日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT28] 地球化学の最前線:未来の地球化学を展望して

2016年5月22日(日) 10:45 〜 12:15 A04 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*小畑 元(東京大学大気海洋研究所海洋化学部門海洋無機化学分野)、角野 浩史(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻相関基礎科学系)、横山 哲也(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、平田 岳史(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、角皆 潤(名古屋大学大学院環境学研究科)、高橋 嘉夫(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、橘 省吾(北海道大学大学院理学研究院自然史科学専攻地球惑星システム科学分野)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)、下田 玄(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、鍵 裕之(東京大学大学院理学系研究科附属地殻化学実験施設)、横山 祐典(東京大学 大気海洋研究所 高解像度環境解析研究センター)、座長:角野 浩史(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻相関基礎科学系)、横山 哲也小畑 元(東京大学大気海洋研究所海洋化学部門海洋無機化学分野)

11:15 〜 11:30

[MTT28-09] 高時間分解能高精度加速器分析による西太平洋表層Δ14C変動復元

*平林 頌子1,2横山 祐典1,2鈴木 淳3宮入 陽介1阿瀬 貴博1 (1.東京大学大気海洋研究所、2.東京大学大学院理学系研究科、3.産業技術総合研究所)

キーワード:放射性炭素、Δ14C変動、ΔR、サンゴ骨格、表層海水

古気候復元の研究では、炭酸塩骨格を持つサンゴは、水温変動の復元などに有効な試料として広く用いられる。サンゴ骨格は海水の溶存無機炭素 (DIC)を取り込むため、骨格中の放射性炭素(14C)を海水の移流・鉛直混合のプロキシとして使用することで、海水動態の復元が可能である。しかし、炭酸塩に含まれる14C測定には、従来の方法では10mgのCaCO3(1mgCに相当)が必要であるとされ、高時間分解能での海水動態復元が難しいという問題があった。
本研究では、東京大学大気海洋研究所にて国内唯一稼働中のシングルステージ加速器質量分析計(YS-AMS) を用いて、マイクログラムオーダーの微量試料での放射性炭素濃度分析法の確立をするとともに、その方法を黒潮海域から採取されたサンゴ骨格に適用し、高時間分解能での放射性炭素同位体比(Δ14C)変動の復元を行うことを目的とした。
その結果、1950年以降の期間については、黒潮起源の海域であるフィリピンから、その下流にあたる喜界島までの海域では、Δ14C値はほぼ一様な値となった。一方で1950年以前の期間については、Yoneda et al. (2007)で報告されていた1900年前後のΔ14Cと本研究で測定した1940年代とで値が大きく異なることが明らかになった。すなわち、西太平洋では海水中の14C濃度が約40年という短期間でも変動していることが示唆された。この現象は、放射性炭素年代に対してローカル海洋リザーバー効果(ΔR)の補正を行う際にも大きな影響を与える可能性があり、地域別のみならず、年代別にΔRの値を決定することが望ましいことが示された。