日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT27] 地球惑星科学データ解析の新展開:データ駆動型アプローチ

2016年5月22日(日) 15:30 〜 17:00 A04 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*桑谷 立(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、駒井 武(東北大学大学院 環境科学研究所)、宮本 英昭(東京大学総合研究博物館)、小池 克明(京都大学大学院工学研究科 都市社会工学専攻地殻環境工学講座)、堀 高峰(独立行政法人海洋研究開発機構・地震津波海域観測研究開発センター)、長尾 大道(東京大学地震研究所)、座長:五十嵐 康彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻)、桑谷 立(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

16:00 〜 16:15

[MTT27-08] 順モデルによるマイクロブーディン構造を呈する粒子群データの再現:簡易マイクロブーディン応力計の提案

*松村 太郎次郎1増田 俊明2 (1.静岡大学創造科学技術大学院自然科学系教育部、2.静岡大学理学部地球科学科)

キーワード:マイクロブーディン構造、地質古応力計、数値モデリング

変成岩中のマイクロブーディン構造を呈する柱状鉱物の存在比は変成岩が過去に経験した差応力の大きさを推定する重要な手がかりである。本発表では順モデルによる数値シミュレーションを行ってマイクロブーディン構造を呈する粒子の数が差応力に対してのように変化するのか調べ、無限遠方から生じた差応力をマイクロブーディン構造の存在率から推定する方法を提案する。
シミュレーションは以下の二つの原理に従って行う。一つ目はWeakest link theoryである。これは粒子の破壊はその粒子の最弱の部分で起こると仮定し、柱状鉱物の破壊強度を表す確率密度関数(Masuda et al., 1989)に従う乱数を逆関数法によって生成して粒子の破壊強度を与えた。二つ目はShear-lag モデル(Zhao and Ji 1997)である。これは無限遠方からの応力が柱状鉱物にどのように引っぱり応力として伝搬するかを記述する。与えられた粒子の破壊強度が粒子に生じる引っぱり応力よりも小さい場合、粒子は破壊されマイクロブーディン構造が形成されたとみなす。柱状鉱物の破壊が起こる場所はベータ分布に従うと仮定し、計算に用いる柱状鉱物の寸法データはEast Pilbaraで採取したメタチャート中の電気石のものを用いた。電気石の寸法データは面構造に平行な面で作った薄片中に含まれる電気石のうち、鉱物線構造方向±15°の範囲に長軸が向いている電気石1432粒を選び出してそれぞれの幅、長軸の長さ、そして割れた位置をそれぞれ測定した。このデータをもとに無限遠方からの差応力を0MPaから20MPaまで単調に増加させて、粒子全体に占めるマイクロブーディン構造を持った粒子数の変化を調べた。
結果では与える差応力の上昇に伴って粒子全体に占めるマイクロブーディン構造の存在率は上昇し、20MPaの差応力下で70%程度の粒子がマイクロブーディン構造を示した。縦横比別のマイクロブーディン構造存在率は天然のものと非常によく似た分布を示すことがわかった。したがって、我々のモデルは天然のマイクロブーディン構造データをうまく再現できているようである。我々は無限遠方の差応力に対するマイクロブーディン構造存在率の関係に注目し、実際の岩石中に存在するマイクロブーディン構造の存在比に対応する無限遠方からの差応力を推定できる応力計を作った。この応力計は粒子全体のマイクロブーディン構造の存在比から差応力を推定できるのでこれを簡易応力計と呼ぶことにする。本発表では簡易応力計を天然の変成岩に適用し、従来のマイクロブーディン応力計との比較を行う。
引用文献
Masuda, T., Shibutani, T., Igarashi, T., & Kuriyama, M. (1989). Microboudin structure of piedmontite in quartz schists: a proposal for a new indicator of relative palaeodifferential stress. Tectonophysics, 163(1-2), 169-180.
Zhao, P., & Ji, S. (1997). Refinements of shear-lag model and its applications. Tectonophysics, 279(1), 37-53.