17:15 〜 18:30
[MIS34-P87] 平成28年熊本地震による液状化発生地点
キーワード:液状化、震度、微地形区分
1.はじめに
平成28年熊本地震では,4月14日21時26分頃,後に前震となる(M6.5)地震により,益城町で最大震度7が観測された.その後,4月16日1時25分頃の本震(マグニチュード(M)7.3)で最大震度7が観測され,建物倒壊や地盤災害等の大きな被害が生じている.液状化については,前震において液状化発生に関する報道がいくつかあり,その後,本震や余震によっても液状化被害に関する報告がなされた.しかし,今回は前震や余震を含めると,液状化の発生の可能性が予想される震度5強以上の地域は広域であり,学会・各機関においても十分に調べられている状況にはない.そこで,学会や各機関が調査している情報を収集しつつ,液状化発生地点の確認を,平成23年東北地方太平洋沖地震で筆者らが展開した調査手法を用いて実施し,情報を精査したうえでまとめる.本稿では,2016年5月11日時点での液状化調査の結果を報告する.
2.液状化発生地点の確認と同定
現地調査に先立ち,地理院地図から公表されている地震後の空中写真(4月15日~20日に撮影)およびGoogle Earthの2016年4月16日撮影の画像を用いて予察調査を行った.その後,4月28日から5月1日に現地調査を行った.その結果,前震・本震・余震のいずれかで震度6弱以上が観測された地域の広い範囲で噴砂などの液状化の痕跡と構造物への被害が発生したことがわかった.筆者らが液状化(噴砂)を確認した地点を図1に示す.液状化発生地域は,玉名市,熊本市西区,東区,南区,宇土市,八代市,熊本県嘉島町,御船町,甲佐町,益城町の8市町に及んでいる.図1を見ると,液状化の発生が集中した熊本平野には,多数の水路が網の目状に分布しており,低湿な水郷地帯であることがわかる.
1889年7月28日の熊本地震(M6.3)で液状化が発生した記録がある熊本市東区秋津,1968年4月1日の日向灘地震(M7.5)で液状化の発生が報告されている八代市昭和同仁町(若松,2011)では,今回の一連の熊本地震でも噴砂等が確認され,再液状化が発生したと推測される.
地理院地図の空中写真やGoogle Earthの地震後の画像には,氷川町,宇城市,阿蘇市,南阿蘇村などでも噴砂が認められることから,これらの地域についても,今後,現地調査による確認を行う予定である.
3.液状化発生地点の微地形区分
液状化が発生した場所の微地形区分は,島原湾に面した玉名市,熊本市,宇土市,八代市の干拓地や,熊本市南部を流れる白川・緑川およびその支流沿いの三角州,旧河道,後背湿地,自然堤防である.特に,旧河道およびこれに沿った自然堤防や後背湿地には,顕著な噴砂や液状化による側方流動が見られた.川からやや離れた内陸部でも,熊本市南区近見から川尻にかけての地域,南区土河原町から孫代町にかけての地域,南区今町から西区中島町にかけての地域では,細い水路に沿って帯状に連続して液状化が発生していた.これらの地域には明瞭な旧河道は認められないが,水路に沿って連続して自然堤防が発達していることから,古い時代には川が流れており,水路はその名残と推測される.ただし,この地域の最も古い地形図である1901年測量の地形図では既に水田となっており,かなり古い時代の河道と推測される.このような極めて古い時代の旧河道沿いで液状化が発生した理由としては,かつての河道に沿って現在でも水脈があり,地下水位が高かったためではないかと推測されるが,今後,地盤データ等による検証が必要である.
4.まとめ
平成28年熊本地震の前震・本震・余震により,熊本平野を中心とする広い範囲で液状化の発生を確認することができた.今後も引き続き情報収集と現地調査等を行う予定であるが,現時点では以下のことが分かった.1) 液状化は,前震・本震・余震のいずれかで震度6弱以上が観測された島原湾に面した玉名市,熊本市,宇土市,八代市の干拓地や,熊本市南部を流れる白川・緑川およびその支流沿いの三角州,旧河道,後背湿地,自然堤防で多く発生していた.2) 現在の河川から離れたやや内陸部にある水路沿いに帯状に連続して液状化が発生した地域がいくつか認められた.これらの地域は,微地形的特徴から明治以前の古い旧河道である可能性が高い.3) 熊本市東区秋津および八代市昭和同仁町の液状化発生地点では,それぞれ1889年熊本地震と1968年日向灘地震で液状化が発生した記録があり,今回の地震で再液状化したと推測される.
謝辞
現地調査に先立ち東京電機大学の安田進教授および九州工業大学の永瀬英生教授から液状化発生の情報をご提供頂いた.記して感謝申し上げる.
参考文献
若松加寿江:日本の液状化履歴マップ745-2008, 東京大学出版会, 2011.
平成28年熊本地震では,4月14日21時26分頃,後に前震となる(M6.5)地震により,益城町で最大震度7が観測された.その後,4月16日1時25分頃の本震(マグニチュード(M)7.3)で最大震度7が観測され,建物倒壊や地盤災害等の大きな被害が生じている.液状化については,前震において液状化発生に関する報道がいくつかあり,その後,本震や余震によっても液状化被害に関する報告がなされた.しかし,今回は前震や余震を含めると,液状化の発生の可能性が予想される震度5強以上の地域は広域であり,学会・各機関においても十分に調べられている状況にはない.そこで,学会や各機関が調査している情報を収集しつつ,液状化発生地点の確認を,平成23年東北地方太平洋沖地震で筆者らが展開した調査手法を用いて実施し,情報を精査したうえでまとめる.本稿では,2016年5月11日時点での液状化調査の結果を報告する.
2.液状化発生地点の確認と同定
現地調査に先立ち,地理院地図から公表されている地震後の空中写真(4月15日~20日に撮影)およびGoogle Earthの2016年4月16日撮影の画像を用いて予察調査を行った.その後,4月28日から5月1日に現地調査を行った.その結果,前震・本震・余震のいずれかで震度6弱以上が観測された地域の広い範囲で噴砂などの液状化の痕跡と構造物への被害が発生したことがわかった.筆者らが液状化(噴砂)を確認した地点を図1に示す.液状化発生地域は,玉名市,熊本市西区,東区,南区,宇土市,八代市,熊本県嘉島町,御船町,甲佐町,益城町の8市町に及んでいる.図1を見ると,液状化の発生が集中した熊本平野には,多数の水路が網の目状に分布しており,低湿な水郷地帯であることがわかる.
1889年7月28日の熊本地震(M6.3)で液状化が発生した記録がある熊本市東区秋津,1968年4月1日の日向灘地震(M7.5)で液状化の発生が報告されている八代市昭和同仁町(若松,2011)では,今回の一連の熊本地震でも噴砂等が確認され,再液状化が発生したと推測される.
地理院地図の空中写真やGoogle Earthの地震後の画像には,氷川町,宇城市,阿蘇市,南阿蘇村などでも噴砂が認められることから,これらの地域についても,今後,現地調査による確認を行う予定である.
3.液状化発生地点の微地形区分
液状化が発生した場所の微地形区分は,島原湾に面した玉名市,熊本市,宇土市,八代市の干拓地や,熊本市南部を流れる白川・緑川およびその支流沿いの三角州,旧河道,後背湿地,自然堤防である.特に,旧河道およびこれに沿った自然堤防や後背湿地には,顕著な噴砂や液状化による側方流動が見られた.川からやや離れた内陸部でも,熊本市南区近見から川尻にかけての地域,南区土河原町から孫代町にかけての地域,南区今町から西区中島町にかけての地域では,細い水路に沿って帯状に連続して液状化が発生していた.これらの地域には明瞭な旧河道は認められないが,水路に沿って連続して自然堤防が発達していることから,古い時代には川が流れており,水路はその名残と推測される.ただし,この地域の最も古い地形図である1901年測量の地形図では既に水田となっており,かなり古い時代の河道と推測される.このような極めて古い時代の旧河道沿いで液状化が発生した理由としては,かつての河道に沿って現在でも水脈があり,地下水位が高かったためではないかと推測されるが,今後,地盤データ等による検証が必要である.
4.まとめ
平成28年熊本地震の前震・本震・余震により,熊本平野を中心とする広い範囲で液状化の発生を確認することができた.今後も引き続き情報収集と現地調査等を行う予定であるが,現時点では以下のことが分かった.1) 液状化は,前震・本震・余震のいずれかで震度6弱以上が観測された島原湾に面した玉名市,熊本市,宇土市,八代市の干拓地や,熊本市南部を流れる白川・緑川およびその支流沿いの三角州,旧河道,後背湿地,自然堤防で多く発生していた.2) 現在の河川から離れたやや内陸部にある水路沿いに帯状に連続して液状化が発生した地域がいくつか認められた.これらの地域は,微地形的特徴から明治以前の古い旧河道である可能性が高い.3) 熊本市東区秋津および八代市昭和同仁町の液状化発生地点では,それぞれ1889年熊本地震と1968年日向灘地震で液状化が発生した記録があり,今回の地震で再液状化したと推測される.
謝辞
現地調査に先立ち東京電機大学の安田進教授および九州工業大学の永瀬英生教授から液状化発生の情報をご提供頂いた.記して感謝申し上げる.
参考文献
若松加寿江:日本の液状化履歴マップ745-2008, 東京大学出版会, 2011.