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[MIS34-P80] 平成28年熊本地震に対する緊急地震速報:予警報の発表状況の概要と新手法導入後の改善効果について
キーワード:緊急地震速報、平成28年(2016年)熊本地震
2016年4月14日から30日の期間において,気象庁は九州地方周辺を推定震源とする緊急地震速報(予報)を175回,緊急地震速報(警報)を19回発表した.4月14日21時26分頃に発生した熊本県熊本地方の地震(M6.5・最大震度7)に対しては,地震波検知から約3.8秒後に警報を発表し,4月16日1時25分頃に発生した熊本県熊本地方の地震(M7.3・最大震度7)に対しては,地震波検知から約3.8秒後に警報の第1報を,約8.6秒後に第2報を発表した.4月14日のM6.5の地震に対する警報および4月16日のM7.3の地震に対する警報第2報時点における予想震度のスコア(注)は,それぞれ100.0%および97.4%であった.同期間中には観測震度5弱以上の地震が18回発生したが,全てに対して警報または震度4以上の予報を発表しており,見逃しは発生しなかった.4月16日のM7.3の地震が発生して以降は,地震の発生領域が拡大し,50から100km程度離れた位置で同時多発的に地震が発生する状況となった.2011年の東北地方太平洋沖地震以降,気象庁では,同時多発地震時における検測値のグルーピング処理の改善を行ってきた(例えば,周囲の観測点配置を考慮することで,比較対象とする観測点の範囲を制限する処理を導入した).しかしながら,今回は非常に近接した距離で同時多発地震が発生したために,複数の地震の検測値を単一の地震として処理し,過大な震度を予想するケースが生じた.同期間中には,同時多発地震の影響により,予想震度のスコアが10%を下回る不適切な警報を4回発表した.
気象庁は,同時多発地震時等における過大予測の対策としてIntegrated Particle Filter (IPF)法を,巨大地震時における過小予測の対策としてPropagation of Local Undamped Motion (PLUM)法を導入する計画である.上記の不適切な警報を発表した4事例に対してIPF法のシミュレーションを実施したところ,3事例では不適切な警報の発表を回避した.また,残りの1事例では,警報の発表は避けられないものの,警報の発表領域が当時よりも小さくなった.4月14日のM6.5の地震および4月16日のM7.3の地震に対してPLUM法のシミュレーションを実施したところ,4月14日のM6.5の地震では2.6~3.6秒,4月16日のM7.3の地震では3.0~4.0秒程度,警報第1報の発表が早まった.これは,PLUM法で活用可能な観測点の数が従来手法に比べて多いことに起因する.
(注)観測または予想震度が4以上であった予報区のうち,予測誤差が±1階級以内であった予報区の割合.
気象庁は,同時多発地震時等における過大予測の対策としてIntegrated Particle Filter (IPF)法を,巨大地震時における過小予測の対策としてPropagation of Local Undamped Motion (PLUM)法を導入する計画である.上記の不適切な警報を発表した4事例に対してIPF法のシミュレーションを実施したところ,3事例では不適切な警報の発表を回避した.また,残りの1事例では,警報の発表は避けられないものの,警報の発表領域が当時よりも小さくなった.4月14日のM6.5の地震および4月16日のM7.3の地震に対してPLUM法のシミュレーションを実施したところ,4月14日のM6.5の地震では2.6~3.6秒,4月16日のM7.3の地震では3.0~4.0秒程度,警報第1報の発表が早まった.これは,PLUM法で活用可能な観測点の数が従来手法に比べて多いことに起因する.
(注)観測または予想震度が4以上であった予報区のうち,予測誤差が±1階級以内であった予報区の割合.