 学校教育にて地震活動,特に,前震,本震,余震をどう教える必要があり,強震動に関して何を教える必要があるのか.
本講演では,2016熊本地震から得られた教訓を,地震学,地震工学,地震教育,地震防災・減災教育にどう活かしていくべきか,結果の考察を通して議論を試みたい.
謝辞:
本研究では,気象庁震度速報,気象庁震度データベース,国立研究開発法人 防災科学技術研究所のK-NETおよびKiK-netのデータを使用しました.ここに記して深謝します.
参考文献:
石井やよい・後藤浩之・澤田純男,新潟県中越地震の震源インバージョンによる川口町の地震動特性の考察,地震工学論文集,29(0),153-160,2007.
地震調査研究推進本部,余震の確率評価手法について,1998.
小学校・中学校・高等学校の現行教科書全25冊(小学校6冊,中学校10冊,高等学校4冊+5冊).
本研究では,気象庁震度速報,気象庁震度データベース,K-NETおよびKiK-netのデータ,小学校の教科「理科」の現行教科書(全教科書:6社から6種類),中学校の教科「理科」の現行教科書(全教科書:5社から5種類),高等学校の教科「理科」の科目「科学と人間生活」および科目「地学基礎」それぞれの現行教科書(前者が4社から4種類の全教科書,後者が5社から5種類の全教科書)を用いた.
解析の結果,2016熊本地震にて震度5弱以上の揺れを当該期間でもっとも多く測定した震度観測点は3点あり,その回数は7回であった.これらの観測点は,玉名市天水町(6弱を2回,5強を1回,5弱を4回),益城町宮園(7を2回,6弱を1回,5強を1回,5弱を3回),熊本市西区春日(6強を1回,6弱を1回,5強を1回,5弱を4回)である.一方,平成16年(2004年)中越地震にて震度5弱以上の揺れを本震からの16日間でもっとも多く測定した震度観測点は小千谷市城内であり,6強を2回,6弱を2回,5強を7回,5弱を5回であった.ただし,K-NETの小千谷観測点(NIG019)の記録は本震にて震度7相当を示しており(例えば,石井ほか,2007),小千谷市城内では最大余震でも震度6強であったことから,近傍の軟弱地盤上では震度7が2回続いた可能性も否定できない.
また,地震調査研究推進本部(1998)によるまとめなどを参考に気象庁データベースを用いた調査を行った.その結果,内陸型地震にて前震―本震―余震型となった地震活動で前震がマグニチュード6.4以上であった地震はこれまで記録されていなかったが,今回の前震はマグニチュード6.5であったことから,内陸型地震の地震活動のあり方などを見直す必要性が示唆される観測結果を得たといえる.
学校教育に目を転じると,小学校および中学校「理科」の教科書に前震,本震,余震といった用語は現在記されていない.高等学校の教科書でも,前震に触れているのは「地学基礎」の1社からの1種類だけである.
現段階では以上の結果から,次の3つの課題を解決する必要性が浮き彫りになったと考えている.
(1) 震度7に連続して襲われたのが日本で初めてと本当にいえるのか.
(2) 内陸型地震にてマグニチュード6.4以上の地震が起きた場合,その後の地震活動として本震-余震型を想定するだけで良いのか.
((1),(2)の結果から,耐震基準の見直しをどうしたら良いのか.)
(3) 学校教育にて地震活動,特に,前震,本震,余震をどう教える必要があり,強震動に関して何を教える必要があるのか.
本講演では,2016熊本地震から得られた教訓を,地震学,地震工学,地震教育,地震防災・減災教育にどう活かしていくべきか,結果の考察を通して議論を試みたい.
謝辞:
本研究では,気象庁震度速報,気象庁震度データベース,国立研究開発法人 防災科学技術研究所のK-NETおよびKiK-netのデータを使用しました.ここに記して深謝します.
参考文献:
石井やよい・後藤浩之・澤田純男,新潟県中越地震の震源インバージョンによる川口町の地震動特性の考察,地震工学論文集,29(0),153-160,2007.
地震調査研究推進本部,余震の確率評価手法について,1998.
小学校・中学校・高等学校の現行教科書全25冊(小学校6冊,中学校10冊,高等学校4冊+5冊).